「ウロボロスの蛇」については、たぶんご存知の方も多いと思う。2頭のヘビが、互いの尻尾を飲み込もうとしている円形図だ。1頭のヘビが自分の尻尾をくわえている場合もあり、いずれにせよ「始まりも終わりもない完全なるもの」を象徴しているという。
またヘビは脱皮を繰り返し成長することから「死と再生」を意味し、ウロボロスの蛇はまさに終わりがないこと、つまり不老不死を意味することもある。不変、永続するもの。循環するもの。
ヘビが自らの尻尾をくわえ、円をかたどっているとしたら、それは「守り」の意味もあるだろう。円の中に位置することにより、安全であると思えるかもしれない。
元々、ウロボロスの概念はエジプト神話として生まれたようだ。太陽神ラーの航海を闇から守るため、円陣を組んで守護したのがメヘンと言われる蛇の神だというのだ。この形に名前を付けたのが、のちの古代ギリシャ人なのだそう。命の源である太陽の運行を、闇に妨げられない方法についての神話のようだ。ヘビは軍神でもあり、やはり守護する者として優秀なのだろう。
しかし無理に線を輪にして閉じることなく、一直線に伸びていくヘビにも勢いがある。
ヨーロッパで医療の象徴としてよく描かれている「アスクレピオスの杖」はご存知だろうか。イギリスでは医療機関のシンボルとしてしばしば目にするもので、ギリシア神話の医神アスクレピオスが持つ、ヘビが巻きついた杖のことだ。この場合、ヘビは大地が持つ治癒力、螺旋が象徴するパワーを表しているようだ。こうしたヘビの力は錬金術にも通じ、ちょっぴりオカルトの香りがする領域でもある。
しかし、和を描くウロボロスの蛇は、象徴学的に言うと、宇宙を象徴するのではないかと思う。メビウスの輪のように、永遠に続いていく何か。誰にも邪魔されない強さ。完結しているイメージ、と言えばいいだろうか。
日本ではもとより蛇信仰があり、白蛇は神様の使いであり、神そのもの。三輪山の神様だって蛇ですしね。大己貴命/大穴牟遅(おおなむち)=大物主というのだが、その名の響きと字面にヘビっぽさが^^; 「おおなむち」とは「大きな穴」という意味で、ようは「大きな穴にすむ蛇」のこと。「己」は「巳」に通じるということだ。「己」という漢字も、両端をつなげるとあら不思議、メビウスの輪のようにも見えるではないですか^^
2025年は、巳年。巳とは、己(おのれ)のこと。
というわけで、今年はウロボロスの蛇のように、調和を大切にしつつも、己を堅固にしていくイメージを持つと、思い通りの年になっていくのかもしれない。
新年あけましておめでとうございます! 旧年中はあぶそる〜とロンドンをご愛読いただき本当にありがとうございました。今年も引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2025年が皆さまにとって、素晴らしく幸多き一年となりますよう、心よりお祈りしております^^