コロナが世界を変えた半年

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2020年が半分すぎました。世界の多くの都市で、これまではふつうにみんなで愉しんでいた劇場やクラブが扉を閉め、スポーツ競技が中止され、外食も旅行もできなくなり、数か月にわたって娯楽が日常から消えました。日本では外出自粛が求められましたが、個人的には、郊外に住んで公園での散歩を日課にしているような生活ゆえ、変化はほとんどなし…。とはいうものの、心の中はまさに大混乱の半年。発信されるニュースを毎日追いかけながら、今も絶えず眩暈がしているような状態です。

まず、手がつけられなくなったオーストラリアでの森林火災のニュースで、新年が明けました。被害の大きさに言葉を失っているうちに、年末あたりから中国の武漢で流行中と報道されていた「謎の肺炎」が新型コロナウイルス感染であると特定され、心配と不安の高まりとともにパンデミックに…。あれよあれよという間に、ソーシャルディスタンシングにロックダウンと、これまで聞いたこともない規制が多くの国で敷かれ、(日本やアジアでは常識でも)「気味が悪い」と欧米人があれほど嫌っていたマスクの着用が欧米でも義務づけられ、国や地方自治体のそういった押しつけに反発するアンチ運動が激しくなったころ、今度は人種差別に抗議するBLM(「黒人の命『も』大切」という訳はちょっと…「黒人の命を軽んじるな」あたりがニュアンス的に正確?)運動が米国から世界中に広がりました。そのすべての問題は複雑に絡み合い、今も世界が揺れています。

6月の末、新型コロナウイルスの感染者の数はついに世界で1000万人を超え、死亡者数も50万人を超えました。コロナにかぎらず感染症のパンデミックは、人間の営みが生物多様性などの自然からの恩恵によって成り立っていることを忘れて、「今の経済さえ良ければいい」と短絡的な考えで現実を無視し、自然を破壊してきた結果であると、UN 、WHO、WWFの各組織が指摘しています。6月末日、ガーディアンは、このまま地球の温暖化が進むと(気候危機によってコアラが絶滅する可能性が出てきた)2050年のロンドンは現在のイスタンブール同様の気候となって、気温が40℃になる日もあるとする科学者の予測を紹介していましたが、温暖化を遅らせるための世界的な取り組みがどうにか進みそうになっていた矢先に、コロナのせいで後退。感染予防にプラスチックの利用が増加し、二酸化炭素の排出量も増えて環境悪化が加速するという、悪循環に陥っています。

そしてこのコロナ禍では、英国で米国でも、リモートワークが不可能な職業の従事者や住宅環境の悪い地域に多いアフリカ系やアジア系の住民など、人種的少数派に属する人々は白人よりも致死リスクが高く、健康面でも経済面でもより大きな影響を受けているため、コロナ禍における不公平さに直面し、社会構造的な人種差別に黙っていられなくなった人々とその支援者が、ジョージ・フロイドさんの死亡事件をきっかけに声をあげたのです。というわけで、コロナも気候危機もBLMも、問題は絡み合っています。世界があまりにも不安定で、また眩暈がしそうになります。おまけに今日、香港では習近平国家主席によって国家安全維持法が施行され、一国二制度の約束はほぼ反故に…。ロシアでのプーティン大統領の動きも相変らず不穏ですし、悪い為政者これだけ世界中の人々が傷つき苦しみ悩んでいても、地震に洪水に竜巻にバッタの大量発生と自然は容赦ありません。

かつての日常が徐々に戻りつつあるとしても、以前のようになるのは、まだまだ先。都市封鎖の解除を急いだ都市では、感染者の増加が確認されています。とにかく、「生」の娯楽が禁じられた半年でシルクドゥソレイユは経営破綻し、灯りの消えたブロードウェイの公演も再開は、すべて2021年だそうです。これだけ経済に打撃を受けているわけですから、コロナ不況は避けられず、世界が「コロナ解雇」の嵐に見舞われるのは必至。でも、わたくしといたしましては、こんな辛い時代にこそ長期的な視点に立ち返り、地球にとって、生物にとって、そしてわたしたちにとって何が大切なのかを見極めて、政治判断の優先順位を決定するべきだと思いますし、ジョンソン首相に「グリーンリカヴァリー」を要求した慈善団体には100%賛同します(って、英国の話なので、環境問題しかり、各重要課題に対する日本政府の取り組みレヴェルの低さには、国民として涙が出ます)!

 

追記:

前回のコラムで、「COVID-19」とするところを「CORVID」と余分な「R」を入れちゃってました。すみません。で、今回は「コロナ」で統一(苦笑)。こんなんじゃ、「COVID-19の『19』がどんな意味なんだか、分かんね~ね~、19通りの名前を考えようか、たとえば『Kung Flu』とか?」といったトランプさん同様に、オツムの程度が知れますわね。反省。

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About Author

京都東山の生まれ。19歳から雑誌の仕事(編集者/スタイリスト/コーディネーター/ライター)に携わる。英国では、憧れのフローリストの下での花修行や、尊敬するアーティストが学んだカレッジで現代アートを勉強し、通算11年間のロンドンライフをエンジョイした。オーサカン(大阪人)となった今も、“心”はロンドナー。変わらぬ日課として読むUK のオンライン新聞から、旬なニュースをあぶそる~とロンドンのためにピックアップ。帰国後は本の翻訳を手がけ、この5月に『ヴェネツィアのチャイナローズ』(原書房)、2014年7月に『使用人が見た英国の二〇世紀』(原書房)、ほかを上梓。ロンドンで目覚めた世界の家庭料理チャレンジ&花を愛でる趣味ブログserendipity blogは、開設して11年目に突入。

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1件のコメント

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    社会の動きをレポートしてくださってありがとうございますです〜♡ COVID-19、こちらの校正ミスです ^^; どうかご心配なく・・・私もグリーンリカバリーを強く希望する者の一人です^^

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