循環を助けてくれるトニック・ハーブ🌱ホーソーンの巻

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今回ご紹介するハーブは、ちょうど今の季節、赤い実がなり始めている「ホーソーン / Hawthorn」です。濃い緑色の葉と、ルビーのような魅力的な赤の果実のコントラストが目を惹きます。

ロンドンの街中でも植えられているところが多いハーブの一つ。5月に小さな5つの花弁をつける白い花を咲かせることから、「May tree 5月の木」や「May blossom 5月の花」とも呼ばれます。

Hawthorn berry

Hawthorn flowers

<伝説など>

春の到来を祝う5月祭 (May Day)にメイポール・ダンスを踊る伝統がありますが、その中心となる木「May Pole 」にホーソーンの木が使われていたほか、ハーブの花輪を飾られることも。「まさに5月」のハーブの代表の一つとも言えるでしょう。開花時期には、街のあちこちで伝統のダンス「Morris dance」を見ることができます。

ホーソーンといえば、十字架でイエスの頭にかぶせられた「茨の冠」に使われた植物と語り継がれていますよね。

thornes :鋭い棘がありますのでさわる時は気をつけてくださいね!

樹齢はなんと400年とも言われています。

公園や空き地などはもちろん、垣根などにも非常に良く使われています。薬草としても何百年以上も愛用されてきているんですよ。

heade :垣根に使われているホーソーン、農地でも良く見かける風景ですね。

<ホーソーンの種類>

ホーソーン HAWTHORN
バラ科サンザシ属

交雑しやすい植物であり、世界中でもかなり多くの種類があると言われています。日本ではサンザシ / 山査子Crataegus cuneata)の種が多く見られます。

ここイギリスでは
Crataegus monogyna
Crataegus laevigataMidland hawthornと呼ばれる種)
が代表的な種(園芸種を除いて)となります。

日本では生薬にも使われていますね。

<ハーブとしての使用部位>

ホーソーンは花と葉、そして果実が薬草として使用されます。

開花時に花と葉を、秋に熟した果実を収穫しますが、霜や雪が降る季節まで待ってから収穫するハーバリストもいます。

また若い葉(開花前)や花/蕾もサラダなどに混ぜて食べることができます。果実はシロップにしたり、ジャムにして使われる方もいらっしゃいます。

ホーソーンのチンキ(ハーブ液)

<どんな効果があるの?>

「心臓と血流のトニック・ハーブ」として知られています。

強心・血管拡張・冠状動脈拡張・抗酸化・ 血流促進・降圧・抗不整脈・鎮静・穏かな利尿・鎮痙・収斂作用などがあると言われ、循環器系への症状、高血圧&低血圧などの血圧の調整、また心臓機能低下、頻脈動悸息切れ、冠状動脈の末梢血管 の血流改善等に利用されます。

また、花と葉は特に「心のケア」として、不安ADHDなど落ち着きのなさや活発すぎる精神の緩和、不眠、不安からの不整脈にも利用されることがあります。

実だけを使う方もいらっしゃいますが、私自身は花、葉、そして実を一緒に使うことが多いです。ただし強心配糖体(ジゴキシン製剤) との併用には注意が必要となりますので、医師にかかっている方は気をつけましょう。

実際にご自身でも使ってみたいと思われるか方は、拙著もご覧になってみてくださいね。

『メディカルハーブハンドブック』(説話社)
https://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=50

Amazonページ:https://bit.ly/4ghc6AK

さて効能からは離れますが、個人的に興味があるホーソーンの細かな種類について調べてみました。

<2種のホーソーンの違いって?>

イギリスに自生しているホーソーンには、前述したように2種があります。

お恥ずかしながら私は長い間この2種の違いをしっかりと把握していませんでした。しかしある時、「あれ?葉の形が違う?」と気がついてから、改めて形状について気をつけて見るようになりました。

お住まいの地区によっては一種類しか見られないかもしれませんが、2種の見分けがついたらぜひ観察を楽しんでくださいませ。ただし交雑しやすい種なので、でここに載せた写真も一部は交雑している可能性もあります。

Crataegus monogyna(Common hawthorn)

ほとんどの土壌で育つ種で、15メートルの高さまで成長する木もあります。

葉:歯のある裂片で構成されていて、3~5ある裂片は、葉の中間まで切れ込んでいます。大きさは6センチほど。葉先の近くにも歯があります。

Crataegus monogynaの葉と果実。葉に深い切れ込みが入っていますね。

花:5枚の白い花びらをつけ、房のように集まった形で咲き誇り、非常に強い香りを持っています。ときにピンクがかった色合いのものもあります。

「春、花を家に持ち込むと縁起が悪い」という言い伝えがありますが、もしかするとこの特徴的な「香り」が嫌がられたのかも?  私もチンキ(ハーブ液)を作る際に持ち込んだことありますが、「換気をしたくなるなぁ」と感じるなかなかの香りでした。

実:秋に落葉する前に黄色くなります。果実の中にできる種は一つ。

Hawthorn Flowers 2 :Crataegus monogyna の花  10〜18個の花房になります。

緑と赤のコントラストが美しいですね

Crataegus laevigata(Midland hawthorn

ミッドランドホーソーンと呼ばれるこの種は、イングランド中南部で最も多く見られるそうです。粘土質土壌の古木林、日陰の古い林、生け垣などで最もよく育つ種。

葉:3裂した葉で、裂け方が浅い。

花:クリーム色からピンク色の花を咲かせます。ミッドランドホーソーンはCrataegus monogynaよりも若干早く開花する傾向があり、香りはそこまで甘く(強く)ありません。

実:果実の中には2〜3個の種子があります。種の数からも違いがわかりますね。

Midland hawthorn flowers

Midland Hawthorn

皆様のお住まいの近くにあるホーソーンはどちらの種になりますか? 美しい実がなっているこの季節に見分けも楽しんでみてはいかがでしょうか?

<参考>
https://www.woodlandtrust.org.uk

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About Author

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リエコ・大島・バークレー。英国サリー州在住。メディカルハーバリスト、アロマセラピスト、リフレクソロジストとしてロンドンのセラピールーム及び癌ケアセンターにてのセラピスト活動を行う。メディカルハーバリストとして25年以上の臨床経験を持ち、長年日本での啓蒙活動に携わる。ハーブやアロマのオンライン講座、商品開発コンサル活動の他、時々イングリッシュワイン応援&執筆活動も行う。ゴルゴ13 をこよなく愛する飛行機オタクでもある。 著書に『メディカルハーブハンドブック』(説話社)『ハーブの薬箱』(文化出発局)。フレグランスジャーナル社にて2023年まで『ゴルゴ13とハーブカード』連載。 インスタグラム:ハーブ&アロマ関連 @herbalhealinguk  航空機関連 @rieko.747  ワイン関連 @winevineyard 

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