パブのカウンターで「パイントください」と言ったその瞬間、あなたはもうイギリス体験を網羅しているに等しい……というのはちょっぴり大げさだが、それほどまでにパブ文化はイギリス人の生活に深く浸透しているのでR。では、パブで一体何を注文すれば、イギリスらしさを感じられるのか? 編集長がベスト5を伝授!
1. エール
ラガーとは全く別物と言っても過言ではない、常温飲みが基本のエール・ビールはラガーよりも甘みとコクが強いのが一般的。ペールからダークまで材料や製造法によって色にも違いが表れる。シュワっとした味わいとキリっとした喉越しのラガー好き日本人の舌に合うかどうか意見の分かれるところだが、エールの本場イギリスで試さない手はない。伝統製法のものは「リアル・エール」と呼ばれファンに支えられサバイバル中。中でもカスク・エールは熱処理せず樽(Cask)内でそのまま熟成発酵させたものをゆっくりと手押しのパンプで絞り出す、いわば生きたビールだ。編集長は琥珀色をした生温いエールをちびちび飲むのが大好きだが、初心者にはコクがありながらもフルーティな味わいの軽めペール・エールもおすすめ。エールにほんの少しレモネードを加えた「Bitter Top」は、ラガーにレモネードを加えるシャンディよりも甘まろやかでクセになる旨さ♪
2. サイダー
三ツ矢サイダーならぬ、れっきとしたアルコール。リンゴ天国のイギリスでは収穫期になるとリンゴを発酵させた手作り酒を家庭で造ることもある。小売店の棚に並んでいるものでは甘みが強く飲みやすいものから、ドライなキレのあるものまでメーカーによって味はさまざまだが、サイダー初心者には、スーパーで売られている最も一般的な銘柄である「Strongbow」はおすすめしない。これを最初に飲んでしまうと「サイダーってなんか、クセある〜・・」と、サイダー嫌いを生産してしまう可能性が高い。おすすめはサフォークにある老舗ブランド「Aspall」(写真)の商品や、良心的なエールハウスで扱っている小規模生産者のサイダー。ジャンルとしてはフランスのシードルと同じだが、じつは編集長はシードルのほうが好み。理由は、イギリスのサイダーよりも発砲が少なくさっぱりしているから。エールは発砲を極力抑えるのに、サイダーはラガーばりにシュワっとしているものが多く、果実酒特有のクセもある。ちなみに日本のサイダーは、イギリスではレモネードのこと。
3. ジン&トニック
エリザベス女王も毎日たしなむというウワサのジンは、じつはイギリスの飲料史の中でも重要な位置を占める飲み物のひとつ。ビールに高い税金がかけられた18世紀、安価だったジンは一般家庭で爆発的に普及した。ジュニパー・ベリーで風味付けした蒸留酒であるジンに、健康飲料として飲まれていたキニーネ入りのトニックウォーターを加えたジン&トニックは、その味の奥深さと飲みやすさからスタンダード・カクテルに。人気の秘密はボタニカルな香りにあり、パブでジン&トニックを飲むイギリス人は非常に多い。しかし飲みやすさの理由はトニックウォーターの甘さにもあり、飲み過ぎるとカロリー過多になるので注意が必要だ。トニックウォーターではなく、ドライ・ベルモットと合わせるとマティーニになるのはご存知の通り。昨今、ロンドンはジン・ブームのような風潮もあり、旨いジンを飲ませるジン・バーが増えている。ジン・バーはこちらでチェック。
4. スタウト
イギリスでスタウトと言えば、ギネス。焦げるまでローストした大麦を使って上面発酵で醸造される黒色をしたビールのことを、スタウトと言う。アイルランド生まれのギネスをイギリス本土で美味しく飲むには、無数にあるアイリッシュ・パブに行くのがベター(緑の看板文字やクローバーが目印)。クリーミーな泡、ローストした大麦から得られるほろ苦い味、そして美しい黒ルビー色。その佇まいだけでも一見の価値がある。きれいな泡を作るためにサーバーからは2段階に分けて注がれるので、途中、バーマンがいなくなっても注文が忘れられているわけではないのでご心配なく。ギネス以外のスタウトもたまに見かけるので、やはりビールの種類が多いクラフト・ビール・パブに行くと何らかの銘柄に出会えるであろう。おすすめはサフォークの醸造所、St Peter’s のCream Stout。ここに行けば必ずある。コーヒーのような香ばしさを備えたスタウトが好みだ。
5. ラガー&シャンディ
ヨーロッパ大陸生まれのラガー・ビールはイギリスでは新参者ではあるが、その冷えとキレには伝統のエールも太刀打ちできない。若い世代を中心に人気なのはステラ・アートワ、クローネンバーグ、グロールシュ、アムステルなどヨーロッパ各地の銘柄だが、これらにレモネードを半分入れて「シャンディ」という名前を付けたのがイギリス人。「飲みたいけど控えたい」ときにぴったり。(終わり。ラガーについて語ることがないw)