イスタンブールでは嘘のような本当の日常が待っていた

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イスタンブールに1度は訪れてみたいと思っていた。
念願かなって、ついに去年の年末
その魅惑的な街を、わたしは総勢9人のファミリーメンバーと一緒に
彼の地を10日間歩き回った。

生憎の雨続きだったけれど、傘をさしたり閉じたりしながら
とにかく毎日毎日くたくたになるまで歩き回った。

そこには、わたしの知っている、
東京やロンドンやコペンハーゲンでは見ることのない
混沌とした世界が広がっていた。

到着した時はもう暗かったので、
わたしはまるで映画でも観ているような感覚で
流れる夜の街の様子をタクシーの窓から観ていた。

空港から街中へ入る途中に通った暗い地区で、
タクシーは裸電球がぶら下がっている店の前を通過した。

その瞬間、
すっかり忘れていた懐かしい記憶が、蘇ってきた

それは、バリ島へ行った時のこと
バリ島の州都デンパサールに到着した時も夜だった。
タクシーでホテルに向かう途中の道は真っ暗で、
裸電球がぶら下がる簡易店がポツリポツリとあった
ぼーっとした明かりの中でおじさん、おばさんが
のんびりと雑貨や、果物を売っている、
路端で散髪している床屋まで目にした私は、
初めて訪れた東南アジアの姿に
私の知っている東京やアメリカ、ヨーロッパとは
全く違う、その世界に目を奪われた。

そんな、30年以上も前の想い出とイスタンブール郊外の
イメージが交差していると、タクシーは
海にかかる大きなつり橋を渡り始めた。

橋の上から、イスタンブールの夜景が広がった。
ライトアップされた丘の上にあるモスクが
あちらにもこちらにも…

幻想的で美しいモスクは、
まるで夜空にふわっと浮いているように見えた。

ものすごいスピードと乱暴な運転で、ヒヤヒヤしながらも、
わたしは車の窓から見える街の様子を楽しみ、
早く明日の朝になって、イスタンブールの街を歩きたい!
そう、心が踊った。

‪翌朝ぐっすりと眠っていると、‬‬
突然大音響のおじさんの歌声が、ぐわんぐわんと鳴り始め、
わたしは叩き起こされた。

せっかくイイ夢を見ていたのに…。

それは、アザーンと言って、祈りの時間が始まるよ~という合図らしい。
宗派によっては1日に3回、5回と
あちこちに点在するモスクのスピーカーから流すそうだ。
アザーンが終わって静かになったと思えば、聞こえてくるのは車の警笛で、
ブーブーびーびーうるさい!

もう夢の続きに戻ることは無理。

そんな感じで、わたしのイスタンブールの朝が始まった。

街には急な坂が多くて階段が多い。
年取ったら、ちょっと大変な街ね…なんて姉と呟きながら
運動と思って急な階段を上り下りした。

それよりももっと大変なことは、道を横断すること。

私はロンドンにいたから、車が通らないと確認できれば
赤信号で緑になるまで、ただ待っているなんて、
ロボットに管理されているようで嫌だ!
なんて、ロンドンっ子のように、赤でも渡ってしまうけれど
イスタンブールでの道の横断は、尋常じゃない。
どこから車が来るかわからない。
トラムも歩道直前をスピード出して通過するし、
とにかく怖くて、中々横断できない。
あー、大変大変…

旧市街にあるグランバザーでは、迷子になってしまったら、これもまた大変!
キョロキョロよそ見をしながらも、
しっかりと家族の誰かを目で追いかけていた。

そんな街を歩き続けると、慣れていない私達は疲れる…

だけど、混沌としたイスタンブールは美しい海に面しているから
わたしたちは海へ出た。
喧騒から離れてボートから見る街は美しく、
寒さも忘れて、私はずっとスケッチしながらその景色を楽しんだ。

そういえば、海岸線を歩くと釣り人がずらっと並んでいる、
釣れる魚を見ていると、レストランで出てくる
小さな魚のフライと似ている。

「釣りも仕事なのかな?
釣った魚をマーケットやレストランに売るのかしら?」

多分、ここでは何でも仕事にしてしまうのかもしれない
街を歩いていると、人々のたくましい、生きる力を感じる。

だけど、その反面、なんとものんびりとしている空気も漂っている。

ビックリしたのは、大都会の中での動物との共存。
どこを見ても、野良犬猫がいる。
それも野良犬は大型犬!その辺で、のんびり暮らしている。
見ると、耳にピアスがある。
それは、狂犬病の注射を受けているという印らしい。
野良犬や猫と共存するのが、イスラム教の伝統だそうで、
2004年には動物愛護法の可決で地方自治体に対して
路上動物の保護が義務付けられた、ということ。

こんな法律を作ってしまうトルコ人、とても優しいのだ。

癒されるものと言えば早朝のアザーンの放送。
数日いたらだんだんおじさんのあの祈りの声が好きになった。
朝の微睡であの声を、心地良く思うようになるとは…

面白いな~、と思う物や人は、街を歩いていると
沢山目に入ってくる。

山のように積んだ荷物をリアカーで運ぶ人を発見。
それも、坂を降りていく、前につんのめりながら
だんだんと勢いがついて行き、止まれない、危ない!
あの人あの先どうなったのだろう…
思わず、追いかけて行って写真を撮りたくなったけれど、
そんな漫画のような光景は、わたしの神経を緩ませた。

「なんでこんな古くて壊れているのに、飾っている?」
それは何か意味があるのだろうか?まるでモダンアートのような
摩訶不思議なマネキン人形なんかも店頭に並べてあった

笑い話のようだと、思ったのは
パフォーマンスアイスクリーム売りや靴磨きの詐欺師達、
あの手この手を使って商売をしている、騙されないぞ!

イスタンブールには、昔どこかで読んだことがあるような
嘘のような本当の日常が目の前に存在している。

こんな騒然とした世界の中で、
おしゃれなブティックやカフェが並ぶ、
とびっきり素敵な地区も見つけた。

【アトリエストリート】がその一つ

そこではアーティストやデザイナーが、恵まれた環境で仕事をしている。
店の奥にアトリエがあって、仕上がった作品を店に並べる、
そう、わたしの理想的なアトリエ兼ショップ
実に楽しそうに仕事をしている彼等がとても羨ましかった。

そしてこの地区には、素敵な、入ってみたい、と思うカフェが沢山あった。

だけど、今回カフェビジットで選んだところは、
それらとは、ちょっと違うタイプ

海の見える丘の上のカフェ、それが今回のお店

こう書くと、なんだかロマンチックなイメージなんだけれど、
実はここ、時代をグーンと遡った感じのカフェでありまして、
お客様は、トルココーヒーや小さなグラスでチャイを飲みながら、
トランプやバックギャモンに興じているおじさん達ばかり。

お金を掛けているのでしょう、皆さん真剣そのもの。
だけど、そこに流れていたのは、なんとも暢気な空気でございました。

今も昔も東も西も忍耐力のないドライバーや車の前を堂々と歩く
歩行者もキリスト教もイスラム教も猫も犬も秩序も無秩序も
笑える詐欺師も優しい人も、全てがごちゃ混ぜで暮らしている

おもちゃ箱をひっくり返したような、渾然一体としたイスタンブール

ヘンテコ詐欺師もいたけれど、騙される!と思って警戒していたら
実は、ただ親切にしてくれた人だったりと…

なんとも優しいチャーミングなトルコ人に、私達は数多く出会いました。

ずっと行きたかった、イスタンブール
サバサンドも食べなかったし、
欲しかった空飛ぶ絨毯も買わなかった。
それに、フリーマーケットで見つけた
モノモノモノ…、あぁ、買えばよかった~
と、後悔しているけれど…

ックックック

もう一度訪れる理由ができたわけだ。

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【きょうのヒント】
今回のヒントも、ヒントじゃ無いみたいだけれど…
Kadikoy のModa Parki の上の方にある。
わかるかな~???
夏に行けば、マルマラ海が見渡せる
見晴らしの良いガーデンカフェで人気らしい!

【前回のこたえ】
Angels Coffee
45 Kensington Church Street, London W8 4BA

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About Author

島田カオル

東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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