男の色気!? 田村興一郎と仲間たちがロンドンで踊った![Electric Japan 2022]

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日本のコンテンポラリー・ダンスや演劇、ヴィジュアル・アートなどを紹介する芸術祭「Electric Japan 2022」が、ちょうどこの5月から6月にかけて開催中だ。

会場はノッティング・ヒルのCoronet Theatre。ヴィクトリア朝の建築が美しいベニューそのものの美しさにも目を見張るものがあり、今回はコロネット・シアターと日本のコラボレーションと言う意味合いも強い。

 

さて、「Electric Japan 2022」のラインアップである。ざっと目を通すと 「人間存在が本来持っている泥臭さとは?」なんてことを考えさせられる、元気のいい演目や展示がズラリと並んでいる。意図しているしていないにかかわらず、電子化が進む現代へのアンチテーゼが今回の隠れテーマなのではと感じている。ダンスや演劇など身体を使った表現ほど、人の可能性を見させてくれるものはないから。身体は人間の基礎となる部分だから。

幕開けを華々しく飾ったのは、多方面で活躍中の在英フォログラファー、平田真弓さん / Mayumi Hirataの写真アート。彼女がここ何年にも渡って取り組んでいる「Jump!」と言うテーマの集大成とも言える展示で、文字通り、人が空高くジャンプしている写真!! この写真展についてはまた後日書きたい。

この週末には日本のコンテンポラリー・ダンス界の鬼才、田村興一郎さん率いるダンス・プロジェクト「DANCE PJ REVOが来英し、驚くような演目「F/BRIDGE」を見せてくれた。私はラッキーにも日曜日にお邪魔することができ、その芸術表現の素晴らしさに心打たれた。

テーマはずばり「労働」。田村さん率いる男性ばかりのチームが、その肉体を使って「重労働」を表現していく。身体は疲弊し、目は虚ろになり、互いにいがみ合い、爆発寸前になるまで働かされる。それを象徴するのが「制服」と言う概念。服を脱ぎ捨て、彼らが向かうのは・・・

振付師であり、クリエイターでもある田村興一郎さん自身をはじめ、岡村圭祐さん、神田初音ファレルさん、黒田勇さん、杉本昂太さん、手塚バウシュさんの 6名が舞台いっぱいを駆け回る。お一人お一人の身体能力の高さ、演技の繊細さ・深さなどが際立ち、単なるダンス作品以上のものにしている。重いテーマともあいまって、何か根幹的なものに触れているのか、観客の中には感極まって涙している人もいたようだ。

ストリート・ダンスを思わせる表現から英国のメディアでは「ヒップホップ的」と表現されたようで、重いテーマを現代的なヒネリの中でポップに昇華しているのも特徴的。中核には日本古来の労働に対する保守的な考えへのアンチが横たわっていて、田村さん自身が20代であることを考えると、若い世代が感じている現代日本の社会風潮のようなものを象徴しているような気もした。

ほぼ満席となった客席に座っていたのは地元育ちのロンドナーたちで、在英日本人の数はわずかだった。パフォーマンスが終わると会場は大きな温かい拍手に包まれ、一部ではスタンディングオべーションもあり大盛況のうちに終了。一瞬も気をそらさない緊張感あふれる素晴らしいパフォーマンスに、私自身とても感動していた。

終演後、田村さんに多くの人が感動の声をかけて去っていく。ダンス・パフォーマンスを多く観てきたらしいある女性は「こんなパフォーマンスは初めて。おめでとう」と声をかけていた。

田村さんご本人に話を聞くチャンスがあったので、今回の公演に繋がった経緯なども含めて伺ってみた。

感動のフィナーレ!

ロンドン公演が実現した経緯は?
「パンデミック前から実は来英公演の話はあったんです。2017年にフランスに行ったことがきっかけでコロネット・シアターの方と知り合い、下見にも来ました 。こんな歴史的なシアターで公演ができたらいいなと思っていたので、今回ようやくそれが実現して本当に嬉しく思っています」

2日間を終えてみて、いかがですか?
「実はこちらに来てみて、初めて判明した不具合などもいくつかあり、開演寸前まで予断を許さない状況だったんです。その問題もクリアできて・・・」

どんな問題が?
「小道具として建築資材であるブロックを使うのですが、日本で使っているものと同じものがこちらで手に入らず、代替え品の調達にすごく時間がかかってしまった。すぐに割れてしまったりして、結局すごく重いものにせざるを得なくて・・・」

それは大変でしたね! もう一つ伺いたかったのは、なぜ服を脱ぐシーンがあるのか・・・
「本来の演出では、実はフルモンティ並みの裸体になるはずだったんです。それは日本ではダメだけど、なぜかイギリスではイケると思ってた(笑)。それが、事前の許可が必要だと知って・・・」

R指定を申請する時間がなかったと(笑)
「そうなんです。そこが入るとコミカルさも出てくるはずで、次回は万全の準備で来たいと思ってます(笑)」

 

テーマは「労働」ですよね。それはなぜ?
「実は大学時代から温めているテーマなんです。『労働』って何だろうって。人は制服を着ることで個性を無くし、労働者になり、搾取される。当時の思いを込めた振り付けも残っています。服を脱ぎ捨てるのは、労働への反発を表現したものです。実は年月を経て、僕自身の労働への見方も変わりつつあり、そんなことも今後の振り付けに反映させていければと思っています」

進化する演目、素晴らしいですね、ありがとうございます! ぜひまたロンドンに戻って来てください!

田村さん、ピント合ってなくてごめんなさい汗

田村 興一郎 Koichiro Tamura
振付作家・ダンスアーティスト・パフォーマー。京都での創作活動を経て、現在は横浜を拠点に活動中。京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)で身体表現と舞台芸術を専攻、寺田みさこ、伊藤キムからダンスを学ぶ。大学時代に立ち上げたDANCE PJ REVO(当時Dance Project Revo)を現在も続け、創作を追求。これまでの振付作品数は60作品以上に及ぶ。全国区で活動しているほか、ロンドン、ルーマニア、フランス、韓国、香港など著名なフェスティバルからの招聘上演として参加するなど、海外でも活発に活動。テーマは日常/ミクロから宇宙/マクロまで。 新たな価値観を提示し、既成概念に囚われない作家性が高い評価を得ている。
子どもや老人と関わる福祉型のダンス活動にも尽力。現在は新ユニット「こどもわらい☆ムロタムラ」として文化庁のコミュニケーション能力向上事業への活動を計画中。また独自開発した「誰でも振付家になれるワークショップ 身体美術館」や、参加費500円の「ワンコインワークショップ」などの社会福祉型アーティストとしての活動も多岐にわたる。
ウェブサイト: https://danceprojectrevo.wixsite.com/dance-project-revo/profile
フェイスブックhttps://www.facebook.com/people/Tamura-Koichiro/100002899369555
ツイッターhttps://twitter.com/drip_tamtam710

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Electric Japan 2022
期間:2022年6月11日(土) まで
会場:Coronet Theatre
103 Notting Hill Gate, London W11 3LB
最寄駅: Notting Hill Gate
詳細
https://www.thecoronettheatre.com/whats-on/electric-japan-2022/

今後のスケジュール:
5月18・19日
Trigger Point – Nature & A Hum San Sui

5月19〜21日
United ME
Ney Hasegawa / FujiyamaAnnette (長谷川 寧)

5月26・27日
4:48 Psychosis: A Contemporary Punk Opera

6月2〜10日
Saburo Teshigawara: Tristan and Isolde  勅使河原 三郎

※2016年頃から現在のような色気のあるシアターに生まれ変わったコロネット・シアター。ロックダウン中にもシアター部分に改修工事が入り、ますますパワーアップ中。この美しいシアターで観劇できる楽しさあり!またこれについては改めて^^

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岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス、各種媒体に寄稿中。2014年にイギリス情報サイト「あぶそる~とロンドン」を立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。NHK文化センター名古屋教室「江國まゆのイギリス便り」講師。MUSIC BIRDのラジオ番組「ガウラジ」に月一でゲスト出演。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

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