日が長くなってきました。ロンドンは6時を過ぎても明るく、今月末にはついにサマータイム♪ 春が着実に訪れているなと感じる今日この頃です。
3月8日は国際女性デーでもあり、またミモザの日としても知られていますね。この季節、街のあちこちでフレッシュな黄色を見かけることが多く、気持ちをウキウキさせてくれます^^
最近は目の前の仕事をただ無心こなし、心の余裕のなかった時期にできなかったことをしてみたり、部屋の模様替えをしてみたりと、少しずつ昨年の狂想曲のような日々を取り返す作業をしています。
今日はカフェで経験した他愛もないことをネタに小文を。
私はバスを待っている時や、カフェでお茶を飲んでいる時、周囲の人々の会話に耳を傾けるのが大好き。他の人の人生模様に、興味津々なのです!
今日の午後にふと立ち寄ったカフェでも、知らぬ人たちが交わす会話に、ついつい耳を傾けてしまいました。
そこは8か月ほど前にマリルボーンに誕生している雰囲気のある独立系カフェ。ロイヤル・ファミリーにサポートされているというベイカーさんが焼く、美味しそうなケーキやパンが並んでいます。お菓子を食べるつもりなどなかったのに、目の前の四角いキャロット・ケーキに惹きつけられ、つい手を出してしまいました^^
イギリス人気質、というのがあります。物事に熱心で、いろいろなことに興味がある。だけど、表面上は気のないふりをする。心の中ではいろんな感情がうごめいているのに、クールに振る舞うクセがあるんです。
そんな典型的なイギリス人の若い男の子と、イタリア人らしき同い年くらいの男の子2名でお店を回していました。
イギリス人の彼が接客係で、客である私からはとってもクールに注文を取っていたのですが、スタッフ同士で会話しているのを聞くとかなり楽しそう。「先週末にバタシー・パワー・ステーションに初めて行ったんだ。すっごくポッシュな場所だったよ! 建築がすごいね」とかなんとか。でもその会話は、実際はもう一人の新しいスタッフへの思いやりというか、わざと話題を作ってる風だったりして。それとなく気を使っているのです。
そして私の隣にはとてもおしゃれな老夫婦が座っていました。70代くらいでしょうか。
夫はイギリス人で、妻はアメリカ人。二人とも洗練された服装をしています。
この二人が面白かった。寡黙なイギリス人紳士であるところの彼が、熱心に妻の話を聞いています。でも、会話は側から聞いていると決して楽しそうではなくて。
妻がとにかく、いろんなことに不満。夫が何を言っても、まず「ノーノー」という言葉で返してしまう。しまいには黙りがちになってしまう夫。その彼が自分のコーヒーが済んだので、「もう行こうか」とばかりに立って外に出ようとすると・・・
「ちょっと!まだ私のお茶が済んでないのに何してるのよ。このお茶を飲み終わるまで待ってよ」と妻。
はっとして席に戻ってくる夫。その後は、とにかく妻がいろんな不満をまくしたてるのですが、夫は黙って聞いている。しばらく私は自分のことに集中していたら、突然、隣から「チュっ」と、キスを交わす音が。
「ごめんなさい」と妻。それにおそらく「いや、いいんだよ」返す夫(夫の声が小さくて聞き取れなかったのですが、おそらくこう言ったはず 苦笑)。
その後は、妻が今朝あった辛かったことなどをとめどなく話し、なんとなく和やかな雰囲気になり、二人が急速に元通りになった印象でした。
老夫婦が店を出ていくとき、イギリス人の男の子が「お店を楽しんでもらえたかな」と声をかけたら、旦那さまの方が「もちろん。また戻ってくるよ。シナトラをまた聴けるならね」と。スタッフさんはその返答にご満悦でした。
コンテンポラリーな造りのお店にはずっと古いポピュラー・ミュージックがかかっていて、私がいる時にシナトラはかからなかったけれど、おそらくご夫婦だけだった時間帯にかかったのでしょう。
その空間にはイギリスとアメリカが混在し、二人が育ったカルチャーの違いもなんとなく横たわっていました。お世辞にも和やかとは言えなかった二人の様子がちっとも嫌でなかったのは、イギリス人の夫がかなり辛抱強く妻の話を聞いていたからだと思います。あるいはただ、美しい妻に、ずっと見惚れていただけなのかもしれないですが^^
男は辛抱強く、女は言いたいことを言う。でも、最後にはちゃんと「ごめんなさい」「いいんだよ」と言える関係。
そんな優しさを感じた今日の午後。ロンドンのカフェ点景だったのでした。
イースターまであとちょっとですね。