イギリス人気質

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グレアムさんはお友達のパトリックさんに手編みの帽子を編んでもらいました。パトリックさんは大変器用な人で、フェアアイルニッティングも容易にこなす編み物上手。フェアアイルニッティングとはご存知の方も多いとは思いますが、シェトランドの一島であるフェア島の編み物で、エドワード八世が1921年にフェアアイルニッティングのセーターをパブリックで着用して以来大人気となりました。

そういえばグレアムさんは、刺繍が大好きだったというお話を聞いたことがあります。グレアムさんはお若い頃は長い髪をされていたのだそうです。いわゆるヒッピーであります。旅行先のアメリカの空港で、グレアムさんは空港の検察官の目に留まってしまい、別室に呼ばれて荷物検査をされることになったのだそうです。検察さんがカバンを開けると、中からは色とりどりの刺繍糸やら丸い木製の刺繍枠が一番上からごっそり出てきたのだそうです。グレアムさんは飛行機の中で刺繍の制作に没頭していたんだそうです。それを見た検察官は何やら納得されて、すぐに釈放してくれたんだとか。

さてパトリックさんが編んでくれた帽子は、幾種類もの色のウールを使い形状もとてもエキセントリックな素晴らしいものだったそうです。ところがグレアムさんはその帽子をお受け取りにならなかったそうです。グレアムさんは自分の好みを大変強く持っている方で、人によっては偏屈ジジイと思われる方も少なくないと思います。わたくしも以前母が編んだウールの帽子を「これどうかしら?」と、グレアムさんに差し上げようとしたことがあるのですが、「大変申し訳ないけれど、僕のスタイルではない」と受け取ってもらえなかったことがあります。

「アクリルは軽くて暖かいのだ」とコーヒーをすすりながらグレアムさんはおっしゃいます。『パトリックにも次回はアクリルの毛糸を使ってみたらと言ってみよう」。そうだ、グレアムさんはチーズもミルクも卵も召し上がらない絶対菜食主義者(ヴィーガン)でした。でもお食事を呼ばれるときは、作られる方が当惑してしまうことが多いため、チーズやミルクはいただくんだそうです。そんなグレアムさんに、お誕生日のプレゼントに何か欲しいものがありますか?と尋ねたところ、「ヴィーガンのお財布を探してるんだけど」とおっしゃいました。日本に帰国した時に探してみたのですが、なるほど財布は皮を使っているものが多いことに気がつきました。そういえば自分が使っている財布も革製品です。

ところで、菜食主義者(ヴェジタリアン、ヴィーガン)をネットで調べ始めた途端に、「10年間続けていた菜食主義をやめたら、空腹感や歯の痛みが消えて汗の臭いがなくなった」という記事を見つけました。偶然だとは思うのですが、グレアムさんはものすごく痛がりで、歯医者でクリーニングをしてもらうのも麻酔をお願いしなければならないんだそうです。わたくしのお友達はヴィーガンはグレアムさんだけで、お肉を召し上がらない人は日本人でも多いのですが、皆さん乳製品もお魚も召し上がります。今度ヴィーガンの人に会う機会が会ったら「歯は痛いですか?」とつい聞いてしまいそうな予感。もし何かご存知の方がいたら教えてください!

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洋画とグラフィックデザインを専攻したのち、イラストの道へ。縁あって英高級紙「The Times」の挿絵イラストを担当。同紙から数多くの依頼を受け、新聞のタイトル欄にエリザベス女王と並んでイラストが印刷される。児童福祉に関わる団体をはじめ、クライアント・ベースの仕事をするフリーランスのイラストレーター。4年に渡ってロンドン動物園で週に一度ボランティア活動にいそしんだ経験があり、動物イラストは本物からのインスピレーション。

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