栗林すみれ、来英直前インタビュー「わたしのジャズ」

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6月6日(水)にUKデビュー・コンサートで来英を控えたジャズ・ピアニストの栗林すみれさんに、直前インタビュー!! 最新アルバムやジャズについての思いなどを語っていただきました♪

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ピアノを始められた理由・きっかけは?

父が音楽家(琴奏者の栗林秀明さん)なので、ふつうに毎日家の中に音楽がある暮らしをしていました。音楽的には恵まれた環境だったと思います。5歳くらいのときに琴をやりたいと父親に言ったら、泣かずに続けられたらやってもいいと言われました。それがコテンパンに泣かされまして(笑)、もうやるなと言われて琴はあきらめました。ピアノは周りで習っている人が多く、ある日学校でグランドピアノを弾く機会があり、すごく胸が高鳴ったんです。その頃からずっとピアノという楽器に憧れていました。ウチでは絶対に買ってあげられないと言われて余計に憧れが強まり、小学校三年生でやっと電子ピアノを買ってもらったんです。それでちゃんと習いたいと言ったら、習わなくてもいい、好きなように弾いていなさいと言われて(笑)、そのまま先生に付かずに中学を終わろうとしていました。

幼年期に先生から習わなかったというのは、ある意味で珍しい経歴ですね。

そうなんです。ピアノはですから、私にとってはずっと遊びでしかなかったんですね。ただグランドピアノへの憧れはずっと胸に秘めていて、音楽学校に行ったらグランドピアノを毎日弾けると思って音楽高校へ行きました。高校では3年間、クラシックをみっちりと勉強しました。クラシックでプロのピアニストになる方は、たいてい3歳くらいから本格的に習われている方が多いので、私自身はプロになるという考えはその頃はなかった。それで先生もわりと自由にやらせてくれたんです。自分が好きなドビュッシーやバッハ、ラベルを思い切り弾いて、表現を磨きました。

それがどうして、ジャズの道に?

ピアノを弾いていく人生というのは、ごく自然な選択肢として私の中にありました。18歳の頃にはピアノを置いているレストランを選んでバイトをし、お休みの日に「よし!」という感じでウキウキしながらピアノを弾いたり(笑)、人前で弾くこと自体も自然なことでしたね。将来をそろそろ考えなくては・・・という時期にあるジャズ・ピアニストの方に出会って、その演奏を聞いて「このハーモニーはなんだろう?」と、一気に興味が膨らみました。もともとクラシックでも複雑なハーモニーに興味があったこともあり、ジャズの可能性に引寄せられたんです。それで音楽大学でビバップ・ジャズを4年間学びました。

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老舗ジャズ・マガジン「Jazz Life」の表紙を飾った

クラシックを学んだ後のジャズは、どうでしたか?

実際にジャズを勉強してみると、すごく難しいと感じました。まず、アプローチの仕方が全く異なります。クラシックでは、どれだけその曲を美しい音色で弾くか、いかに作曲者の意図をくんで、情景が見えるように弾き出すかなどに重点をおいていました。それがジャズでは他の演奏家と一緒に演奏することが多く、ベースが入 り、ドラムはうるさいしで、ピアノの音が全然聞こえない(笑)。その頃は、昔のレコードでピアノを聞くと調律もおかしく音程が半音ずつくらい狂っていたり、おじさんのうなり声が一緒にレコーディングされていたりして 「なんじゃこれは?」となりましたね(笑)。だから最初は、実はとっつきにくい部分はありました。クラシックとは、まったく違う世界でしたから。大学はビバップを中心に学んだので、卒業してからようやく自分が本当に好きなビル・エヴァンスやキース・ジャレット、それから最近の音楽家の曲を聴くようになってきて、どんどんジャズの面白さが分かるようになりました。そして、昔の音源のよさも分かるようになってきたんです。

ジャズ演奏の醍醐味は?

他のミュージシャンの皆さんと一緒に演奏することが多いので、そこが断然面白く、奥深い。人との関わりの中で、よい意味での人生勉強にもなっています。人生の縮図を毎日セッションで経験しているなと。ジャズはゼロから作れる音楽なので責任はありますが、他の方と一緒に創造していくことが楽しく、そこに没頭するようになっていきました。

クラシックでは、例えば「水面に水滴が一滴、ぽとんと落ちて、その波紋が広がっていくようなイメージ」など、情景を思い浮かべながら弾くという試みを頻繁にしていたのですが、 ジャズで即興している間は音に集中しているので、絵だけを浮かべているとうまくいかない。新しい音楽は、イメージからではなく、100%音に集中している状態から生み出されるのだと思います。ただ 映像に音楽を付けたりする場合は、また別のアプローチをしますが。

作曲もされています。共演者との関係性で、ご自身が創り上げた音も変わってくる?

変わってくると思います。私が書いた通りを汲み取って演奏しようとする人と、汲みとりつつも一旦それを壊して新しいものを作ろうとする人がいます。私が作った通りに風景を描いて完成させることもありますが、今、私が一緒に演奏している人達は、毎回新しい景色を見たいという人が多いので、演奏時の天気や場所、共演者、お客さんも含めてすべての要素が合わさった、その瞬間だけの演奏が生まれます。反対にその日の状況にぴったりの曲を選んで演奏するということもあります。演奏って予想通りにうまくスムーズに進んでいるよりも、アクシデントがあるほうが新しいものは生まれやすいですよね。 それを受け入れて返すと、新しい道が生まれる。突発的なものが降りて来るほうが、むしろ面白い。そこがジャズの醍醐味だと思います。

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ベーシストの金澤秀明さんと

現在、デュオで組まれているベーシストの金澤英明さんはジャズ界でも長く広く活躍されている重鎮ですね。

金澤さんとは、知人を介して知り合いました。金澤さんを学生時代のジャズ研のときから知っているというあるクラブのマスターに、3年前に紹介してもらったんです。彼と初めて演奏させていただいたとき、そのバラードの美しさに涙が出てきてしまった。なんて温かくて愛のある音なんだろう、こんな音はいまだかつて聞いたことがないと思いました。運良く金澤さんも私の演奏を気に入ってくださり、そこからデュオが始まりました。昨年は81回デュオでご一緒させていただき、トリオだと100回くらい演奏させてもらっているかな? 3日に1回のペースで演奏している(笑)。もう家族同然ですね。それで『二重奏』というアルバムが生まれました。今、金澤さんと一緒にやっていることは、今の私がしたいこと、これまでの集大成のようなところがあります。

3 月と4月に続けて2枚のアルバムを発表されました。新しいアルバムについて教えてください。

Pieces Of Color」は色とりどりの曲と、色とりどりのミュージシャン、をコンセプトにしたアルバムです。自然や風土、人間をテーマにしたものや、映画音楽のような曲をメインに、日豪のミュージシャ総勢11人で美しい世界を作り上げています。「The Story Behind」はCDを聴いてくださる皆さんに手紙を書いているようなイメージで作りました。日頃のさりげない出来事や思いを描いた穏やかな作品です。

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ご自身の音楽のルーツ、また影響をうけたアーティストは?

さきほど名前を挙げたバッハやドビュッシー、ラベルなどを聞いてきて、ジャズではビル・エヴァンスやキース・ジャレットも大好きです。日本ではジャズ・ピアニストの菊池雅章さんにすごく影響を受けました。同年代アーティストではイスラエルのジャズ・ミュージシャン、シャイ・マエストロさんが大好きです。現代的な感覚を取り入れつつ、とても説得力のある手法で自身の世界を表現しようとしています。ただ、「最も影響を受けたのは誰か?」と聞かれたら、それは父だと思います。

琴奏者、栗林秀明さんから、どのような影響を?

父の音楽は子供の頃からずっと身近にあり、いつも聞いていました。無意識に刷り込まれていると言っていいと思います。そして今聞いても、心に刺さってくるものがある。彼の音楽は、日本の古来の音を踏襲しつつ、そこに自分なりの表現・アレンジを入れていくアプローチですが、子どもの頃からそのクオリティを当たり前のものだと思って育った経験は、今思うととても貴重ですね。自分が日本人であること、その日本人の質から発せられる、凛とした音。それが私自身も自分の楽器で出したい音でもあります。理想の音、と言ってもいいです。自分の中で大事にしているものが、ふとしたとき、父がやってきたこととかぶって見えるときがあって、はっとします。

ジャズというジャンルは外国発祥のものですが、ジャズの精神は、責任の中で自由に表現していいという、奔放さにあります。素直に自分を表現することが許されるジャンル。それぞれが、それぞれに育ってきた背景を大切にしつつ、自分の表現を磨いていける音楽です。それを自分もできたらいいなと思います。父は「おれはもう引退だ」なんて言っていますけれど、個人的にはいつか父とコラボをしてみたいと思っています。一緒に演奏しなくてもいいんです。どんな形でもいいから、父と音楽でコラボしてみたい。

6月の来英コンサートへ向けて、イギリスのオーディエンスに、メーッセージをいただけますか?

音は土地で育ちます。近年は海外の音楽機関に留学する日本人も多いですが、私の音は、日本でずっと活動してきた日本生まれの音です。それが、現地のミュージシャンとどのようなコラボを奏でて、どんな音が生まれるのか、どんなふうに感じていただけるのか、今から本当に楽しみです。観客の皆さんとのコラボレーションでもありますから。 海外旅行は好きでよく行くのですが、ロンドンは初めてです。皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!

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日本国内ツアー開始直前のお忙しいなか、インタビューを受けてくださったすみれさん、ありがとうございました。6月6日(水)のUKデビュー・コンサートがとても楽しみです ^^

Sumire Kuribayashi & Friends: Yokohama Calling
栗林すみれ+金澤英明
UKデビュー・コンサート

日時:2018年6月6日(水)
会場:Hoxton Hall, 130 Hoxton Street, London N1 6SH
(最寄駅:Hoxton / Old Street)
https://www.hoxtonhall.co.uk
チケット料金:15〜18ポンド
チケット予約はこちら↓
https://www.hoxtonhall.co.uk/event/sumire-kuribayashi-friends-yokohama-calling/

★栗林すみれ ピアニスト
大学のジャズ&ポップス・コース在学中から首都圏のジャズクラブ、 地方のライブハウスやホールで年間約60本以上のライブ演奏を経験。2004年、栗林すみれトリオとしてJAZZ AUDITORIA(ジャズ・オーディトリア)にてオープニング・アクトを飾り、その後3回にわたってブルーノート東京に出演。同年、大西順子、松永貴志等をプロデュースした行方均プロデュースで「Somethin’ Cool」レーベルからデビュー。1stアルバム「TOYS 」がジャズライフ、ジャズジャパンなどに取り上げられ、2014年ディスクグランプリ・ニュースター賞受賞。2015年10月には早くも2ndアルバム「Travellin」をリリースし、好評を博す。2017年、日本ジャズ界の重鎮、金澤英明との双頭リーダー作「二重奏」をローヴィングスピリッツから発売。2018年、総勢11名参加のアンサンブル作品とピアノトリオ作品を二ヵ月に渡りリリース。「ジャズライフ」誌では同年4月に発売された3枚目のアルバム「Pieces of Color」が表紙、巻頭特集でとりあげられる。溝口肇のジャズアルバムへの参加や、NHK BSプレミアム『美の壺』でオリジナル曲が使用されるなど作曲やアレンジ方面の才能も発揮している。先人への敬意と幅広い音楽性の融合から紡ぎだされるオリジナル曲とインプロヴィゼーションは、新たな世界を切り開きながらも心地よく、多くの聴衆の心を掴んでいる。

栗林すみれ 公式サイト:
sumirekuribayashi.tumblr.com

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About Author

江國 まゆ

岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系広告代理店にて各種媒体の翻訳ローカライズや日本語コピーライティングを担当。日本語翻訳リライトのスペシャリスト。2009年からフリーランス。趣味の食べ歩きブログが人気となり『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)を出版。2014年にAbsolute Londonを立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。

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