「ライフスタイルとして羊を育てるとは?」伝統品種ブリーダーにきく

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秋が深まり、ここコッツウォルズでは街路樹の木々も色づいてきました。皆さまいかがお過ごしですか?

私たち夫婦は、田舎の家で過ごす時間が長くなってここ数年、秋になると羊を「半頭買い」しています。これは、ラム肉を1頭の半分そっくり買うという方法で、日本ではあまり無い方法ですよね。

「半頭買い」を初めて聞いた時は、本当にたまげたものです。

それは25年ほど昔イギリス人の夫と私が新婚当時のこと。義理の母に「子供達が小さい頃は、牛も羊も豚も半頭買いして冷凍庫にストックしていたのよ」と聞かされ、さすが4人の子供たちを育てた義母は豪快だなと思ったのでした。

都会では聞かないけど、田舎では「半頭買い」はいまだに良くある方法のようです。いろいろな部位が手に入り、しかも地産地消なのでお値段も市価に比べたらだいぶお得、約3分の1です。

ちなみに、鶏肉や牛肉と違い「有機」とか「放し飼い」と明記していなくとも、基本的に羊は野原で遊牧されますから、安全性とう面でもオススメです。個人的にはイギリスに住むようになり、外食でお肉を選ぶとしたら、安全面と美味しさからラムを選ぶことが多いです。

今年は小ぶりのラムで半頭が67ポンド=約1万円

さて、歴史的背景から見ても、羊はイングランドの発展に欠かせないものでした。

産業革命で大工場ができる前の時代から、家庭内工業として羊毛製品の織物が盛んでした。はじまりは、農家が田舎の野原で飼った羊の毛を集めて、毛糸から織物を生産したところからです。

そこから機械化が進み産業革命が起こり、織物輸出が大英帝国の発展につながりました。とくにコッツウォルズ地方は羊毛生産で財を成した実業家も多く、今もマナーハウスなどのお屋敷がたくさん残っています。

こちらが通常の羊

羊毛のため羊を飼うのは現代でも、イングランド、ウェールズ各地の田舎で行われてきています。うちの村でもシープ・ファーマーの農家さんが何軒もあります。羊の種類もいろいろあるのですが、なかでも、珍しい伝統品種であるジェイコブ・シープ専門のブリーダーとしてジェリーさんに今回はお話を伺いました。

ちなみに彼の農場は、村の中心にある我が家から歩いて5分ほどで、写真のラムもそんな近くの草むらで生まれ育った羊たちなんです。

とはいえ、お話を伺うと食肉としてのラムは本業ではなく、主なビジネスは伝統品種のブリーダー。つまり、イギリス各地品評会で受賞し、その純血種の羊を他のブリーダーに売ることがメインのお仕事なのだそうです。

アメリカ人のジェリーさんとイギリス人のローナさんご夫婦とはご近所同士なので、パブで挨拶したことは何度もあるものの、今回インタビューでは、なぜこのお仕事を選んだのかということから初めてじっくり伺いました。

Jacob Sheepという古代伝統品種。茶色い毛が特徴的

入賞した羊とジェリーさん。羊は大人になるに連れ、毛色が黄色くなっていきます

M:こんにちは。Jerryさんが飼っている羊は特別な羊なんですよね。

Jerry: うちの農場では伝統品種のジェイコブ・シープに特化している。英国各地で品評会がありそこで純血種としてショーに出すために羊を育てている。だから食用のラム肉としては年間14頭しか卸してない。大部分の羊は、他のブリーダーに売るんだよ。品評会で賞をとると高値になるからね。

「大切に育てた羊たちをよく食肉用に売れますね」とよく聞かれるけど、名前をつけて可愛がるのは年に選ばれた数頭だけ。残りの羊たちは野原で放し飼いだから、とくに思い入れがあるわけではなく通常の農家と変わらないよ。

ジェリーさんは現役時代は世界を飛び回るビジネスマンとして働き、引退する直前に羊を飼うと決めたそうですが、それはどうしてですか?

J: 引退し数年前に出会ったローナ(現在の奥さん)が乗馬が好きで、当初は馬を飼うために野原を借りたところ、その草のメインテナンスのために羊も飼ったらどうかと。羊が草を食べてくれるので、草刈りしなくてよいんだよ。

そこから、いろいろな出会いがあり、羊の中でも伝統品種のジェイコブ・シープを飼うようになり、2002年にメス3頭、オス1頭から始めた。たまたま勧められて初めて出展したモートン・イン・マーシュの品評会で賞をとったんだ。20年後の今では約50頭を飼うまでになり、そちらが本業になったというわけ。

ジェリーさんとローナさん

典型的な1年間を教えてください。

J: まず品評会は夏に開催されるので、なるべく大きく立派な羊を育てるために、1月の早い時期に子羊が生まれるタイミングをはかる。そこから約2ヶ月で断乳し、毎年50頭のうち6〜8頭の見込みがある羊だけ選抜し、品評会用トレーニングを始める。品評会では見た目や大きさが良いだけではなく、審査員の前で歩いたり、舞台で止まったりといった訓練をしなくちゃいけない。

この辺りの地域では大きなショーが毎年9月のモートンでの品評会。これを最後にシーズンも終わる。10月から冬にかけてはオフシーズン。だけど休んでいるわけにはいかない。来年1月に子羊たちを迎えるために秋は羊たちの結婚シーズン、冬の間、約5ヶ月の妊娠期間は、来年の準備をする。

ジェイコブ・シープのラムちゃん

会社員時代と比べて難しい点、チャレンジは何ですか?

J: 生き物相手の仕事だから、四六時中、休憩や休みがないこと。ホリデーに出かける時は人を雇って羊のトレーニングや世話を頼む。羊を飼うことは、僕たち夫婦にとってのライフスタイルなんだ。

では逆に、最もやりがいがあるなと思う瞬間はなんですか?

J: ライフスタイルということでは各地の品評会に行くと、いつも同じブリーダーたちの顔ぶれがある。ブリーダー仲間は競い合う反面、貴重な仲間でもある。互いに羊を売買いしたりビジネスもするし、食事などソーシャルなつながりもあるので、それが大きな楽しみの1つでもあるんだよ。コロナ禍で品評会がなかった去年は寂しかったね〜

この仕事の醍醐味? 家の隣に40エーカー(1ヘクタール=東京ドーム3.46個分)の土地があり、そこに羊たちがいる。自然とともに暮らすこの生活をとても気に入っているよ。

ここは典型的なイギリスの田舎の小さな村だけど、外を歩けば知っている顔に出会い、挨拶ができる。そんな小さなコミュニティーに暮らしていることが嬉しいんんだ。僕はもともとアメリカでも、顔の見える田舎の出身なのでね。

インタビューはここまでです。いかがでしたか?

同じ村に住む外国人として、日本人の私としても顔の見えるコミュニティがある村の生活、というジェリーさんのお話には同感です。

また、ここに住む動物たちを毎日のように眺めながら、贅沢な食材ではなく、季節のものをありがたく食べることの大切さを思います。遠くから運ばれてくるフードマイレージの高い食物でなく、真の産直で地元のものをいただけるのは、豊かなこと。毎日の食卓で、命に感謝していただきます。

では、また来月!

PSー【番外編】日本一時帰国中に「Como on!!ナミヘイがゆく♡ニッポンの英国」連載中のナミヘイさんとデート。次回はロンドンで会いましょう!と約束。


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About Author

ヨガセラピスト、アーユルヴェーダヘルスコーチ。がんフレンズネットワーク主宰。神奈川県逗子市の海辺育ち。2013年から英国ロンドンとコッツウォルズの田舎でのデュアルライフを実践。皆さんが「今・ここ、この季節のじぶん」に必要なセルフケアを選んで実践できるように、身体からのアプローチで習慣を変えるコーチングを得意とする。身体も心もアイデンティティも進化させるオンライン講座、メルマガやブログ記事を英国から発信中。大好きなものは、野草摘み(Foraging)、手作りスキンケア、海、オペラ。 インスタグラム:@mariko.yoga

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