工事の終わりは新しい生活の始まり

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7. 引き渡し

工事が無事に終了し、いよいよクライアントへの引き渡しです。 とはいえ、工事期間中、仮住まいに住んでいたクライアントでも住める状態になったら入居しに戻ることがほとんどで、その時点ではまだ内装は最終仕上げ真っ最中であることが多いのですが・・・

イギリスでは工事が終了しマイナーな最終修繕(ペイントが剥がれてる、電灯スイッチ板に仕様と違うものが設置されている、など)を行うことをsnaggingと言い、その項目をsnagging listと言います。 時として三桁に上るそのリストは細かいものばかりでも、一カ所の修繕が終了するのに3人の異なるtradesman(電気工、塗装職人、大工など)が必要になることもあり、思いの外長くかかるためイライラする時期です。 何事も97 – 98%完成しているものを100%にするにはディテールへのこだわりと根気が必要なのですね。

また、 クライアントが末永く完成した家に大事に住んで頂けるようにデザイナーとして納入したFF&E (Furniture, Furnishings & Equipment)に関する全ての書類(取り扱い説明書・保証書・スペアパーツリスト・メーカー連絡先など)を揃えます。

プロジェクトの終了はクライアントにとって新しい家での新しい生活の始まり、私たちにとってはクライアントとの新しい関係の始まりです。 私たちが目指しているのは工事の終了直後に最も美しい家ではなく、住めば住むほど年輪を重ねクライアントと共に歴史を刻み味が出る家です。 プロジェクトが終わっても家のことなら何でもいろいろ相談して頂ける関係を目指しています。

以上、工事の規模によりますが、ご相談頂いてからスムーズに進んでも1年近く、長いと2年になることも多いのがイギリスの建築プロジェクトです。 非常に(特にビルダーとの)トラブルが多い業界ですが、初回で言うところの「柔道における型」に沿って、クライアントーデザイナー間で信頼関係を築き上げ、一ステージずつ確実に丁寧に進めれば成功率の高い’process driven’(プロセスが率いる)な性質のものです。

長らくお付き合い頂いていた、私の自宅キッチンですがこちらでビフォー写真をご紹介したキッチンは家の裏側を増築してこんな風に生まれ変わりました。

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今後、建築工事をされる際にはぜひ参考にして頂けると幸いです。 ご質問などあれば、どしどしお寄せください。

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About Author

建築インテリアデザイン事務所 Yoko Kloeden Design 経営。 大学卒業後、総合商社や電機メーカーで海外を飛び回るバリキャリ生活を10年した後、夫婦でロンドンに移住、在英8年。 長い海外出張生活で経験した個性のかけらもないアパートやホテル、味気ない空港ラウンジに、空間がいかに人間の心に影響を与えているかに気づく。ロンドン到着後、猫も杓子も家の改装をする文化に衝撃を受け、建築インテリアデザインを学校で学び直す。 ロンドン内のデザイン事務所で修業した後、独立。現在は、南西ロンドンのスタジオで主に個人住宅や商業施設の改装案件を手掛ける。| Instagram @yokokloedendesign | 個人ブログ:https://blog.ladolcevita.jp/

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