トランプ一家の英国ホリデー

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6月3日から5日まで、英国を公式訪問したトランプ氏とその妻と前妻の(アダルト)子供たち(未成年のバロンくんはなぜかお留守番)。滞在中、どんな報道のされ方をしているのかと興味津々で英米のメディアを追っていると、多すぎてすぐに一日が終わりました(笑)。トランプ氏にとっては念願の「国賓」待遇、公私が混同する今回の家族旅行は、イヴァンカ夫妻をのぞく「私」の立場の子供たちには英国と米国の税金がつぎこまれなかったとしても、大統領の「公」の立場に便乗したトランプ一家にとってはとりわけ楽しい「ホリデー」の想い出ができたようです。

その楽しさがどれほどのものだったかは、子供たちが滞在中に投稿したインスタグラムをご覧いただけば、一目瞭然です。ガーディアン紙の国会スケッチライターが担当するコラムでは、この訪問を「UKディズニーランド旅行」と呼んでいましたが、米国には、夢を実現したようなお城で遊べるディズニーランドはあっても、つまるところはすべてフェイク。かたや英国は、女王様も、プリンセスたちが身に着けているティアラも、近衛兵も宮殿も、何もかも本物ですよ。(警備の観点から)シンデレラが乗っているようなキンピカの馬車には乗れませんでしたが、正真正銘の「ロイヤル」なおもてなしを体験するトランプ一家にとっては、ほんと、「本物ディズニーランド」。そんな感じ?

トランプ大統領ですが、まず、スタンステッド空港に着陸直前の機中で、自分に批判的なロンドン市長を「完全な負け犬」とわざわざツウィートし、それから「バッキングハム宮殿」(米国のTVレポーター)の中庭にマリーンワン(大統領専用ヘリ)で降り立ちました。国賓待遇が見送られた前回のエリザベス女王との面会では、女王陛下の前を歩くという無作法を世界中に披露してしまい、今回、お行儀にはちょっと気をつけていたのかもしれません。けど所詮、(所得申告の公表を拒否続けているとこを見ても)ギャング紛いの手口でのしあがったニューヨークの成金です、さながらディズニーランドの子供みたいに、溢れ出す興奮でどこかぎこちない仕草に見えたのは、わたしだけ?

超高層ビルを建てるお金があっても、たとえ大統領になれても、米国人が絶対に手に入れることのできないステータスを、いまだに英国はもっているのです。トランプ氏が子供たちを引きつれてきたところをみても、英国の没落貴族に娘を嫁がせた時代(「ダウントンアビー」しかり)の米国の富豪たちメンタリティーは、いまもさほど変わってないことをまざまざと見せつけられたような気がします。王室の方々は、エリザベス女王をはじめハリー王子も、内心どう思われていたか(&カミラ妃の意味深なウィンク)は別にして、後世に語り継がれることになりそうなトランプ氏のあの奇妙な燕尾服姿に噴き出すこともなく、国賓を笑顔でもてなすという公務をつつがなくこなされました。

「エリザベス女王とはおたがいに相性がいい、ひどく気に入られて強い絆を結ぶことができた」な~んて臆面もなく言ってのけたトランプ氏の発言にも、礼儀上、王室はノーコメントを貫いているようです。そんなことを信じるのはFOXニュースぐらいでしょうが、「ナタリー・ポートマンと僕はデートしてた」(事実ではないとポートマンが抗議)と主張したモビーのずうずうしさと互角の、なんたる厚かましさでしょう! ま、嘘をつきすぎてもはや事実がわからなくなっていて、現実に妄想が交ざった世界で生きているトランプ氏ですから、抗議プラカードが彼の眼には見えず、例の調子で「英国ではみ~んなに歓迎された」(絶句)と。トランプ氏が何を言っても、もうだれも驚かない?

王室主催の晩餐会に、バッキンガム宮殿の窓から見た「下界」に、UK本物ディズニーランドを体験したトランプ一家は、「ついにここまでのぼりつめた」とご満悦だったのでしょう。でも、世界に影響力を持つ大国の大統領ですよ、病的なほどのうぬぼれ屋で、差別主義者で、自分に批判的な人物を攻撃することしかせず、都合の悪いと全部「フェイク」だと主張し、公に断言することで嘘を真実としてまかりとおらせてしまうだけでなく、大勢の人たちが何年もかかって築きあげてきた枠組みを片っ端から叩き壊してしまう…大統領やってていいんですかね? そんなトランプ氏に恥ずかしげもなく媚びるのが、ニッポンの首相。世界の笑い者だという自覚がないようで、おめでたいかぎりです。

トランプ氏の訪日では、ほんとはまだ内緒にしてほしかった首相とディールを記者会見でまたまたバラされてしまいましたが、今回のアベ流接待は国技である相撲の伝統を破壊し、新天皇を政治利用したといわれています。そもそも、(shallowな)トランプ氏が奥の深い日本文化を理解できるはずもなく、いやそれ以前に、たぶんトランプ氏にしてみれば「属国」の文化なんて興味もないのかも? そして、日本の大手メディアはほぼ批判報道ナシ。大英帝国では、国民の4割がトランプ氏の「国賓扱い」に反対したそうで、英メディアの報道も日本とは大違いでした。それに何より、トランプ氏が憧れる「王室」の長である女王陛下が、「政治利用」ではなく「切り札」になるのですから。

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About Author

京都東山の生まれ。19歳から雑誌の仕事(編集者/スタイリスト/コーディネーター/ライター)に携わる。英国では、憧れのフローリストの下での花修行や、尊敬するアーティストが学んだカレッジで現代アートを勉強し、通算11年間のロンドンライフをエンジョイした。オーサカン(大阪人)となった今も、“心”はロンドナー。変わらぬ日課として読むUK のオンライン新聞から、旬なニュースをあぶそる~とロンドンのためにピックアップ。帰国後は本の翻訳を手がけ、この5月に『ヴェネツィアのチャイナローズ』(原書房)、2014年7月に『使用人が見た英国の二〇世紀』(原書房)、ほかを上梓。ロンドンで目覚めた世界の家庭料理チャレンジ&花を愛でる趣味ブログserendipity blogは、開設して11年目に突入。

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