ゼラニウムの散らばる歩道を

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usagi


ある日、大英博物館の近くの細い裏道を歩いておりましたら、なぜだか歩道に枯れたゼラニウムが散らばっており、上を見上げると三階の窓際にゼラニウムのウィンドウボックスが鎮座しておりました。上にお住いの方が手入れをされたのでしょう。日本でしたら、自宅の庭ならばまだしも公共の通りに植木の残骸を散らかすなんて、と決して褒められたことではないでしょう。

日本で歩道の掃き掃除や草取りをされている方がを見ると、なんて丁寧に仕事をされるのだろうと感心いたします。掃除用具からして、細かいものを掃き集める小ぼうきや、手でつまみづらい草をピンセットのようなもので抜き取ったり。こちらではそもそも指でつまめないものは初めから処理の対象外ですし、道を掃くのは幅1メートルくらいのデッキブラシ。細かいものなんてボロボロ掃き残しています。

よく思うのは、日本は台風や地震などの災害が多いからなのかもしれませんが、街路樹も常に床屋に行きたてのようにきちんと刈られております。たとえ家の前に立っている街路樹でもこちらは大木が多く、一応毎年枝をはらいに来ているのですが、高さも日本の街路樹の2倍から3倍あります。街路樹用の樹木ではなく、森に生えている種類の木を植えているところも多くあり、根っこが下から家を突きあげて建物が半壊するお家もございます。

でもわたくしは、ちょっとばかり掃除が行き届かない街並みの方が楽しく感じることが多いです。ゼラニウムの取り散らかった歩道を、見事な枝振りの街路樹の間から垣間見える青空を、つい写真を撮りながら歩いてしまいます。枯葉の散るシーズンは、掃いても掃いてもきりがないからタイミングを見計らってお掃除の方がゆっくり来るのでしょうか、赤や黄色に彩られた落ち葉が敷き詰められて、日ごとに冷たくなっていく空気を感じながら秋を楽しんでいます。

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洋画とグラフィックデザインを専攻したのち、イラストの道へ。縁あって英高級紙「The Times」の挿絵イラストを担当。同紙から数多くの依頼を受け、新聞のタイトル欄にエリザベス女王と並んでイラストが印刷される。児童福祉に関わる団体をはじめ、クライアント・ベースの仕事をするフリーランスのイラストレーター。4年に渡ってロンドン動物園で週に一度ボランティア活動にいそしんだ経験があり、動物イラストは本物からのインスピレーション。

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