
今回はキク科ゴボウ属「ゴボウ(牛蒡)」の名で知られているハーブの紹介です。
英語名:Burdock 学名:Arctium lappa
え? ゴボウってハーブなの?と驚かれる方も多いかもしれません。日本人にとっては惣菜の主役級というイメージが大きいですものね。
ゴボウは中国から伝来したハーブの一種で、日本でもかなり古くからその存在が確認されています。

<どんなハーブ?>
英国ではバードックと呼ばれるこのハーブ。日本では根を「食用」しますが、欧米では根を「薬用」します。日本での薬用利用は、成熟したバードックの果実を採取し、種子を取り出し日干しされた「牛蒡子」が生薬として使用されます。
学名のArctium lappaの Arctium は、ギリシャ語の「熊(arktōs)」に由来しています。
おそらくそのその果実が釣状になった荒々しいクマの毛皮に似ている、あるいは根に細毛が多く、クマの毛皮のように見えるから名付けられたのではないか?と言われています。
種小名ラッパ(lappa)の固有名詞は、「掴む」を意味する語に由来し、トゲや、粗くてトゲのある果実の包皮等を意味するそうです。

<2種のバードック>
英国では2種のバードックを見かけることができます。
一つはArctium lappaの「Greater Burdock」あるいは「Common Burdock」と呼ばれるもの。時に3メートルまで高く伸びます。

Arctium lappa 「Greater Burdock」背高のっぽですね。
もう一つはArctium minus の「Lesser Burdock」と呼ばれる種。高さは約1.5メートルで、見た目はもう一つの種に非常に似ていますが、茎を折るとGreater Burdockは芯が詰まっているのに対し、Lesser Burdockは空洞です。
また花のつき方も特徴があり、Greater Burdockは花茎が長いのに対し、Lesser Burdockは花茎が短いかあるいは花茎が無い状態で花がつきます。

Arctium minus「Lesser Burdock」
Lesser Burdockも高く成長しますが、私の近所のものは1メートルからそれよりもやや高くなる子たちが多いです。どちらのバードックも2年草ですので、2年目に花が咲きます。
両者ともに薬用にできますが、主に使われるのはArctium lappa「Greater Burdock」となります。「根」の採取は花が咲く前の1年目の秋から春にかけて行われます。葉も使うことができます。葉は夏に採取されます。
2年草ですので、種子を作った後の地上部は枯死ますが、地中の根が残ることで再び地上部が形成されることも多く(また溢れ種からの発芽もあり)、バードックをひとつ見つけると周りにもいくつか見つけることができ、また何年も同じ場所に見かけることがあります。

大きなバードックの葉。小さなお子さんであればかくれんぼできそうですね。
中には花畑ならぬバードック畑のように沢山のバードックが自生している場所もあります。道路脇や公園、駐車場の横の空き地、牧草地、ウッドランド、草原など基本どんな場所でも見つけられますが、多くのバードックは大きく成長する前にカウンシルの除草の対象にされてしまうことも多いハーブでもあります。
<どんな効果があるの?>
主な作用に体質改善・浄血・解毒・利尿作用があげられます。昔から「血液の浄化」のハーブとして知られています。「血の浄化作用」とは、薬草医学の世界ではるか昔から使われている「作用」の一つです。通常、湿疹や乾癬、ニキビ等の皮膚トラブルに活躍してくれます。
現在でもバードックの根を使った煎剤やチンキ剤は、同じくハーブの血液浄化剤として定評のある「レッドクローバー/Red clover」や肝機能の浄化作用として定評のある「タンポポの根/Dandelione root 」とブレンドされて使われることも多いです。

Burdock and Red clover:ハーブの血液浄化剤と言われるバードック(左)とレッドクローバー(右:ピンク色の花をつけている)が隣同士で自生
その他にも「消化促進剤」としても使われ、消化不良、便秘、鼓腸等にも利用されます。
ダンデライオン&バードック Dandelione& Burdock と耳にすると、スーパーなどで売っている同名のソフトドリンクを思い浮かべる方もいらっしゃいますが、効能を期待したい方はソフトドリンクではなくハーブショップで売られている「根」をお使いください。
根の煎剤は「ゴボウ」感があるお味で、甘味と苦味があり、中には少し苦手だなぁと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ネトルやカモミールの浸剤などと一緒にブレンドして飲むと飲みやすくなりますよ!
一方、バードックの葉は昔ほど使用されていませんが、若い葉はサラダにして食用されたり、また葉を蒸して柔らかくしてから温湿布薬として「関節炎」や「打ち身」などの患部に使用することもあります。また葉も内服用のハーブとして利用するハーバリストもいらっしゃいます。
皆さんも是非バードックを散歩道で見つけてみてくださいね。
*参考文献:生薬単: 語源から覚える植物学・生薬学名単語集 : NTS
実際にご自身でも使ってみたいと思われるか方は、拙著もご覧になってみてくださいね。
『メディカルハーブハンドブック』(説話社)
https://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=50。

Amazonページ:https://bit.ly/4ghc6AK