「銀河鉄道の夜」がミュージカルに! 英語パイロット版、出発進行中

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宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』がミュージカルに! 昨晩から明日までの3日間、ヴィクトリア駅至近のThe Other Palace Theatre にて上演中だ。

The Galaxy Train
2023年3月24日〜26日
https://theotherpalace.co.uk/galaxy-train/

友人から情報をもらって数週間前にチケットを購入していたのだが、早く買っておいてよかった、昨晩のこけら落としは満員御礼で立ち見も出たようだ。今日と明日の週末はマチネと夜の2公演ずつで、Q&Aなどもある。

『銀河鉄道の夜』は、死後の世界をそれはそれは美しく透明な言葉で紡ぎ出した、宮沢賢治の傑作である。数々の名作童話を残した賢治の作品の中でも比較的長い物語で、「銀河を翔ける鉄道列車」という永遠のイメージを私たちにプレゼントしてくれた。そこから、あの銀河鉄道999も生まれた。

いそいそとチケットを取った理由は、もちろん私が銀河鉄道の物語の熱烈なファンであることもあるが、あの世界観をどのようにミュージカルに仕立てているのかをどうしてもこの目で観たかったからでもある。

お祭りの夜、孤独を胸に丘に佇んでいたジョバンニ少年が、突如姿を現した銀河鉄道に乗りこみ、気づくと隣に座っている友人のカンパネルラとともに、未知の旅路に出かける銀河鉄道の夜。全く異なる境遇の二人が、それぞれの本当の幸せを求めて……。

開演前の様子。2階にもギャラリーがあるのですが、満席!!

役者さんがすごくよかった。美しい歌と響きが心に深く届く。個性あふれる力強い演技。星と魂を表す光る御玉を使った巧妙な演出。申し分のない仕上がりだが、願わくばこの銀河鉄道のテーマに合った、広々とした舞台でもっと伸びやかに駆け回ってほしかったというのが正直な感想ではある。

背景の工夫やテクノロジーを使った宇宙的な演出がもっとあると、さらに銀河鉄道らしくなるだろう。しかし現時点での予算や空間の制約もあるだろうし、今回はあえて宇宙的な演出に重きをおかず、人間関係の表現や、物語の本質にある「救済」「愛」にフォーカスを当てる演出となっているのかもしれない。何れにせよ素晴らしい感動作に仕上がっている。

帰り際、イギリス歴の長い友人がこう漏らした。「キリスト教文化の中に、こういう死後の世界みたいなテーマを持ち込むのは面白いね」と。確かに賢治の作品にはいつも宗教的なテーマがぎっしり詰まっている。仏教的な人間の業を描いたものであるとか、魂の救済をテーマにしたものだとか。銀河鉄道なんかは後者の代表的なものだけれど、賢治が投げかける透明な問いの答えは、私たち一人ひとりの中にあるのだ。

このミュージカルがいつか成長し、少し大きめの舞台で上演できるようになったら、やはり宇宙テーマを視覚演出するバージョンも作って欲しい。日本語のオノマトペの愉しさであるとか、賢治の持つ心象風景だとか。視覚的に訴えるほうが、視聴者の心に届くものがたくさんあるはずだから。

 

 

ミュージカル「銀河鉄道の夜」は、 ロンドン在住の演出家、市川洋二郎さんの原案を元に、新進気鋭の作曲家であるエデン・ トレッドウェル / Eden Tredwellさんが曲を書き下ろして共同執筆され、テアトル・ラピス / Théatre Lapisとのコラボレーションでロックダウン中、日本政府などの協賛を得て生み出された。2021年の東京でのリーディング公演を経て今回の上演へと繋がっているのだとか。エデンさん作曲の「Those Stars」は2021 年に「Best New Song Prize」も受賞している。そして会場に行って初めて、知人のファッション・デザイナー、Naoさんが衣装を担当されていることを知った。ブラボー!

本日土曜日の公演は、Theatrical Solutions を介して短時間の見逃し配信があるようなので、今週末に行けない方はぜひそちらも利用してみてくださいね!

The Galaxy Train
https://theotherpalace.co.uk/galaxy-train/

制作:
演出・脚本:Yojiro Ichikawa
作曲・作詞:Eden Tredwell
舞台監督・アレンジ: Gus Tredwell
舞台デザイン:Lorelei Cairns
衣装デザイン:Naohiro Matsuo

キャスト
Jordan Broatch
Misato Higashijima
Saori Oda
Liam Murray Scott
Juna Shai
Sinead Wall
Joey Zerpa-Falcon

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岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス。2014年にイギリス情報ウェブマガジン「あぶそる~とロンドン」を創設。食をはじめ英国の文化について各種媒体に寄稿中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。カルチャー講座の講師、ラジオ・テレビ出演なども。英国の外食文化について造詣が深く、企業アドバイザーも請け負う。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

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