ブルースカイに焦がれて

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usagi


ここのところ途端に日が短くなったように感じます。

イギリスの夏の日没の時間が遅いのは、皆さんよくご存知のことと思います。夏に日没が遅いということは、逆に冬の日没時間はとびきり早いのでございます。6月の日の出時間は4時43分、日没時間は21時22分。1月は日の出時間が8時6分、日没時間はなんと15時51分なのでございます。夏と冬では可照時間が10時間も違うのであります。動物園はこの長い夏の日を利用して、6月と7月は18時に一旦昼の部を閉めて、新たに18時から22時まで夜の部を開園します。ところが冬の閉園時間は16時。15時半になるとちょっと離れると人の顔もよく見えないくらいに暗くなる日もございます。

わたくしは暑さが苦手なので以前は冬が大好きだったのですが、今年は6月が一番好きになりました。イギリスは3月ごろからラッパ水仙や、紫や黄色のクロッカスが次々と開花してくるのですが、6月の草花の美しさは息をのむようです。木々の緑もみずみずしい若葉の色で、国花のバラがありとあらゆるところで咲き誇ります。日本の桜が見事なように、やはりバラはイギリスの土壌や気候にうってつけの花なのだと思います。フロントガーデンは玄関周りなので、パーティーをしたりお茶を飲んだりする庭と違ってあまり手の込んだものは少ないですが、それでも道を歩いているとありとあらゆる品種の美しいバラが楽しめるのです。Regent’s Park の Queen Mary’s Garden のバラは素晴らしいですが、わたくしはGeffrye Museum の庭のバラが大好きです。ここの庭はハーブを中心としたどちらかというと地味めな彩りなのですが、いつまでも座っていたい気持ちにさせられる素敵な庭なのでございます。

「もしかしたらわたくしは夏も好きになれるのかもしれない」と、爽やかな色と涼やかな気温の6月中に考えることもあるのですが、7月になった途端にとんでもない錯覚をしていたと我に帰るのでございます。もちろん日本の酷暑に比べたら、ロンドンの暑さなど口にするのもおこがましいのはわかっておりますが、冷房のない30℃越えの数日というのはそりゃたまらんのでございます。特にわたくしの部屋は真西を向いておりますので、午後から夜9時まではブラインドをピタリと閉め、ドアにつっかえ棒をして一晩中扇風機をまわしている日も少なくありません。日中は冷房の効いているデパートや図書館に逃避することもございますが、そこまでバスで移動しなくてはなりません。ところがここのところダブルデッカーの二階は窓が開かなくなっていて、もちろん冷房が取り付けられているのですが、なぜだかこちらの運ちゃんはその使い方をご存じない方が多く、恐ろしいことに温風にセットされていることもございます。ついでにこちらの方々は体臭も強うございますので半狂乱になりかねません。日本はもちろんでございますが、たとえロンドンでもわたくしはどうも夏は好きになれません。

ただ冬に恋しくなるのは青い空。わたくしは冬に日本に帰国するのですが、たとえ冬でも日本の青空は美しい。やはり日が高く上がるからなのでございましょう、胸のすくような青空を毎日のように眺めることができます。イギリスは冬は天気の良い日が少ないのでグレイの日が多く、たとえ晴れても日が高く上がらないのでなんとなく寂しげです。今月いっぱいで夏時間も終了いたしますので、今のうちにこの青を目の奥に焼き付けておきましょう。

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洋画とグラフィックデザインを専攻したのち、イラストの道へ。縁あって英高級紙「The Times」の挿絵イラストを担当。同紙から数多くの依頼を受け、新聞のタイトル欄にエリザベス女王と並んでイラストが印刷される。児童福祉に関わる団体をはじめ、クライアント・ベースの仕事をするフリーランスのイラストレーター。4年に渡ってロンドン動物園で週に一度ボランティア活動にいそしんだ経験があり、動物イラストは本物からのインスピレーション。

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