
日本橋三越英国展 PART2も、無事に終了しましたね(PART1のお話はこちらから)。PART2では今回、平日と日曜の2回、足を運びました。
平日の午後に向かったのは、スティルルームス。埼玉県新座市と長野を拠点に、茶葉やハーブ、果実などを育て、香りを大切に紅茶やコーディアルなどを作っている会社です。そのブースで目に留まったのが、ローズブルームミルクティーでした。なんて優雅な名前なんでしょう。
見ていると店員さんが「このミルクティーはローズがベースなんですよ」と教えてくれました。「紅茶ではなく、ローズがベース」という言葉に惹かれてしまった私。迷いもなくローズがベースのミルクティーを注文しました。
ドリンクを作っていただくのを待っていると、隣にも何にしようかと迷っている年配の女性がいました。私はお店の人ではありませんし、もちろん何かを売ろうとしているわけでもありません。なのに、なぜか口が勝手に動いてしまったんですね〜。「こちらのローズの紅茶、とてもおいしいんだそうですよ。私も今お願いしたところです」。すると、その女性はとても嬉しそうに「じゃあ、これにするわ。私も同じものください」と注文されました。私はただのお客さんなのに、英国展で知らない方に紅茶をおすすめし、見事に一杯売り上げたことに妙な達成感を覚え、ちょっと嬉しい気持ちになりました。
ローズで優雅な気分になったところで、コーンウォールの人気ブランド「ファット・パスティカンパニー」へ。なんと、2026年 Global Pasty Championships 伝統的コーニッシュ・パスティ部門で優勝したそうです。
何種かの具材があり、どれもレギュラーサイズとハーフサイズがあります。「ハーフにしておこうかな」と一瞬考えましたが、「やっぱりパスティは一個、丸ごとでしょう!」と思い直す私。

レギュラーサイズと、ハーフサイズ。あなたはどちらを選ぶ?パスティは牛肉、ジャガイモ、玉ねぎ、スウェード(カブに似た根菜)を包んだコーンウォールの伝統の味。コーンウォール地方で、この具材を使って作られたものだけが「コーニッシュパスティ」と呼ばれることが許されるのです。今日、私が頬張っているのは日本製なので、ただのパスティですね。
ただ、ひとつだけ確認したいことがありました。できれば熱々で食べたいのです。そこでお店の方に、「これ、熱々ですか?」と聞いてみました。すると、ちょうどそのタイミングで、熱々のトラディショナルパスティが補充されたのです。これはもう、食べなさいということでしょう!迷わず一個お買い上げ。
私はがっつりパスティを抱え、上品なローズミルクティーも携えて屋上に向かいました。PART1と同じパターンですね。
暑い夏の屋上で、厚く熱いパスティをほくほく頬張るのも英国展の醍醐味です。香ばしいパイ生地としっかりとしたボリューム感をいただきました。コーンウォールの炭鉱労働者のランチと言われるだけあります。
そして同じ英国展の食べ物なのに、ずいぶんキャラクターが違うローズブルームミルクティーで喉を潤します。ダマスクローズの香りがふわっと広がり、上には甘酸っぱいイチゴのマリネがちょこんとのっかっています。とても上品なローズが主役のミルクティー。英国の伝統と日本ならではの繊細な感性を重ねたものづくりを続けている、スティルルームスさんこだわりのブリリアントティーです。英国を満喫したというより、英国に満腹にさせてもらった午後。今日の英国展はこれにて終了です。
その数日後、私はまた英国展へ向かいました。今度は最終日前の日曜日の午後。PART1のときと同じく午後からの訪問ですが、今回はさすがに様子が違いました。午後になっても人が増えていくのがはっきり見てとれます。「英国展、恐るべし!」やっぱり最終日前の日曜日は甘くはありませんでした。そして、この日は以前から少し気になっていた場所を目指しました。
私は以前、ボランティア仲間と「いのちの森づくり」の植樹に参加したことがあります。
日本人は神代の昔より木を植え、鎮守の森を作り守ってきました。それが地球環境の維持、生物多様性の貢献になっていくからです。この活動は子どもたちの未来のためにも続いています。そんな経験から、子どもたちの笑顔と日本の未来のために森を守る「アファンの森」の活動にも、以前から少し興味がありました。
アファンの森とは、ウェールズ人の作家で環境保護活動家として活躍された故C.W.ニコルさんが長野県に立ち上げた森。荒れた里山を自ら買い取り、長い年月をかけて再生し、いまでは本来の豊かな生態系を取り戻し、多くの動植物が息づく森となっています。

8月31日に終了した日本橋三越英国展 PART2では、このアファンの森と、ウェールズのチーズ・ブランド「カロンウェン」のコラボレーションで、ソルトビーフサンドイッチが販売されていました。
やわらかな牛肉に、アファンの森のキッチンガーデンで育てたハーブ。イングリッシュマスタードがきりっと効いています。そこにカロンウェンのチーズを加えると、ほどよい塩気が加わり、空腹のお腹をしっかり満たしてくれました。英国のサンドイッチを食べているのに、長野の森の香りがしたのです。
私はソルトビーフサンドを食べながら、この日もうひとつ気になっていたもの、C.W.ニコルさんの追悼展で販売されていた本「森の祈り」を開いて読み始めました。すると昭和61年(1986年)に読売新聞に掲載された「公開質問状」の全文が目に入りました。
そこには、森林が失われていくことへの強い危機感が書かれていました。そして山から熊が下りてきて、畑を荒らすことについても触れられていました。1986年のことです。今は2026年。あれから40年経ちました。本の中の言葉を読みながら、私は驚きました。「昔の話」だと思っていたことが、今、私たちの目の前で起きているからです。
森が失われれば、そこに暮らす動物たちの環境も変わります。そしてその変化は、やがて人間の暮らしにも戻ってくるのです。ニコルさんが伝えたかったことは、森だけの問題ではなかったのだと思いました。森は、人間だけのものではないということです。ニコルさんの言葉に「森林を破壊すると、文化もまた死滅する」とありました。日本という国をつくっているのは、人間だけではありません。動物も、植物も、鳥も、魚も、虫たちも。みんながそこにいて、一緒に自然をつくっています。だからこそ、人間だけが便利で幸せになればいいのではなく、自然の中で生きるものたちも含めて、どうすればみんなが幸せになれるのかを考える必要があります。「森は、人が手をかければ応えてくれる。森は、人を幸せにしてくれる。」ニコルさんが残したそんな言葉を、私はこの日改めて考えていました。
そして英国展に来たはずなのに、私が最後にたどり着いたのは「森」だったのです。ウェールズ出身のC.W.ニコルさんが育てた日本の森。英国と日本。食と森。一見すると別々のものに見えるけれど、今回の英国展ではそれがひとつにつながって見えました。私もまずは自分の身近なところから、森や自然についてもう少し考えてみようと思いました。
と、必死で本を読んでいたらせっかくのドリンクを飲み忘れていたことに気づきました。
手にしていたのは、ニコルさんが選定したボタニカルを用い、甥のジェームス・ニコルさんがロンドンで丁寧に蒸留したプレミアム・クラフトジン「こころ」です。青山椒を含む9種のボタニカルが織りなすピリッとした刺激と、清々しい香り。英国と日本が響き合う一杯。

う〜ん、やっぱり、英国はおいしいです!
【一般社団法人 C.W.ニコル・アファンの森財団】
〒389-1316 長野県上水内郡信濃町大井2742-2041
電話番号:026-254-8081026-254-8081
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