路上に停まっている、コペンのヴァンカフェ

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デンマークへ引っ越してきて、約1年が過ぎました。
デンマーク語を話せなくても、やる氣がなければ、英語だけで暮らせるのが、コペンハーゲンです。イギリス人の相棒に言わせると、殆どのデンマーク人はほぼ完璧な英語を話すそうです。

しかし、イギリス英語に甘んじない語学の勉強が好きな相棒は、早速高い授業料を払ってプライベートレッスンを受け始め、私にも早く勉強を始めるよう促しておりました。
新たな難関な言語を学ぶことに対してとてもレイジーな私は、中々デンマーク語に取り掛かろう!という氣持ちが芽生えずに、そこから目を逸らせていたのです。

そしてある日、彼は見つけてしまいました。

「カオちゃん!デンマークには、居住権を持つ外国人のための語学学校があってね、授業料は試験が受かれば免除されるんだって。これ、やるしかないね!リンク送ったから、カオちゃんも申し込んでね」

うわ~、またです。また、私は相棒に背中をドーンと押されてしまいました。
なるべくだったら、デンマーク語は避けて通りたい…と、思っていたのですが
こうなると、私はやらない、とは言えません、逃げる道はありません。
しかし、考えてみると、デンマークが私を住まわせてくれるのだから、やはり礼儀として、ある程度のデンマーク語は使えるようにならなければ…
そうでなければ、それは失礼というもの。
どれだけ、できるようになるかは別として、その氣持ちだけでも
持たなければならない、そう思った私はついに決心をしたのです。

簡単な電話でのインタヴューがあってクラスが決まり、ついに3月から授業が始まりました。

パンデミックのために、運よく、コペンハーゲンからエジンバラやロンドン、そして東京へと場所を変えながらも、私はオンラインで授業を受け続けることができました。

さて、学校が始まってすぐに私は氣がつきました。

今までも英語とフランス語を勉強して、なんとなく話せるようにはなったので、今回も、そうなるだろうと思い、勉強をすると決心した私は、前向きに数ヶ月後を楽しみにして、デンマーク語に取り組み始めたのです。

今でも覚えているのが、パリでフランス語を学んでいた時のことです。殆ど話せなかった私は勉強を始めて数ヶ月したある日、お世話になっていたフランス人と道でばったり出会った時、覚えたてのフランス語で話をすると、「まあ、あなたフランス語を話せるようになったのね!」と喜んでくれたのです。

だから、なんとなく、今回も数ヶ月すると、日常会話は話せるようになるのではないか、と思って始めました。

しかし、何かが今回は全く違う…、そう氣がついたのです。
デンマーク語という、難解な言語のためだから、と優しいことを言ってくれる人もいるけれど、問題はそれもあるかもしれないけれど、しかし本当の原因は、この古く錆びている私の頭!

英語とフランス語を学んだのは、あの頭の柔らかかった10代、20代のこと
今の私の鈍くなってしまった60代の頭とは違うのです。

特に最近になって新しいことを学ぶことをしていなかったせいか、
氣がついていなかったのです!それは驚くほど、古く錆び付いていたのです!

何もかもが、ほとほと頭に入らないのです。

発音が難しい、子音がずらずらと並んでいて読むことが出来ない、スペルが全く覚えられない、その上、リスニングはとんでもなく聞き取りにくい…

英語のアルファベットにはない、見慣れない文字もあり、
発音したことのない音がある、フランス語のRは難しいとはいうけれど、
難しさのレベルが違うのです。
それは喉の奥に大人と子供のカエルでも飼っていそうな、というのでしょうか… oh dear
子音の続くスペルが長い文字、なのに発音は短い、
発音しない文字が多いのです。DをソフトなLのように発音したり、言葉と言葉をつなげてしまうリエゾンが多い…

あ~、これじゃあ無理!私には絶対に聞き取れないし、3000年生きていたって
話せるようになれない!

読めない、書けない、聞こえない、記憶出来ない!

数字、時計の読み方も、驚いてしまうようなデンマーク語。
フランス語の数字の読み方も、英語のように簡単ではないけれど、
デンマーク語はそれ以上ヘンテコりんです。
例えば数字の59は、後ろの9から読み始め、9と60まで半分 のような言い方をします。英語で言えば、9 and half 60と、こんな感じです。
100のスペルは最後にeが付くけれど、英語とほぼ同じで hundrede  と書くのですが、発音はなんとフナル!
え?なにこれ!?

とにかく、初めはデンマーク語の構造が、とにかく掴めなくて、何をやっても覚えられない!
教科書に向かう私は、何を聞いてもチンプンカンプン
この歳になってこんなことを始めたことを後悔するし、自分の頭の悪さに、ほとほと嫌気がさし、ストレスフリーであった私は、学校のある日が憂鬱になってしまいました。

だけど、始めてしまったのだから、モンクチャン(我が家では、息子たちが文句を言った時に、アッ!モンクちゃんが出た!と、よく言って文句にストップをかけていた、呪文の一つ)にならず、とりあえず、少しの間はデンマーク語に集中しようと決めた私は久しぶりに毎日2、3時間ぐらいのガリ勉を始めました。するとどうでしょう、その甲斐もあって、この錆び付いていた頭に少しづつオイルが染みてきたのか、絶対に聞き取ることなんて無理!と思っていたデンマーク語が
少しだけですが、言語の構造、つまり文法を少しづつ理解するようになると、聴こえるようになってきたのです!

覚えてもすぐ忘れてしまうのでやり直しの繰り返しではあるけれど、意味不明だったスペルも不定形が多いとしても、そのルールがわかると、少しづつ覚えられるようになってきたのです。
それにあの絶対に覚えられないと思っていた数字や時計の読み方も、なんとか覚えることが出来るようになってきました。

落とすための試験ではないので、難しいものではなかったけれど
6月と10月にあった2度の試験に嬉しい事に合格出来、授業料も戻って来ました。

これから数ヶ月コペンハーゲンを留守にするので、次回の授業はまた来年の3月ぐらいに再開しようと思い現在は休憩中ですが、
しかし勉強をしてないとすぐに忘れてしまうだろうから、午前中のルーティーンの中にデンマーク語の復習、という時間を設けました。

新しいこと、知らないことを学ぶ楽しさ、というのは格別。
私は本来独学が好きなのだけれど、今回学校へ入って、コペンハーゲンに戻ってからは、パンデミックの影響もなくなり、学校へ通い始めることになり世界各国から集まってきた若いクラスメート達とも友達付き合いができ、長期の客人としてのコペンハーゲンの生活が、語学を学ぶことで、本当にコペンハーゲン住人になったのだ、と、少し自覚するようになり、デンマーク暮らしも地に足がついた感覚になってきました。
そしてやる氣がムクムクと湧いてきました。

私の中にも、まだ新しいことを学ぶことが出来る能力が残っていた、
そんなことがわかっただけでも、とても嬉しくなり、そうなると
もう少しやってみよう、という氣持ちが出てきて、段々とデンマーク語の
勉強が楽しくなってくるのです、なんとも不思議なこと。
あんなに、嫌だと思っていたのに!

何でも、食べず嫌いはダメなのでしょう、というか、それをしていたら新しい世界を見るチャンスを失っていることに氣がつきもせずに過ごしてしまうのです。なんとも、もったいないこと!

そう思うのだけれどね、でも、興味のないことを始めるとか、あまり好きじゃない世界に身を置く、というのはやはり面倒だし、今更もう嫌だな~、と思ってコンフォートゾーンに住みついてしまいがちです。だけど、勇気を持ってそこを飛び出し、あたらしい世界に飛び込んでみると、本当に、そこには想像以上の新しい世界が、待っているのです。どんなに歳を取っても、氣持があればそこのドアは開かれるようです。

私が思い描いていた人生にデンマークは存在していなかったのに
なのに、60歳すぎて、デンマークに暮らすことになり、語学学校へ通いながらデンマーク語を学ぶことになリました。
人生とは、本当に何が始まるのか、予想がつかないもの。

私の相棒とは、そんなことで、思いもかけず、デンマーク語を学ぶ、という
同じ趣味を持ったので、メッセージのやりとりや、挨拶など、ちょっとだけデンマーク語にしてみたりして、遊んでいます。

つまり、今回もあたらしい世界に導いてくれた相棒に感謝することになってしまったのでございます。

避けていたけれど、意外と良かった、面白かった、ということはよくあるのです。今回のデンマーク語学校も、そして今回のカフェもそんなところです。

【なんとなく氣になっていたけれど、立ち寄らなかった】カフェ、それは朝の私のお散歩コースBにありました。

私の朝のお散歩AとBコース、それぞれのルートにはいくつかのカフェがあります。
Aコースの水辺にあるカフェは、私のお気に入りです。キラキラと光輝くみなもをみながらいただくカフェの美味しさ、気持ち良さと言ったら!
カフェにはビールやワインもおいてあるので、午後のお散歩の時には、ちょっと一杯飲んで休憩することもあります。
このようなカフェで時を過ごしている時、私はなんて幸せなんだろう、と感じます。

そして、Bコースのお散歩ルート。ここにも水辺のカフェがあるのですが、私が
とても氣になっていたそのカフェは、水の近くではあるのですが、
それは道路上に停まっているヴァンのポップアップカフェです。
ヴァンの停まっている場所は、数本の木があるちょっとした広場になっていて、椅子とテーブルがいくつかおいてあります。

朝のラッシュアワー時、目の前の道は自転車や車が忙しく走っており、ちょっと外れたそのコーナーだけ、静止しているような空間です。会社へ行く途中の人が自転車の流れからしばし降りてカフェに立ち寄り、数分を楽しんで、また通勤の流れに戻る。
忙しい朝の道の上だけど、カフェに立ち寄る人も、カフェを作るお兄さんも、なんとなくのんびりとしていて、なんだか楽しそうです。
その光景を目にするたびに、私はそのコーナーが氣になりました。
とは言っても、目の前は忙しい通りだし、カフェといっても、簡単な椅子とテーブルがいくつか置いてあるだけのヴァンカフェ。

氣になるけれど、わざわざそこでカフェを買うこともないな、と思っていつも通り過ぎていたのですが、ある朝
「そんなに氣になるんだったら、ちょっと寄ってコーヒー飲んでみれば?」
と、頭の中で相棒に背中を押されたように、急に思い立って、寄ってみました。

忙しい自転車や車の流れから外れて、数分だけ朝の大切な時間を楽しんでいる
デンマークのサラリーマンの氣持になったような氣がして、私も列に並んで
カフェのお兄さんに、
「おはよう、アメリカーノ1つ下さい」
「はい、どうぞ、良い1日を!」
「ありがとう、あなたもね!」

それだけのデンマーク語だけど、朝のお散歩の中で交わすことができた私は
本当にコペンハーゲンの住民になったような氣がして、なんだかとても嬉しくなってお散歩を続けました。

そうそう、そういえば、知り合ったデンマーク人に、デンマーク語を習い始めた、と言うと、彼らはちょっぴり氣の毒そうな顔を私に向けて
「デンマーク語はとても難しいけれど…、Good Luck!」
そう言います。

コペンハーゲンの住民でいることが出来るように、
私は楽しくデンマーク語のお勉強を続けてみようと思っています。

あなたは、最近何か新しいことを学び始めた???

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About Author

東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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