Caravel カラヴェル
リージェンツ運河の美しさは、特に夏に際立ってきます。
ロンドン北側を、東西にゆったり流れるリージェンツ運河。両岸を緑の低木、人で埋め尽くされたカフェやバーが彩り、どこまでもどこまでも続いていく。ロンドンならではの夏の風景。とても爽やかで、決して飽きない散歩道の一つなのであります^^
運河沿いにはいくつかの魅惑的な飲食店がありますが、2022年春に登場しているCaravelは、運河沿いというよりも、運河に浮かぶシックなボート・レストラン♡ 橋の上にあるゲートを潜って、そっと敷地内に降りていきます。(ゲート横にある呼び鈴を鳴らしてね)
小さなボートに見えますが、中は思ったよりも広く、テーブルも2列に並べられる余裕ある横幅。そのダイニングの一番奥、船首のキャビンにキッチンあり。ベテラン・シェフが美しい料理を次々と生み出している場所です。
カラヴェルが飲食をテーマにしたエンターテインメント・ボートだと思ったら大間違い。オーナーはロンドンの食業界における重鎮カップルを両親とするサラブレッド兄弟で、彼らが子どもの頃から味わってきたとびきり美味で飽きのこないモダン・ヨーロピアン料理を提供してくれるのです。
イタリアンとフレンチをモダンに融合させた料理は全てが栄養豊かで美しく、そして美味しい。シェフのセンスが光っています。
例えばキャラメライズしたリンゴとクルミ、山羊チーズのサラダ、あるいはトロペア・オニオンとソラマメ、ブラータ・チーズのサラダなど。心も身体も喜ぶ、農場直送の味。
メインの鴨肉、そして白身魚も地中海風で野菜たっぷり。鴨肉も魚も火入れが完璧でバランスも良好。お腹いっぱいなのに、ヘーゼルナッツとチョコのタルト、ブラッドオレンジ添えは取り合いになるほどの美味しさでした^^
共同オーナーの名は、フィン&ローカンのスピテリ兄弟。父のジョン・スピテリさんは、ロンドンにおける食業界の発展に大きく寄与された立役者。
80年代を通してソーホー・ブラッスリー、レスカルゴ、ル・カプリスなど名だたるレストランで経験を詰んだ後、ファーガス&マーゴット・ヘンダーソン夫妻と共に今ではその名なしではロンドンの食シーンを語れないほど有名になったソーホーのフレンチ・ハウス、スミスフィールドのセント・ジョンを立ち上げた伝説の人物なのです。その他にもベントレーズ、セント・パンクラスのシャンパン・バー、最近ではクラーケンウェルのセッションズ・アーツ・クラブを手がけたことで知られています。一方、母のメラニー・アーノルドさんは、セント・ジョンから枝分かれした大人気カフェ・レストラン、ロシェル・カンティーンの共同創設者。
というわけでフィンとローカンのスピテリ兄弟は、業界の申し子のような二人。彼らもクオ・ヴァディス、オールドロイド、69 コールブルック・ロウなど、名のあるレストランやバーを経験した後、満を辞してこのボート・レストラン・プロジェクトに乗り出したのですね。
実はこのレストラン「Caravel」は、ロンドンでも有名な運河沿い撮影スタジオ「Holborn Studios」に併設されています。カラヴェルの隣には、バー専用のボート「Bruno’s」もあり、陸にはトイレを貸してくれるバー・レストラン「Studio Kitchen」があります。
この3つのお店は、ホルボーン・スタジオとのコラボで運営されているようですね。ホルボーン・スタジオは通称「写真のアビーロード・スタジオ」と呼ばれるほど、ロンドンの写真業界と切っても切り離せない長い歴史を誇ります。創業は1979年ですが、 1980年代後半に現在の場所に移ってきたようです。そういえばカラヴェルのオープン当初、メディア人の注目が大きかったのは、もしかするとオーナー兄弟の出自だけでなく、こういった背景もあったのかも。
ロケーション、味、雰囲気の全てが素晴らしいのですが、一つだけ不満があるとしたらせっかくのボート・レストランなのに食事をしながら窓の外を眺められる造りではないことでしょうか。船底をもうちょい上げないといけないようです^^; 将来的に、そんな構造になるといいな♪
さぁ、今年のロンドンの夏は少し涼しめですが^^; 晴れた暖かい日に、ぜひ訪れてみてほしい場所です♪