早春のヒトコマ

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usagi


真冬のロンドンは太陽も低空飛行で、例え晴れていても太陽が遠くに行ってしまったような弱々しい光です。しかし今は真冬に比べると随分と日も延び、あちらこちらでクロッカスが咲き始め、朝も小鳥がさえずるようになりました。着実に春が近づいています。春と言えばイギリスでは喇叭水仙。クリスマスに喇叭水仙をもう売っている気の早い所もありましたが、太陽の光の下で開花するからこその黄色です。わたくしはめったに花を買うことがないのですが、喇叭水仙だけはつい何度も買い求めてしまいます。とは言えまだ気温も低く今年は特に寒い日が続いています。

そう言えば先日近所の商店街を100メートルほど歩く間に、ダウンジャケットを着ている人と16人すれ違いました。これは私にとって大記録なのです。ダウンとフェザーの含有率、ガチョウ・カモ・アヒルの違い、羽毛のとれる産地などによって値段も大きく変わりますが、高価でファッショナブルなものではなく、軽くて暖かいお手頃価格のダウンジャケットを着ている人が去年から驚くほど増加したのです。どういうわけだかイギリスは安価なダウンジャケットの普及が日本に比べると大変遅れていました。3年前はダウンジャケットを着ている人を、ほとんど見たことすらありませんでした。日本に住む人々(北国の方々は別)に比べるとこちらの人は寒さに強いと思います。いや、強いと言うより神経の数が半量なのではないかと思うような人もよく見かけます。やせ我慢とかファッションではなく、コートもジャケットも着ずに薄手のセーター1枚で北風の吹きすさぶ中、黙々と闊歩されているのはまず白人。そう言う人達が多く住むイギリスでは商品開発も遅れをとっているのかもしれませんが、やはり暖かな衣服を必要としていた人はいたのだと思います。おばあさんや子供が軽いダウンジャケットに身を包んで歩いている姿は、心なしかいつもより背筋が伸びているように見えました。

Barn owl

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洋画とグラフィックデザインを専攻したのち、イラストの道へ。縁あって英高級紙「The Times」の挿絵イラストを担当。同紙から数多くの依頼を受け、新聞のタイトル欄にエリザベス女王と並んでイラストが印刷される。児童福祉に関わる団体をはじめ、クライアント・ベースの仕事をするフリーランスのイラストレーター。4年に渡ってロンドン動物園で週に一度ボランティア活動にいそしんだ経験があり、動物イラストは本物からのインスピレーション。

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