キーワードは【楽しい日常生活】

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cafevisit


2月の半ば、コペンハーゲンへ戻ってきた頃は
空はどんよりと鉛色で暗く重く、気温はマイナスが続いていた
そして今、3月の末になって、気温は10度を超え
鉛色の空は薄くなって、キラキラした青空が広がった。
天気予報は、太陽マークが続いて、公園や花屋さん、
スーパーマーケットには黄色いラッパ水仙が並び
日が長くなり、道行く人は分厚いコート姿を脱ぎ、
黒っぽい服からカラフルな服を着ている人を
目にするようになってきた。

春が北欧の街にも近づいてきている!

とウキウキし始めたら…

次の朝、冷たい風が暗い空と雨を連れて戻ってきた

こんな繰り返しをしながら、それでもコペンハーゲンは
少しづつ春に近づいている様子。

さて、そんな春がもうすぐそこに、という時期になると来るのが
夫のお誕生日。

「レストランへ予約を入れておいたから」

ということで、小雨も降る寒い日となった3月22日の夜、
私達は、コペンハーゲンでもまだ訪れたことのない地区にある
レストランを目指しました。

電車で行って降りた駅の印象は【あまり良い地区ではない】
ロンドンで言えばイーストエンドの感じです。

こんなところに、お誕生日に行くレストランがあるのかしら???

私は、少々疑問に感じながら歩いていると、
「あ、ここだ」と言って夫が入ったコートヤードには素敵なレストランはなく
少々ラフな感じのスポーツジムがあり、
なんとなく埃っぽい中庭の隅には安っぽいクリスマスライトのような
電気を巻きつけた螺旋階段がありました。

すると夫は、その階段をぐるぐると登り始めたのです。
「まあ!大変!こんなところを登るの? 酔っ払った帰りは怖いわね…」

なんて、呟きながら、おんぼろビルを螺旋階段で
ぐるぐると登って着いたところは屋上でした。
しかし、その屋上には驚くなかれ、畑やミツバチの巣箱
にわとり小屋、豚小屋、などがあり、
正面にはガラス張りの温室のような小屋とその後ろ側には
どうやらキッチンらしい家が建っていたのです。

Copenhagen3

レストランだと思われるガラス張りのグリーンハウスのドアをあけると
中にいた女性が、笑顔で迎えてくれました。

寒い外から、グリーンハウス風なレストランに一歩足を踏み入れると、
うわ~暖かい!小さな暖炉でもよく暖まっている部屋の中は
なんと氣持が良いのでしょう!
心地よい雰囲氣で満たされているその部屋に入った時
まるで、お友達の田舎の家に招待されたよう!
そんな氣持になりました。

グリーンハウスの中央には、きっちりと一列に
幅の狭いテーブルが並び、そしてそれを挟んで
毛長のシープスキンを掛けたガーデンチェアーが
窮屈そうに置かれていました。

私達は、予約の時間よりも、少し早すぎて
レストランは開いたばかりなのか、他にはまだ誰もいません。
「さあ、ここにどうぞお座りください」と言われた席は
何故か、その長いテーブルのど真ん中。
なんとなく、心地悪いな~と思いながらも、狭い席に
どうにか落ち着いて、食前酒を頼んで飲んでいると、
2番目に到着した二人連れが入ってきました。
そして、彼等もなんと、その長いテーブルの中で
やっぱり、中央の私達の隣の席に
実に窮屈な感じで座らせられました。

長いテーブルの中にギュッと4人が中央で固まって座る…
なんともまあ、居心地が悪かったのですが
たまたまイギリス人だった隣の男性と挨拶をして、
少し話をしている内に、ゲストの数がだんだんと増えてきて
30分ほど待った頃、細長いテーブルに用意してあった全部の席が埋まり、
30人全員が揃いました。

そこで、先ほどの女性が、グラスを鳴らして合図をし、
前に出てきて挨拶をします。
「みなさん、今日はどうも有難う
さあ、これからディナーを始めましょう~!
どうぞ楽しんでください」
料理の出し方やレストランの説明などをした後、
皆んなで乾杯をしてお食事が始まります。

飲み物だけはそれぞれが選ぶけれど
予約を入れた30人が揃って、並んで一緒に同じお食事を楽しむ
そう言う、ちょっと変わったレストランだったのです。

お食事の内容は、デンマーク式カジュアル会席料理というのでしょうか?
前菜の前のスナック、と呼ばれるものから始まる全6コース春のディナーです。

2人分の小さなお料理が、一皿に乗ってテーブルに出てくるので
それを向かい側のパートナーとシェアします。
その度にキッチンからシェフが現れ、料理の説明をし
「それでは、どうぞ楽しくお召し上がり下さい」
と言う流れでコースは進んで行きました。

こんな風に、今年の夫のお誕生日は
かなり風変わりなレストランで、楽しい時間を過ごしました。
実験的であり、かつ美味しいお料理を頂きながら。
そして、最初は窮屈な氣分でありながらも、
最後には仲良くお喋りしながらお食事をした両隣のゲストと私達6人は
帰りの電車も一緒に乗って戻って来たのです。

初めて会う人達が同じ食事を介して時空を共有する、
この楽しさが詰まった数時間、レストランのこの演出は、
夫のお誕生日にぴったりでした。
そして、私の心には、ほんわかと暖かい記憶として残りました。

私達は、コペンハーゲンへ来てから
ロンドンや東京では出会ったことのないような食事をしたり
変わった趣向のレストランを体験して楽しんでいます。
ヨーロッパ大陸からちょこっとはみ出している小国の食の文化が
こんなにも面白かったとは!
’北欧食べず嫌い’ だった私にとって、実に新鮮な驚きの連続です。

コペンハーゲンで、新しい食文化が育ち始めたのは
2004年に誕生して、2010年に世界一のタイトルを取った
Nomaがきっかけであることは、明白なことなのだろうけれど
世界で一番幸せなデンマーク人、と言われる理由とも
関係があるに違いない…と、私は思っている。

毎日の日々を、身の回りにある自然を、
それらを大事に扱い、育て、楽しんでいる様子は
どうも日本人とは、そしてイギリス人とも
意識レベルが違うように思うのです。

姉が大学生の時(かなり大昔!)に来た時のデンマークと言えば
サーモンと卵とエビのオープンサンド、肉団子、豚肉のグリル、
ソーセージ、ヘリングの酢漬け、など、バイキング時代
から続いている様な伝統的なデンマーク料理だったらしい
それが数年前から、Nomaをキッカケに爆発して、多くの種をまいて
全く新しい食文化を広げている。

デンマーク人は食文化だけではなく、先頭切って
【幸せな毎日を】追求し、意識レベルを高め、氣持を込めて
日常生活を進化させている、そんな風に見て取れる…

毎日の生活をいかに楽しむか、その意識が平均的に高いと思う。
コペンハーゲン人の中に入った私は、少しばかり刺激を受け、喝を入れ
10数年ぶりに私の日常生活もチョッピリと、変えてみようかと思っている。
何をするの?どんな風に変えるの??って訊かれたら???

ま、その内に…
その思いをもう少し高めてまとまった、と思ったら
どこかのカフェに座った時
このページを利用して、書いてみようかしら?

とにかく、新しい空気の中に飛び込んだ時、
日常生活を一番たやすく一新することができるのだから
今がチャンス!と、私は狙っている

キーワードは、デンマークに来てみて改めて思い知らされた
【楽しい日常生活】

ここからは、どんなことがあってもぶれないように、
私はコペンハーゲンの片隅で
楽しい楽しい毎日を積み重ねていこうと、思っています。

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【きょうのヒント】
今回は、そんなわけで、カフェではないのだけれど
どうしても、書きたかったこの風変わりなレストラン
コペンハーゲンを訪れた時には、是非行ってみて!

Bラインの電車に乗って
Rypurkenで下車、そこからLyngbyvej通りを真っ直ぐ行き
Æbeløgade 通りを行くと、見つかります。

是非、早めに予約を入れて、行ってみてね!

【前回のこたえ】
El Petit
Gran Via de les Corts Catalanes 677
Barcelona

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About Author

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東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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