迷走マイホームロード in ロンドン vol.5: 森のわが家へようこそ♪の巻

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ガザンピング」でザックリと斬られた傷はしばらく癒えなかった。

6ヶ月も待たされた挙句に、土壇場で気が変わったという理由でポイ捨て。不動産屋や売主への不信感はなかなか拭えるものではない。しばらくは新しい物件を探すことすらできなかった。

経験はないが、たぶん結婚詐欺に遭う感覚に近いだろう。

「式の日取りも決まったし、ドレスも選んだ♪」と浮かれていたのに、当日式場へ行くと新郎がいない。あろうことか、彼はその日、全く知らない女性と愛を誓っていたことを知らされる。
…そんなショッキングな裏切りだ。

しかしイングランドの不動産市場では、こんな口あんぐりの行為も「ヒトには最後まで選択の余地がある」という大義名分がまかり通るのだから、世界は本当に愛すべき矛盾に満ちている。

「また振り出しかあ…でも、もっといい物件が待っているかもよ?」
精一杯のポジティブシンキングで腰を上げ再び不動産サイトの荒波へと漕ぎ出した。

前の人には愛想を尽かされてしまったので、現マイホームの新たな買い手探しという「同時並行ミッション」も再開しなくてはいけない。

そして数週間。サイトの海を漂流してみたものの、なかなかいい船は見つからない。オンライン上の写真や謳い文句は素敵でも、内見に行くと、日当たり・アクセス・広さなど条件に合わないものばかりでがっかりする。

こういう体験が何度も続くと、だんだん気持ちが消耗してくるものだ。

物件サイトを見るたびに「あ〜あ、どうせまた時間の無駄でしょ」と嫌気がさすが、やっぱり引っ越したい。

自分をなだめつつルーティン的に物件サイトを見ていると、あのケッコン詐欺物件の近所に我が家の条件に合う3ベッドルームのフラットが現れた。

これまでノーマークだったのは、私の「上限価格」の検索フィルターが現実的すぎたから。
予算オーバーしないように除外していた物件が、高値をつけすぎ売れ残ったからか、はたまた売主の心変わりか価格が少し下げ、私の検索圏内に滑り込んできたのだ。

写真を見る限り、文句なし。

不動産屋に電話をかけると、最近値下げになったせいで問い合わせが殺到しているらしく、さっそく家族全員で内見に出かけた。

いざ現地へ向かうと、思った以上の好条件。

そこそこ年季が入っているものの、最上階で日当たり抜群、高台ゆえにロンドンの街並みが一望できるパノラマビュー。治安が良くて、学校にも仕事場にも好アクセス。そして、私たちが愛してやまない森のすぐ隣にそのフラットはあった。

キラキラと木漏れ日が差しこむ室内に入ると、留守を預かる愛嬌たっぷりの2匹の猫と、窓の外に広がる深い緑の風景が出迎えてくれた。

私たちは舞い上がってしまった。
「ここ、例の物件に匹敵する…いや、それ以上かも?」

ガザンピングで受けた深傷も、ここに来てようやく癒えそうだ。大都会ロンドンで森の隣に住めるなんて。
もしかすると、この物件に出会わせるために、あの前の物件はダメになったのかもしれない。
運命の神様、サンキュー。…そんな気持ちすら湧いてきた。

「売主はどんな状況ですか?」
チェーンは?」
時間のかかる手続きは残ってる?」と不動産営業マンを質問攻めにした後、家族会議ののち光速で購入オファーを出す

お祝いのパイント(ビール)を空けるのはまだ早すぎるけれど、フラットにはただちに「イウォーク・ビレッジ」という愛称がつけられた。

…映画「スターウォーズ」のファンでないとご存知ないと思うが、スターウォーズに出てくるイウォーク族は森の惑星で暮らす毛むくじゃらの小さな戦士たちだ。

彼らが暮らす森の村のような住居。だから「イウォーク・ビレッジ」。ニックネームをつける。それはすなわち、私たちの愛が確定したことを意味する。

その愛が届いたのか、運命の女神は微笑んだ。

同じ日に内見した別の人もオファーを出していたのだが、売主ファミリーへの手紙まで添えた熱烈アピールが功を奏したのか、売主は私たちを選んでくれた。

しかもあろうことか、さらに値下げしてくれたのだ。条件は「手続きをなるはやでお願いします」。その背景にあったのはパンデミック直後の特殊な状況だ。

リモートワークが普及した影響で、ロンドンを脱出し郊外や田舎の広い家に移住する人々が急増。売主ファミリーも地方転居を間近に控えており「チェーン(※連鎖売買)」を繋げるために一刻も早い売却を望んでいたのだ。

つまり、今住んでいる家よりも広い物件がなんとお釣りが来る価格で手に入ることになった。
(↑詳しい仕組みは第一回を参照)
「なるはや」はこちらも望むところだ。

1年にわたる物件探しがようやくハッピーエンドを迎えそう♪

…だが、この物件にもまたしっかり別のドラマが用意されていた。

手始めに、このフラットを「イウォーク・ビレッジ」と命名した当人の相方が、急にゴネ始めたのである。

※この記録は、マイホーム探しの迷走ぶりを綴ったものです。個人的な体験に基づいているため、「もっと良いやり方がある」など、様々なご意見もあるかと思いますが、そこのところはどうかご容赦ください。

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About Author

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写真家&ライター。東京で広告制作・編集と撮影の仕事を経て2003年渡英。フリーランスで活動中のアーティスト。ロンドンをベースにアーティストや作家をモデルにした絵画的なテイストを持つポートレート制作などを行う。英国をベースとしたエキシビションを開催。日常系ミニマリズム研究家。「あぶそる〜とロンドン」編集長、江國まゆ氏と共に2018年に『ロンドンでしたい100のこと(自由国民社)』(執筆&撮影)、そして2020年には『レス・イズ・モア 夢見るミニマリストでいこう。』を出版。

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