St John Smithfield セント・ジョン スミスフィールド店
ロンドンだけでなく、英国のレストラン・シーンを語るにあたって最も重要な店の一つがここ、クラーケンウェルにあるセント・ジョンです。
オープンは1994年秋。20年以上に渡って堅調な人気を保持してきており、2017年ワールド・ベスト・レストランでは第91位。ベスト100の中に英国勢が5軒しか入っていないことを考えると・・これはほとんど奇跡に近いランキングかもしれません。他の4軒は、実力派のLedbury、ヘストンのDinner、 若手のClove Club、Lylesといった面々ですから、セント・ジョンのカジュアルさを考えると、このランキングにはやはり「モダン・ブリティッシュ」というジャンルの確立に大きく貢献した立役者でオーナー・シェフのファーガス・ヘンダーソン氏への敬意が感じられてなりません。
スミスフィールド肉市場のすぐ近くという場所柄、そしてかつての肉のスモークハウスを改築したダイニング・スペースという性質上、セント・ジョンはずっと、肉料理を得意としてきました。ファーガスさんは建築の勉強をしてシェフになった変わり種ですが、その哲学は動物の鼻先から尻尾まで全てを使うという、今なら当たり前に思われている食材への姿勢にあります。その哲学の下に生まれた骨髄&パセリのサラダは、その過激なプレゼンテーションで90年代食シーンの話題をかっさらい、セント・ジョンの名を不滅にしました。いろいろなメディアで取り上げられているので、皆さんもご存知ですよね ^^
仕入れた食材によって決まる日替わりメニューなので、ランチなら当日11時、ディナーなら17時までは発表されないようです。好き嫌いが多い方は当日の運を天にまかせるしかないようですが、いつも食べられる定番品としては骨髄&パセリのサラダやウェルシュ・レアビット、デザートならエクルス・ケーキ+ランカシャー・チーズなどがありますので覚えておくといいかもしれません。
セント・ジョンの料理を一言で表現すると「シンプル&ボールド」でしょうか。それは素材本来の味を上手に引き出したメインに相性のいい付け合わせをポンポンと付けていただく飾り気のない豪快料理です。だから最近のトレンディなレストランで見られるような、小洒落た盛りつけは期待できませんので、悪しからず。
そして大きな声で強調したいのは、「デザートが絶品!」ということ ^^ セント・ジョンは元々ベーカリーにも力を入れている元祖アルチザン・ベーカリーですが、料理でもデザートでもオーブンで焼くものに関してはハズレがないと感じています。とくに個人的に目がないのは、まるで餡子のようにカレント餡がぎっしりつまった自家製エクルス・ケーキに上質ランカシャー・チーズを添えていただく一品。これをデザートに食べるなんて正気の沙汰ではないと思われる日本人の皆さんもいらっしゃると思うのですが ^^; こういう組み合わせに目がない私としては、ブランチに2皿くらいペロリと食べたい大好きなメニューの一つです。
手前のバー・スペースは気軽にいつでも座れますし、美味しそうなパンもカウンターの上でにこやかに出迎えてくれます。レストランのメイン料理は20ポンド弱と決して安い店ではないのですが、英国料理の真髄を見られるという意味では、肉好きの日本からのお客さんを連れていくにはいいオプションかと。ただし豪快すぎて肉料理は臭みが抜けていないこともあるので、繊細な料理がお好きな方には正直、向いていないとはっきり書いておきますね〜w 肉をがっつり食べたい方向き。