ロンドンの「オーバーグラウンド」が新しい名前と路線カラーを導入!

0


ロンドナーたちの日常の足として大活躍している「オーバーグラウンド」が、今月からリブランド!  11月28日から全6路線に、それぞれ新しい名前とカラーが導入されて話題になっています^^

オーバーグラウンドは主にロンドンの住宅地郊外を結ぶネットワークで、2007年に初登場。オレンジ色のカラーで知られていますよね。そして現在までに6路線、113駅を開通!

オレンジ1色では少し複雑で分かりづらくなってしまったので、2023年春からオレンジ色の統一カラーのもと、各6路線にそれぞれ名前をつけて、色分けしてわかりやすくするというアイディアの実現が進められてきたようなのです。地下鉄のシステムにならったもので、ロンドン・アンダーグラウンドの中に、ブルーのヴィクトリア線やイエローのサークル線があるのと同じことです。

とてもロンドンらしいなと思ったのは、「多様性」がキーワードとなるロンドンの各地域と歴史に敬意を表したネーミングになっていることです^^  以下が新しい路線名とカラーです。チェックしてみてください!

Lioness ライオネス線(イエロー)
ワットフォード・ジャンクション ⇆ ユーストン

ウェンブリー中心部をまっすぐに走る路線。2022年、UEFA女子ユーロ決勝でイングランド女子「ライオネス」がここで優勝したことと、それによって皆に大きな勇気と希望を与えたことに敬意を表して。

Mildmay マイルドメイ線(ブルー)
リッチモンド、クラッパム・ジャンクション ⇆ ストラットフォード

東ロンドンにある慈善団体、NHS病院であるマイルドメイ病院に敬意を表して。その歴史を通してこの病院は、貧困、コレラ、HIVなどに影響を受けた人々を積極的に支援してきたことからロンドンの LGBTQ+ コミュニティへの敬意にも繋がっています。

Windrush ウィンドラッシュ線(レッド)
ハイバリー&イズリントン ⇆ ニュー・クロス、クラッパム・ジャンクション、クリスタル・ パレス、ウェスト・クロイドン

1940年代にウィンドラッシュ号に乗ってやってきたカリブ海諸国の移民と歴史、そのコミュニティに敬意を表して。

Weaver ウィーバー線(ブラウン)
リバプール・ストリート ⇆ エンフィールド・タウン、チェスハースト、チングフォード

ユグノー教徒の絹、アイルランド人のリネン、バングラデシュ人の衣料産業など、時代や人種を超えて、繊維産業が盛んな地域の歴史に敬意を表して。

Suffragette サフラジェット線(グリーン)
ゴスペル・オーク ⇆ バーキング・リバーサイド

イギリスにおける女性の参政権を求める最初のムーブメント「サフラジェット」にちなんで。特に東ロンドンの労働者階級の女性たちによる運動へ敬意を表しています。

Liberty リバティ線(グレー)
ロムフォード ⇆ アップミンスター
その歴史の中で、王室の権限から独立した状態であった(=リバティ)ヘイヴァリング自治区の歴史に敬意を表して。

Wikipedia「London Overground」より。このマップの中でゾーン1内の駅は、リバプール・ストリート駅とユーストン駅をはじめ、ほんの数駅のみです。

 

路線名の由来について、もっと詳しく知りたい方はこちらのロンドン交通局のページで。
新しいオーバーグラウンドの詳細地図はこちらで。

サディク・カーン市長、やりますね。

やっぱりロンドンって多民族都市なので、こういうネーミングの意味を探るだけでもワクワクします。

いずれも「ハハーン、そうきたか」と深くうなづいてしまう歴史や特徴ばかりを取り上げていますが、個人的にあまり知らなかったために興味をそそられたのは、リバティ線の由来。ロンドンの決定的な特徴である「自由」を讃えているそうです。

かつてHaveringをはじめ、約90の全国の自治区が与えられていた「リバティ」というステータスは、中世に始まったイングランドにおける地域の区分け用語で、王室の権限に制限されない独立性の高い土地のことなんだそうです。つまり、地方領主の力が強かったということみたいです。とやかく言われずに自由に商売をさせてほしいみたいな(笑)。ただ現在は制度としてはほぼ無効。ただし・・・なんと。

ロンドンのテンプル地区の一部は、まだリバティみたいですよ ^^ こちらのミドル・テンプルの公式ページにもそう書いてあります。ただし現在はロンドン市議会との協働の中で、自治できる領域も限られているようですが。

オーバーグラウンドの新しい名前、皆さんはすぐに覚えられそうですか? ロンドンが持つ多様な歴史に想いを馳せれば、自然に覚えることができそうですね。

Share.

About Author

アバター画像

岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス。2014年にイギリス情報ウェブマガジン「あぶそる~とロンドン」を創設。食をはじめ英国の文化について各種媒体に寄稿中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。カルチャー講座の講師、ラジオ・テレビ出演なども。英国の外食文化について造詣が深く、企業アドバイザーも請け負う。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

ウェブサイト

Leave A Reply

CAPTCHA