Tendril テンドリル
もともとたくさんお肉を食べるタイプではないのですが、歳を重ねれば重ねるほど、好みがはっきりとしてきて、最近はお肉のない世界もOKの境地に移行しつつあります。(もちろんまだまだお肉も美味しくいただくのですが!)
オックスフォード・サーカスにも近いメイフェアの一画に、2023年6月、「A (Mostly) Vegan Kitchen & Bar」(ほぼヴィーガン)を標語に「Tendril」がオープンしました。もともと2019年に立ち上がっているヴィーガン・ブランドです。2020年にSohoでポップ・アップ営業を始め、パンデミックの波に洗われつつ、クラウドファンディングの成功を経て! 満を持しての路面店出発。この6月で1周年ですね。おめでとうございます!
「プラント・ベース(植物由来)」を謳うお店が年々増えていく中で、バーガーやピザではない選択肢ももっと増えてほしいと思っていたので、そう言う意味ではとても嬉しく、有難いレストランでもあります。
しかもこのテンドリル、あのミシュラン三つ星のファット・ダックや、セレブ・シェフ、ヌノ・メンデスさんのチルターン・ファイヤーハウスなどイギリスにおけるトップ・レストランを経験しているシェフ、リシム・サチデヴァさんが立ち上げたお店なのです。さらに嬉しいのは、その経歴にもかかわらずとてもリーズナブルなこと。
食材の使い方をしっかりと研究した本物のヴィーガン店というわけですね。これは楽しみ♡
テンドリルに私が最も共鳴するのは、フェイクミートに頼らない姿勢です。
私は野菜が好きというだけでアンチ・ミート派ではないので、お肉に似せて開発された食品に、実はあまり興味がありません。ヴィーガン・ミートパテのようなものです。それでも世界は健康のために完全にお肉から離脱したいと思っている肉食の人もいて、肉の味を思い出させてくれるフェイクミート市場は、今や大人気。
しかしテンドリルでいただけるのは、丁寧に育てられた新鮮な植物や野生の食材、キノコなどを使ったピュアなお料理たち。食材本来のおいしさを楽しみます。お肉に似せようなんて考えもしない、凛とした植物の矜持がここに。
メニューには、セット・メニューとアラカルトの両方があります。セット・メニューは1人分からも注文可能。そこでこの日は、2名で両方を楽しむことにしてみました。
ランチ時間にあった「Discovery Menu」は一人35ポンド。キノコのピリ辛グリル、タヒーニ入り白豆のディップ、クームスヘッドのサワードゥ・ブレッドの3種を前菜に、主菜はパープル・ポテトの「チャイナタウン」風またはベイクしたブリー・チーズ、そしてカリフラワーのマサマン風グリル+スクアッシュのサラダという献立。
セット・メニューのデザートは「テンドリル・ティラミス」。ティラミス風ヴィーガン・クリーム+フルーツ&クランブル。繊細で満足度の高い一品です。2名で1皿を分けたのですが、ちゃんと2皿盛りにしてくださいました。素敵な心遣いですね♡
テンドリルでは食材を大切に利用・工夫することで、廃棄ゼロも目指しています。例えばカリフラワーの茎はキムチに、ピクルスの汁はバーで使うカクテルに入れたり。発酵やピクルスなどのテクニックは英国でももう当たり前。全てを手作りし、ストック作りや保存食に利用することで、廃棄ゼロが可能だと誰もが知っています。ゲーム感覚で取り組みできるとむしろ楽しそうです^^ インドにルーツを持つシェフのリシムさんが目指す哲学も、そこに大きく依拠しているようです。
シェフの哲学が直に反映されるのは、生産者選びもあります! レストラン運営で生産者の質は、とても大切です。リシムさんは南ロンドンにある人気ビストロ、The Dailyの立ち上げを手伝った際、オーナーのポジティブ思考に強い影響を受けたのだとか。生産者との関わり方もそこで学んだことが多かったのかもしれません。
テンドリルでも農産物やワインの仕入れ先は、持続可能かつ誠実な方法で栽培・生産・取引している事業者のみ。「素晴らしい人々が、美しい場所で作った、思い出に残るもの」をレストランに取り入れ、循環型の美しい経済を形作っていく。私たち消費者もそんな循環の中にいると考えると、気持ちよく食事ができます。
インテリアは「ヴィーガン・ビストロ」風。カジュアルだけれど、ファイン・ダイニングを志向しているようにも見えます。店名のTendrilには、蔓草などの「ツル」という意味があります。
豪快なバーベキュー続きで身体が重くなっちゃったな〜というとき、ぜひぜひ立ち寄ってみてください♪