中産階級化の波とビーズ屋さん

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先日小雨そぼ降る中、俯き加減に近所のバス通りを歩いていたら、工事中だった建物の正面に’GAIL’s’ と名称が入っていたので思わず立ち止まってしまいました。GAIL’sはArtisan Bakeryと銘を打つカフェの併設されたとてもおいしいパン屋さんです。

この通りは、ベイクドビーンズをてんこもりにしたイングリッシュブレックファーストを出す店や、個人経営の電気屋、薄暗くていろんなものが積み重ねてあるけれどとにかくなんでも安く売ってる雑貨屋、お年を召したご婦人に大変人気のあった洋服屋など地味な下町の雰囲気があったものです。しかし今は、次から次へと風采の上がらない店舗は姿を消し、労働者階級の初老の殿方が集まるパブも取り壊されて、若者が好む今風のパブに立て直されました。わたくしの大家さんの申すには、この近くにフランスの小学校が創立されフランス人がこの界隈に住居を構えるようになり、それ以来フランス人の好むちょっと気の利いた小洒落た店が集まってくるようになったのだと言うのです。この通りの丁度真ん中くらいには、とても気の利いたオーガニックのヴィーガンショップが店を広げ、わざわざ地下鉄やバスに乗ってこの店に買い物にいらっしゃる人も少なくありません。

一方で、オリジナルのアクセサリーをデザインして手作りされる器用なお友達は、電車を乗り継いでこの通りにある手芸屋さんによくおいでになるそうです。ここは35年前にオープンしたのだそうで、おばあさん、その娘さん、そしてお孫さんの三代で切り盛りしているのだそうです。今ビーズはインターネットで販売する店ばかりで、ビーズを店頭で販売する店はロンドンではここ一軒しかないのだそうです。この店は外から見るととても地味なちっぽけなお店に見えますが、ドアを開けて中に足を踏み入れると店は鰻の寝床のように奥まで長く続きます。毛糸、フェルト、刺繍糸、布、ボタン、リボンなどなど手芸に使うありとあらゆるものでびっしりと埋め尽くされていて、手芸好きの方にはパラダイスのようなところです。わたくしは手芸は全くいたしませんが、ここのお店には用もないのに立ち寄ってしまうことがあります。おいしいパン屋さんができるのは嬉しいことですが、この店だけはいつまでもここにあり続けてほしい、と願ってしまいます。

http://londonbeadco.com/about-us/  ← 下の方にちょっとだけ店内が見れるビデオがあります。

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洋画とグラフィックデザインを専攻したのち、イラストの道へ。縁あって英高級紙「The Times」の挿絵イラストを担当。同紙から数多くの依頼を受け、新聞のタイトル欄にエリザベス女王と並んでイラストが印刷される。児童福祉に関わる団体をはじめ、クライアント・ベースの仕事をするフリーランスのイラストレーター。4年に渡ってロンドン動物園で週に一度ボランティア活動にいそしんだ経験があり、動物イラストは本物からのインスピレーション。

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