トマム、ハイランド、大人の雨の楽しみ方

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生憎の雨続き…折角大自然の真ん中にいるというのに
と、思っていたら、北海道トマムはアイヌ語で湿地、という意味らしいことを知って
「じゃあ、しょうがないか…」と、無理やりモヤモヤしていた私の心を納得させました。

それは、大自然のど真ん中に、唐突に立っている
トマムスキーリゾートホテルに2泊した時のこと。

冬ではなかったので、スキーは出来ないけれど、
動物避けの鈴を持って美しい初夏の森を散歩してみたい、
そしてタワーホテルの屋上には「天空の雲海バー」があるので
それを是非体験したい!

と、思っていた旅行だったので、ちょっとガッカリでした。

そういえば、去年の暮れに訪れたイスタンブールも雨雨雨の毎日だった。
イスタンブールの観光写真を見ると、
だいたいが太陽と真っ青な空と海、という印象が強かったので
12月は雨季だとは知っていたけれど、実際行った時、
「あ、今日も雨だ…」と言いながら朝ホテルを出る度に、傘をささなければならないことが
少し悲しかったけれどが、でもそこは前向きな私です、
今度来るときは、ベストシーズンを選んで来てみよう!
と、次回に楽しみを託して旅を終えました。

それにしても、旅行者にとって、雨ほどがっかりさせられる事はない、
と貴方も思っているのではないでしょうか。どうでしょう?
私は毎回旅行へ行くときに、「お天気がいいように!」と
小学生の時から、願って、てるてる坊主を作っていました。

多分、貴方もそうだったのではないでしょうか?

今でもそれは変わることなく、私の旅行前のお願い事は

「神様お天気が良くなりますように!」

でも、私か相棒か、どちらかが雨女、雨男なのでしょう、
本当に、悔しい程、私達の旅には雨が多いのです。

しかし考えてみると、ただ単に雨の多い地方へ行くことが多いのかもしれません。
素晴らしいお天気に恵まれた旅行も沢山ありました。

ポルトガル領のマデイラ島、スペインの端っこにくっついている
ジブラルタル、バルセロナやバミューダ諸島、など、
南方へ行けば雨女と雨男かもしれない私たちでも、お天気には恵まれました。

しかしそんな楽しいお天気に恵まれた旅行以外に、心にくっきりと残るのは、
「あの時の大雨…」です。
その時は、残念に思っても、雨の旅は、何故か心に残るのです。

大雨で思い出すのは、なんと言ってもスコットランド、ハイランドの旅行です。
私は、エジンバラに暮らしていたこともあったので、長期のホリデーだけではなく
週末に、ハイランド(スコットランドの山岳地方)へ行くことがよくありました。

そんなよく行ったハイランドホリデーの思い出には雨が付き物
です。
本当にスコットランド、特に西側は、嫌になる程雨が多いのです。

でも、旅行者にとって、憎き雨の、その良さを、
私は、ハイランドで見つけることが出来たのです!

それは、ハイランドならではのことなのかもしれません。

「スコットランド・ハイランドの旅行は夏に限る!」と、勧める人が
やはり、多いのですが、私がお勧めしたいのは、断然夏が終わった秋です。

少ないけれど山の表面を覆う、ヘザーの牧草が枯れて、岩肌が露出し、
(私が思う)山が本来の姿を見せてくる頃です。

ハイランドを表す、一番ぴったりだと思う言葉は
【おどろおどろしい】、そしてその言葉がメキメキと威力を発揮するのが9月、10月ごろ。
夏の太陽や青空が消え、どんよりとした灰色や黒い雲が空を覆い始める頃です。
だけどまだそれほど寒くはないので旅行者にとっては、そこは嬉しいポイントです。

11月になると、寒さが厳しくなり、12月になると、雪が降り始めます。
山に雪が積もると、ヘザーに葉っぱがついた時と同じように、その山の不気味さが雪で消されてしまいます。
魔物的だった山が、粉砂糖が掛かったチョコレートケーキのようになんだか可愛らしくも見えてきて、その魅力である恐ろしさが、すっかりなくなってしまうのです。

だから、雪の降る前、まだそれほど寒くない9月、10月が、おどろおどろしいハイランドを体験するのには、絶好のチャンスなのです!

そしてその時期、怖くなってきた山に降る雨で恐怖度アップです!

スコットランドは風が強いので、空模様が
どんどん変化します。天気が良かったと思うと、
不気味な真っ黒い雨雲が向こうからやってきて、それがあっという間に
頭上いっぱいに広がり、ポツポツと雨が降り出します。

山を歩いていて、向こうの山の空の上の真っ黒な雨雲がこちらに向かって
広がってくるのを見つけた時の、得体の知れない恐怖感。
大自然に呑み込まれそうな、あの恐ろしさは
街の者がすっかり忘れている感覚、人間がいかに弱小であるか、自然にはどうやったって勝つことが出来ない…

その事実を確認した時のなんとも言えないあの恐怖。

雨の多いスコットランド、ハイランドに、私が惹かれ続けるのは、その感覚を思い出せるから、それが理由なのかもしれません。

そういえば、恐怖とは別に大雨に感謝したハイランドのホリデーがありました。
雨が多いスコットランドと言っても、あれほどの雨続きは
珍しい、と言う時のことでした。
そのホリデーは、天気予報通り、着いたその日から、帰るその日まで
正真正銘大雨続きでした。
行きの飛行機の中で、私は「また雨か~」と、嘆いていたことを覚えています。

その週末、雨は一回も止むことなく、ずっと振り続けていました。
それも、大雨です!こう言うことは、雨の多いスコットランドでもかなり珍しいことだと思います。

さすがの私も、へこみました。
しかし、大雨の中をドライブしていると、今までに見たこともないハイランドを見ることができたのです!
それは、山のあちらこちらで溢れた水が滝となって流れている様子でした。
滝の多いハイランドでも、これほどの滝の数とその水の量を見たことがありませんでした。
滝が好きな私にとって、それは思いもよらぬ素晴らしいプレゼントでした。

スカイ島には、有名な「キルト岩の滝」があります。海にそびえ立つ「キルトロック」と呼ばれる断崖絶壁から、60メートル下の海へとパワフルに飛び込む滝ですが、その日は水の量と轟音、それに加えた強風で、下を覗くだけで、谷底へ吸い込まれそうな恐怖を感じ、普通だったら、ドキドキワクワクを楽しむ私でも、この日だけは、下降口から谷底の海を覗くことが出来ませんでした。

「大雨のお陰さま!見たことのないハイランドを見せてもらうことができました。」と
帰りの飛行機では、雨に感謝していた私でした。

さて、ホリデーでは、雨にガッカリしてしまいますが、
街に戻った普段の私は、雨の日が結構好きです。特に月曜日の雨が好きです。
週末は外に出ることも多いので、出来たら晴れてほしいと
思うのですが、
月曜日になり、仕事を始める時に雨だと、とても落ち着いて頭と心を仕事モードにシフトできるから、
特に、冬の暗い時期の雨は、昼間から電気を点けたくなる暗さです。
私は電灯の灯りの下で仕事をするのが好きなので、雨の暗い月曜日にはヤッタ!と、思ってしまいます。

私の好きなサマセット・モームの短編小説に【雨】があります。
小説の舞台は、南洋のサモア諸島。
スコットランドの暗く冷たく鬱になりそうな重い雨や、私の好きな心を落ち着かせる静かな雨とは違って、南洋の生暖かい長雨は、ジワジワゆっくりとと躁の陰湿な魔力で人の心を奪うようで、小説の中の宣教師をついに狂わせ禁断の世界へと導いてしまう…

と、雨には様々な力があるようです。

子供にとっての雨はまた違います。私は幼い頃、雨が降ると家で絵を描いたり工作をして遊んでいました。そして、雨が止んで、外に出ると、当時はまだ舗装されていない道路のあちこちに、大きな池のような水たまりが出来ていたので、そこを長靴でバシャバシャと歩いたり、水たまりでスイスイ水上を走るアメンボを見て興奮していました。子供は雨が降れば雨の遊び方をよく知っているのです。幼年期の雨の懐かしい楽しい思い出は私の心に沢山残っています。

トマムの雨の休日から、あっちこっちへと、思いが飛び交い、
雨をテーマにパッチワークの様に色々な思い出をつなぎ合わせて書いてしまいましたが、夏が終わり秋の長雨の時期が来ました。

雨の日にはノートを持ってカフェに飛び込み
自分作戦会議をしましょう!それは、自分に向き合う絶好のチャンスです。
そして、気が向いたら是非、目に入ったものをスケッチして遊びましょう!
そして、その絵にお話をつけてみたり、詩を書いてみたり…

クリエイティブに内面に向かって活動する時期到来!
大人には、大人の雨の楽しみ方があるのです。

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【きょうのヒント】
今回のカフェは、トマムのホテル内です。
少しだけわかりづらい所にありましたけれど、そこは
静かなほっとできる小さなセルフサービスのライブラリーカフェです。
このカフェを見つけることが出来たのも、ホテル内に閉じ込められてしまった雨のお陰様でした。

そうなのです。
恵の雨に感謝です!

前回のこたえ】
塩見茶屋
島根県松江市北堀町319番地

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About Author

島田カオル

東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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2件のコメント

  1. 雨の月曜日が好き、、、ちょっと、意外でした。
    カーペンターズの歌の~Rainy day and Monday always get me down ~が印象的に残っているので、皆、そういうものかと思っていたからです。
    仕事を始める時に雨だととても落ち着く、というカオルさん。
    人の感じ方って色々、と、またまた改めて気づかせていただけました!
    ありがとうございます♬

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