温かい便座はイギリスで受けない?

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usagi


先日北ロンドンのとある店にお茶をしに入ったのですが、席に着いたとたんに「ここ前に日本食レストランだったとこだわ!」と友人が気がつきました。見回してみたら確かに見覚えが。そして地階のトイレには日本食レストランだったからこそ設置されていたのであろうウォシュレットが残されておりました。

この3月に御年90歳になられるイギリス人のお友達は、日本人よりも整理整頓が上手く、衛生面でもイギリス人とは思えないほどきれい好きな方なのです。彼女は日本に旅行した時にウォシュレットに一目惚れしたのですがイギリスでは入手が難しかったため、T×T×ではないメーカーからお尻洗浄機を手に入れ自宅のトイレに設置しているのです。果たして実際に使用しているのかどうかは疑問なのですが、お尻洗浄機というものはこちらでは大変珍しいものであります。ヨーロッパの水は硬質である、トイレには電源が引けないなどの諸事情が理由であるという意見も見られます。

ウォシュレットはお尻を洗浄することだけではなく、座った時に心地よい温度にシートが温められていることも大変重要な機能だと思います。そういえば日本で腰をかける洋式トイレが一般家庭にも普及した時、タオル地の便座カバーは無くてはならないものでした。わたくしの母がイギリスに2回目に渡英した時には便座カバーを持参いたしました。初めての渡英で一般家庭のトイレに便座シートがかかっていないのは、母にとって大変苦痛だったのでしょう。しかし残念なことに、持ってきたカバーは円型ではなく途中で二つに分かれているものだったので装着できず、結局使わずじまいに終わりました。

古代の昔から洋式トイレであるはずのイギリスには便座カバーと言うものは存在いたしません。イギリスは北国で年間を通して薄ら寒いことが多く、屋外の庭にトイレが別個に建てられていることも少なくありません。なのにどういうわけだか便座カバーは使わないのです。早くからウォシュレットに近い役割をしていたビデが、フランス、イタリアなどヨーロッパにはありますが、やはり便座カバーはありません。BBCの発明家起業家への投資番組で便座カバーを提案した人がいたのですが、そこにいた投資家全員がそんなもの売れるはずがないと反対したのだそうです。どうやらイギリス人はシートの冷たさを特に不快とは感じていないようです。もしくはイギリス人が便座カバーを使ったとしたらどんな惨状になるかと想像いたしますと身の毛のよだつような様が思い浮かび、確かにそれは売れるはずがないかもしれないと思ったりします。

日本のトイレは公共のものも含めてとても清潔で見事なものだと思います。しかしわたくしは日本のトイレに違和感を感じることもあるのです。日本のトイレの洗面所はたいてい水でお湯が出ません。当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、わたくしにとっては座るとひやっとする便座にちょっと近い違和感なのであります。そしてハンドドライヤーやティシューなど手を乾かすものが無い所が意外に多いのです。イギリスはハンカチを持ち歩く人は大変少なく、ロンドンのトイレには手を乾かすものがなにかしらあるのでハンカチを持ってこなかったことに舌打ちをすることがまずありません。

これは常識と思っていることが、それぞれの習慣の違いであることはとても多いのだなと感じることが多々あります。

th_MAS

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洋画とグラフィックデザインを専攻したのち、イラストの道へ。縁あって英高級紙「The Times」の挿絵イラストを担当。同紙から数多くの依頼を受け、新聞のタイトル欄にエリザベス女王と並んでイラストが印刷される。児童福祉に関わる団体をはじめ、クライアント・ベースの仕事をするフリーランスのイラストレーター。4年に渡ってロンドン動物園で週に一度ボランティア活動にいそしんだ経験があり、動物イラストは本物からのインスピレーション。

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