私の存在が幸せの原点である

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先日、訪れた美術館には、とても素敵なカフェがありました。
目の前はビーチです。デンマークのビーチは、予想外に素晴らしく
デンマークの宝の一つだと思います。
展覧会を観た後、そのカフェに座って軽い食事をしながら、そして
すぐ目の前の海と真っ青な空を見ながら、私は最近感じていたことを
考えました。今日は、そのお話です。

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去年の10月に右も左も分からない、コペンハーゲンに来てしまいました。
夫の仕事の事情で、というのが理由なんだけれど、
その夫は留守が多く月の2/3は一人暮らしの上一人で終始する仕事なので、
コペンハーゲンに引っ越して来てからは、ほぼ毎日
私自身と向き合い、心の中へ入って行く事ばかりをやっていました。
話す人もいないので、自分の中での質疑応答時間だけが長く続くのです。
そんな状況の中、冬を越し、春を跨いで、夏になった頃、
私はあることに氣がつき、それに基づいて
意識を変えるようにしていました。すると行動が少しずつ変わってきて
氣持が変化してきたのです。
それは、私にとっては、大きな変化でした。
そのことは、ずいぶん前から氣になっていた案件だったので
その心の変化が起きた事が嬉しくて、
私は、最近コペンハーゲンで少し生まれ変わったように
新しい楽しさと、幸福感に包まれて呑気に暮らし始めました。

それは何?って思うでしょ?
それはね、実は… 「呑氣な心意気!」
私は、「元氣で呑氣にね!」と、よく言い放っています。
まるで、呑氣心を会得した者の言い回しです。
しかし、この私こそ、呑気に構える必要があったのです。
私が出来ないこと故、この言葉が好きで、憧れているのですが
どうしても、その呑気心を掴むことができないでいました。

【こそこそ動いていないと不安を感じてしまう、ハムスター症候群?】
とでもいうのでしょうか?

ハムスター症候群歴は、何年も何十年も続いています。
いつも未来ばかり見ていて、それに向かって動いていました。
ハムスター症候群のお陰様で、幾つか仕事を成し遂げることは出来ました。
あの成し遂げた時に感じる、達成感、充実感は刺激的で、
私たちが感じることのできる感覚の中で、
多分最高級な部類に入るのではないかと思います。
だからそれを追い求めることが私の幸せになっていきました。
追い求める人生そのものが幸せだとも思っていました。
私は追い求めるものがある!なんて幸せなんだろう!

だけど、達成感=幸せ、というのが、どうも変だ…
と思うようになりました。
それが何故かというと、達成感で幸せを感じる期間が
あまりにも短いからです。
その幸福感が続くのは、成し遂げたその瞬間から多分
その次の日の朝ぐらいまで。本当に少しの時間です。

ですから、幸せを感じるために、すぐに次の目標を探し始め、
それに向かって動かないと、心が落ち着かず、呑気なことを
言ってはいられなかったのです。
これは、もしかすると、創作活動をする人の癖なのかもしれません。

でもこれは、なんだかおかしいぞ…

と、いう思いが、少しずつ大きくなっていたのです。
でも、私にはその感じ方を変えることがどうしても出来ませんでした。
理由は、前出した、創作活動する者の癖、であるかもしれないし
もう一つわかっているのは母の影響。
母は去年亡くなりましたが、私だけではなく
姉もまた、今でも母の力にコントロールされている、
と感じることがあるそうです。

母には、呑気な心が欠如していましたし、その欠如こそ美徳だと
信じていたのだと思います。
時代が母をそう育てた、ということもあると思いますが、
とにかく母はじっとしていることで罪悪感を感じてしまう人でした。
TVをぼーっと観ているなんて、とんでもない!それは罪悪です。
TVを観る時は、何かしら手を動かしていました。
読書に没頭することですら、何かサボっていることと同じ、
だと感じていたようでした。
私の父は逆に、とても呑気な人で、姉は父の血を多く受けているせいか
私が見ていて羨ましくなるほどの呑気さを持っています。
先日もコペンハーゲンに遊びにきた時、私のことを見ていて呟きました。
「カオちゃんは、いつもなんだか動いているのね」
姉のこの言葉には、「ママみたいに…」が抜けていましたけれど。
こうして長年続いた「母の呪縛」や、「達成感=幸福感」から
抜け出すことが出来ず、私は、のんびりすることで罪悪感を感じていました。

それがついに人生が半分を大きく過ぎた今頃になって
母からの「生き方を変えても大丈夫」という言葉が届きました。
母の呪縛や、ハムスター症候群から解放される兆しが見えてきたのです。
そのきっかけを作ってくれたのが単純明快

コペンハーゲンの夏でした。

コペンハーゲンは水の都と呼ばれるように、
湾や多くの運河が張り巡らされています。
その水は都会であるのに驚くように澄んでいて
水辺沿にはウッドデッキも多く見られ、夏になると
クルーザーや、氣軽に誰でも時間毎で借りて
楽しそうにお酒を飲みながら漂うことができる、テーブル付きの
モーターボートが行き交い、カヌーが走り、SUPで水上散歩をしていたり、
そして水辺に集まった人々はブランケットを広げて水浴びをして日光浴をして
ピクニックをして、おしゃべりを楽しみ、ダンスをして…と
太陽が顔を出すと、みんな水辺に出てきます。
私の暮らすマンションも水辺にあるので、窓を開けると
ウッドデッキから水に飛び込む音が聞こえたり、話し声が聞こえたり
外を見れば、水着姿で歩いている…

長くて暗くて寒い冬があるからこそ、太陽の存在を愛おしく思い、
毎日の生活の中で、都会にある自然を楽しむコペンハーゲン人達。
ただただ太陽を楽しむ彼らの、のほほんとしたライフスタイルに、
私は圧倒されてしまいました。

幸せのエネルギーが注ぐ素晴らしき太陽が出ているこの時間に
次のプロジェクト達成に向けて、部屋にこもってコンピューターに向かって
お伽話を書いたり、絵を描いたりと、ハムスターのように動く、
なぜなら達成感を感じた後に続く十時間の幸福感を得るために!

私のライフスタイルは、やはり何かおかしい?
と、本当に疑問を感じたのです。

意識が未来に向いていれば、ご褒美の達成感を、幸福感を得るために
ハムスター症候群であってもしょうがなかったのでしょう。
また、それが必要でもあったのです。
思えば、私の氣持はいつも未来にありました。
だけど、今のこの瞬間にある幸せを通り越して
いつも未来にばかり焦点を当てているのは…?
太陽と共に、飛び出してくる彼らを観ていたら
今のこの瞬間の幸せを、求めない、感じようとしない私は
どこか本当におかしいのでは?と感じたのです。

今今今今今今今のこの瞬間の幸せを感じ感謝し、その思いを
ずっと続けてると、明日、3日後、3年後の幸せに繋がる、
という話を聞きました。

今暮らしているフラットには、氣持ちの良いテラスが付いていて
そこにクッションを出して、そよ風にあたりながら、読書をしたり
水辺を眺めたり、空をゆっくりと動く雲を見たり、
香港からロンドンへ向かっている1万メートル上空を飛行中の
ジェット機に思いを馳せたりをする時間を、
私はゆっくりと、楽しむようになったのです。
のんびりと過ごす時間の中で、
「何もしていないことに後ろめたさを感ずることなく」
今のこの瞬間の幸福感をただ味わうことができるようになったのです。

とは言っても…
達成感から得ることのできる、あの100%の絶対的な幸福感は
刺激的であり、私の心をまだ支配し続けています。

だけど、私の存在そのものが幸せの原点である、と思えば
私は、何をしていても、幸せを感じることが出来るはず。
毎瞬間がパーフェクトなのだ、という意識を広げて
新しい形の幸福感を、もっと大事にしようと思っています。

それには父から受け継いでいるはずの呑氣な心を、
これからは、もっと大事にして、のんびりと大きく育むつもりです。

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【きょうのヒント】
デンマークの海辺に建つデンマークの有名な美術館と言えば、
コペンハーゲンから、電車で約40分先にあるルイジアナ美術館です。
でも、今日のカフェは、ルイジアナ美術館のカフェありません。
こちらはコペンハーゲン南部の海辺にあり、
コペンハーゲンから電車で30分かからずに行かれます。
駅からバスも出ていますが、歩いても行かれますので、是非
お散歩をしながら、美術館を目指してください。

【前回のこたえ】
Magasin
Kongens Nytorv 13
1095 København K

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東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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