この人にまかせたい、食都ロンドンの親善大使!

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「イギリスの料理はまずい」という伝説を、いかに風化させるか。そして現在の食レベルの高さと既成概念とのギャップを、いかに埋めるか――。

こういった課題について、私も微力ながらその啓蒙活動の一翼を担っているわけであるが(笑)、やたらレストランやカフェを紹介する代わりに、日本でしっかり、日本の皆様に向けて美味しいイギリス料理を食べていただくことで、その課題をいとも自然な形でクリアしている奇特な方がいる。

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東中野ビスポーク、オーナーシェフの野々下レイさん♪

東京にあるガストロパブ「ビスポーク」のオーナーシェフ、野々下レイさんだ。ビスポークはイギリス好きたちのメッカであり、イギリス大使館員の皆さんが出入りしている日本の中のイギリス。さらに舌の肥えたフード・ライターをはじめとしたメディア関係者も通う、こだわりの名店である。

東中野にあるというその店に、私はまだ行ったことがない。しかし、常連さんからの話を聞くにつけ、「早く行かねば!」と、気持ちがはやる。ビスポークについては昨年4月の読売オンラインの記事に詳しいので、興味ある方はぜひそちらをお読みいただきたい。

レイさんとは、一昨年、友人を介して知り合った。そして今年は、有り難いことに彼女から「CREA Traveller」夏号のロンドン特集の取材を手伝ってもらえないかという打診を受け、二つ返事でお供することにした。

レイさんは毎年、英国食カルチャーの現在を視察するために長年住んでいたイギリスに帰ってくるのだが、今年4月は雑誌取材を兼ねての帰英。私はイギリス料理のプロであるレイさんと、フィッシュ&チップスの名店や英国的パイ・ショップ巡りをさせていただくことになり、とても幸運だったと同時に、新たな視点から定番料理を見ることができ、大変勉強になった。

レイさんにとってイギリスは、ビスポークを始めることになった原点である。

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「フィッシュ&チップス屋さんの風情が好き。彼らが作業しているのを見るのも好き。ソルト&ビネガーの香りをかぐだけで、あの頃の思い出が蘇ってくる」とレイさん。写真は東ロンドンにあるPoppie’s。レイさんのお気に入りだ。

料理に目覚めたのは、イギリスに住み始めてから。外食の選択肢が少なすぎて、自分で料理を作るようになったのだという。25年前のことだ。その頃、外で食べるときの主な選択肢はカフェ、というか、カフ。レストランに行ってもフランス料理屋などで、イギリス料理屋というのはなかった。学生だったレイさんは節約モード全開で、お手頃なフィッシュ&チップスばかり食べていたという。ときには魚なしのチップスのみw   今でもフィッシュ&チップスは大好物で、「ほっとする味」なのだそうだ。

ブリティッシュ・カフで食べられるものも、大好きだという。 例えばイングリッシュ・ブレックファストやベーコン・サンドイッチ。「ブリティッシュ・カフの味は、私にとっては郷愁の味。決してガストロパブで出されるような洗練された味ではないけれど、子どもの頃に食べた『あの味』って、ときどき食べたくなりません?」

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バラ・マーケット名物のホット・チーズ・サンドと格闘するレイさん

バラ・マーケット名物のホット・チーズ・サンドと格闘するレイさん

つまりブリティッシュ・カフのメニューは、レイさんにとって、どうしても再現したい懐かしの味なのだ。店の名前の「ビスポーク」は、ブリティッシュ・カフに由来しているという。「古いタイプのサンドイッチ屋さんに行くと、自分の好きなものを指さして挟んでもらうでしょう? ビスポーク・サンドイッチ。あれにすごく感動した。いつか私も、アレをやりたいと思ってます」

ただし、レイさんの「ビスポーク」は、必ずしもパンに好みの具材を挟んでいくことではない。例えばイギリスで買ったお気に入りのトースト・スタンド。これが意外と小ぶり。活用したくて手に入れたトースト・スタンドなのに、このサイズに合うパンが、日本にはないのだ。

「だったら作っちゃおう」

この発想で、今ではパンからベーコン、ハムまで手作りしてしまう。

「『ビスポーク』には、お客さんの嗜好に合わせるという意味も含ませています。大きな店では難しいけれど、イギリスのカフや、私の店のような単位だと、お客さんの細かい注文に応えていくことが可能なんです。これぞ昔ながらの『カフのスピリット』(笑)ですね!」

Exmouth Market角にあるThe Quality Chop Houseのデリで、巨大ソーセージ・ロールを発見。さっそく味見しちゃう探究心旺盛なレイさん

Exmouth Market角にあるThe Quality Chop Houseのデリで、巨大ソーセージ・ロールを発見。ランチ後でお腹いっぱいだけど、さっそく味見しちゃう探究心旺盛なレイさん

ちなみにレイさんお気に入りのブリティッシュ・カフは、Covent Gardenにある「Scott’s Sandwich Bar」、SOHOの「Bar Bruno」と行った古式ゆかしい店。今回、取材途中で見つけたMaryleboneの「The Ship’s Gallery」も、そのお気に入りリストに加わった。

「こういう店を見ると、自分もがんばろうと思う。一方で、今のイギリスはガストロパブも随分と増えて、普通のパブもどんどん美味しくなっている。そういった意味で、今回の取材ではルネッサンスを感じました」

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レイさんもルネッサンスの息吹を感じたというロンドンの食は、今っ・・・!!!???

私もレストラン部分を少し担当させていただきました。
CREA Traveller 2016年7月号 「熱きロンドン」、6月10日発売です!

それにしても・・・次回の一時帰国の際、ビスポークにお邪魔するのが楽しみでならない♪

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About Author

江國 まゆ

岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系広告代理店にて各種媒体の翻訳ローカライズや日本語コピーライティングを担当。日本語翻訳リライトのスペシャリスト。2009年からフリーランス。趣味の食べ歩きブログが人気となり『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)を出版。2014年にAbsolute Londonを立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。

4件のコメント

  1. しまった、この記事読むのが遅すぎました。今日日本を発ってこちらに来る友人に頼めたのに! でも彼女とは、江國編集長お勧めのガストロパブでランチをする予定です。

  2. 今週末のお楽しみ、今日発売のCREA Travellerを今ゲットしました〜(*^^*)熟読します。

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