デンマークの民主主義が生まれる場所

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デンマークの最南に位置する島Bornholmで、毎年夏に行われる大きなイベントがある。そこに相棒が仕事で関わったので、その仕上がりのチェックに一緒に行かないか?と誘われた。

そのイベントについて、調べてみると【みんなで民主主義を考える】イベント。政治家、政府省庁の代表者、非政治組織、産業界の代表者等に直接会って話を聴き、質問して討論する場所だということで、デンマーク中から、人々が集まる夏の大イベントだと言うこと。デンマーク語はわからないから、行っても全然わからないだろうし…、と思ったのだけれど スケッチブックを持って人間ウォッチングを楽しめばよいだろうし、とにかくデンマークとは言え、【南の島】というキーワードに私は惹かれてしまい、ついていくことにしたのだ。

地図で見ると、その島はポーランドとデンマークの間に位置する感じ。
飛行機が飛び上がってコーヒーを貰って数口飲んだと思ったらすぐに降下、30分間の飛行であっという間に着いてしまった。

ホテルの前にツーリストインフォメーションがあったので、行ってみると
この島のアーティスト達の作品が展示販売されていた。
その中で目に留まった二つの陶器を早速お土産に購入した。どうやらガラスや陶器を扱うアーティストが多く暮らす島のようで、私の氣分はこれでちょっとアップした。

島の反対側に、フェスティバルをやっている村、Allingeがある。そこまでバスで行くことにしたのだけれど、バスは満員で、乗っている人は皆同じ目的を持っているようだった。森を抜け、海辺を走り、島を横断してバスが到着した場所は、海沿いにある小さな町。バスを降りてみんなが歩く方向へ私達も歩いていくと、まずバナーが目に入ってきた。

バナーをくぐるとフェスティバル会場の始まり始まり。
大きな会場で政治討論会が行われているのだと思っていたので、ここで私の持っていたイメージが変わってきた。
ヨットハーバーや、その先の海辺に幾つものブースがあり、中で話し合いをしているのが見える。TV番組で報道されていたポリティカルディベートが行われている大きな会場もあったけれど、木陰の中で小さなテントを張ってのこじんまりした会場が多い。
興味深いトピックについて話しているのだろう、沢山の人達で溢れかえっているところがいくつもあった。
ステージを造って、その上でしっかりとディベートをしていたり、ヨットハーバーに停めてある帆船の中で、お茶を飲みながら顔を突き合わせてお喋りをしているような雰囲気のところもある。

話し合う問題は、デンマークの国政についてや世界情勢、環境、教育、子供の生活、動物保護、暗号通貨、未来の食事等、大きな問題から身近な問題、未来の予想、まで様々だそう。

このイベントの名前は直訳をすると【人々の集会】。
政治家や代表者と直接会って問題提議をしてとことん話し合って、解決策を探し、見つけ、そしてそれぞれが行動に起こしていく、民主主義の原点。

政治問題を語るとなると、壇上に上がって、真面目に真剣に、ちょっと怖い顔もして討論する、という図式が頭に浮かんでしまう。事実ここにくる前、私はそんな勝手な思い込みで、【政治集会イベント】のイメージが出来ていたけれど、全然想像とは違っていた。

フードマーケットもある。魚介専門のしっかりとしたポップアップレストランやイタリアン、ローストビーフなどの肉がたっぷりのったオープンサンドレストラン、タイ、SUSHI、お馴染みのデンマークの国民食であるホットドックやフィッシュ&チップス(英国風ではありませんが)など、午後になると、こちらの方も人で溢れていた。

のんびりとした海風の漂う、そして美味しい香りが流れてくる雰囲気の中で政治経済をみんなで真剣に語り合う。
国政選挙の投票率が毎回80%を超えるというデンマーク、さすがです!

デンマーク人の社会に対しての意識の高さと行動力、これが先を行く北欧の民主主義の形なのか、と納得してしまった。
デンマーク中から、毎年このイベントを楽しみにしながら、人々が集まってくるらしい。
行く前には、その引力はなんだろう?と、理解できなかったけれど、現場に行って感じ取ることができた。
興味深い、面白い、美味しい、氣持ちいい、そして何はともあれ楽しい、ヒュッゲである!
これが、揃った政治イベントだったのだ。

物事全てにおいてだけれど、特に今回実感したこと、それは言葉がわからないから、関係ないから、興味がないから、なんてことをボヤいていないで、とにかく現場に出向いて、それを体験することが何よりも大切なのだ、ということ。
現場の空気感を肌で感じる、ということがいかに大事か、
アートや音楽以外、それもポリティカルイベントで、久しぶりに受けた大きな感動と衝撃だった。

連れて行ってくれた相棒、それとデンマークに再度感謝!

【きょうのカフェ】
Kaffe Take Off
Bornholm air port

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東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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