コミュニティの愛されカフェ

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先日個展を開かせてもらったカフェは大変人気のあるお店で、訪れるお客さんを眺めているだけでも楽しいのです。

このカフェは、一つずつパステルカラーに塗り分けられた家の立ち並ぶ、車は行き止まりの通りにあります。店の外観も地味でとても小さいお店なのであります。1989年から創業という長い歴史にもかかわらず知らない人も結構いて、この界隈に住んで50年以上になる88歳の私の友人も、私の個展で初めてこのカフェの存在を知ったとのこと。一方でこのカフェの信望者の数は大変なもので、朝食昼食時はテーブルを取るのも至難の業。朝食は必ずここでとるというお得意さんも少なくありません。このカフェはどんな大きな犬でもお行儀よくしていれば同伴は一向に構わず、もちろん中には動物嫌いの方もいらっしゃるでしょうがそういう方は自然とご遠慮くださるわけで、老いも若きもワンコも食事をしたりコーヒーを飲んだり仕事をしたり居眠りをしたり、思い思いに過ごしています。メニューの数もドリンクを入れたらゆうに50を超えるでしょう。わたくしは日本の喫茶店のナポリタンが大好きなのですが、ここのSpicy Sausage Pastaがナポリタン好きのツボにはまり、個展の開かれている間2度ほどいただきました♡

数週間前にカフェのオーナーのマリオの50歳の誕生日が、土曜日の午後にカフェでお祝いされました。10歳くらいの男の子が見事にギターでBGMを奏で、まだやっと歩けるようになったばかりのお人形のようにまつげの長い美人の赤ちゃんがよちよち歩いてきて、わたくしにシャンパンのグラスを渡してくれました。イギリスでは30歳、40歳、50歳とキリのいい年齢で盛大にバースデーパーティーをすることが多いのです。マリオは「40歳になったときと気持ちは変わらないよ」なんて言っていましたが、最近毎日の仕事がしんどいと感じることが多くなったのだそうです。キッチンには料理を作る女性が二人入っていますが、注文を聞いたり食事をテーブルに持って行ったり下げたりはマリオ一人。朝も7時半から開店し閉店は16時と早いですが、閉店後店内を1時間ほど一人で清掃しています。「もう一日閉店日を作るか、誰か代わりを雇うか夏休み中に考えようとおもうんだ」と個展の最中にマリオがポツリと漏らしていました。

このカフェは1974年にマリオのおじいさんがレストランとしてオープンしたのが始まりなのです。マリオには3人子供がいて、学校がお休みになると朝は誰かしらカフェのお手伝いに来ています。例えマリオが引退してもきっとカフェは子供達の誰かがひきつぐのだと思います。でもそれはまだまだずっと先の話。わたくしは来週またSpicy Sausage Pastaを食べに行くのを楽しみにしています。

spicy sausage pasta

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洋画とグラフィックデザインを専攻したのち、イラストの道へ。縁あって英高級紙「The Times」の挿絵イラストを担当。同紙から数多くの依頼を受け、新聞のタイトル欄にエリザベス女王と並んでイラストが印刷される。児童福祉に関わる団体をはじめ、クライアント・ベースの仕事をするフリーランスのイラストレーター。4年に渡ってロンドン動物園で週に一度ボランティア活動にいそしんだ経験があり、動物イラストは本物からのインスピレーション。

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