「ノッティング・ヒル」という名が一躍脚光を浴びたのは、誰もがご存知、1999年のイギリスのロマンティック・コメディ「ノッティングヒルの恋人」(原題「Notting Hill」)。ポートベロー・ロードで旅行書専門店を営むさえない書店主(ヒュー・グラント)と、ハリウッド女優(ジュリア・ロバーツ)の恋愛ストーリーだ。そして主題歌「She」。恋のおとぎ話はこの「She」でクライマックスを迎えることとなる。また観たくなる、聴きたくなる、そんな魅力ある映画である。余談ですがこの主題歌、花王ソフィーナのCMソング(CMキャラクター:菅野美穂)として2014年放映されていたそうですよ。
映画の人気も手伝ってか地価が上昇し、セレブな街という印象もありますが、実はカリブ海や欧州諸国からイギリスへ移住して来たカリビアンなどの移民の街。ノッティング・ヒル・ゲイト駅を出て北上すると、ポートベロー・ロードに突き当たります。この通りを中心に、ロンドン最大のアンティーク・マーケット「ポートベロー・マーケット」が毎週末開催。カラフルなテラス・ハウスにファッショナブルなロンドナー。マーケットでは地中海料理がいただけ、クロスカルチャーな雰囲気も楽しめます。毎年8月の終わりには、カリブ系移民たちの祭典「ノッティング・ヒル・カーニバル」が開催。母国を忘れまいとする華やかな衣装と軽快な音楽、いろいろな文化が混ざり合っているのが「ノッティング・ヒル」なのです。
世界中からやって来た人々が住んでいる街ノッティング・ヒル。この街に移り住んで11年になる一人の女性がいました。エリザ・シューローダー監督。ユダヤ系ドイツ人家庭に育ちフランス人と結婚。趣味はお菓子作り。プレグジット後のロンドンで、夫と1歳・3歳・5歳の子供達と共に暮らしています。カップケーキ職人の短編ドキュメンタリーやテレビドラマなどを手掛けています。ドイツ人でありながら、自分の故郷とも呼ぶノッティング・ヒル。バラエティ豊かな通りを、登下校する子供たちと一緒に、そして日常の買い物で行き交う毎日です。今回その街を舞台に撮影した映画が「ノッティングヒルの洋菓子店」(原題「Love Sarah」)。本作で念願の初長編監督デビューとなりました。12/4(金)から全国順次公開中であります。
STORY
名店で修業を続けたパティシエのサラ(SARAH)と親友のイザベラ。念願の洋菓子店オープニングに向かう途中、サラが事故死してしまう。残されたものは貸店舗と請求書の山。サラの夢をあきらめきれないイザベラ、サラの娘のクラリッサ。絶縁していたサラの母、ミミ。そして20年前、ガールフレンドだったサラから逃げたミシュラン二つ星レストランのスターシェフ、マシュー。愛するサラの夢のもと集まった4人が「ラブ・サラ」(Love Sarah)をオープンさせるが、客は訪れず。絶望的な中、ラトヴィア人青年のひとことを突破口にして 「ラブ・サラ」は活気づいてゆく。そして4人の運命を大きく変えるニッポンの味「抹茶ミルクレープケーキ」とは…。ここから先はどうぞ劇場でご覧ください♡
公開に先立ちまして、11/29、旅カルチャー&お茶旅講座 主宰 木谷朋子さんによる映画「ノッティングヒルの洋菓子店」トークショーに参加してまいりました。
〈ゲスト〉
・配給宣伝会社アルバトロス・フィルム 宣伝部 北神奈津子さん
・英国菓子店 Lazy Daisy Bakery 店主 中山真由美さん
〈主宰・ナビゲーター〉木谷朋子さん(旅行ライター&エディター)
〈協力〉土屋グループ銀座ショールーム
フォートナム&メイソンのクリスマススパイス・ブラックティーとアルビオンの紅茶、英国菓子店 Lazy Daisy Bakeryさんのベリーとレモンとアーモンドのティーケーキをいただきながら、公開前に映画にまつわる秘話やゆかりの場所、ロンドンのスイーツ情報などを交えたスペシャルな時間となりました。
◆まずは “ラブ・サラ” を支える4人の登場人物全てが、英国出身の俳優であること。そして監督は、先に述べた通り舞台であるノッティング・ヒルに暮らし、お菓子作りを趣味とするエリザ・シューローダー。住み慣れた街を背景に描かれる作品、そう聞くだけでワクワクしてきますよね♪
◆映画に出てくるお菓子を全面監修しているのは、ロンドンで人気のデリ&レストラン「オットレンギ」Ottolenghiです。イスラエルとイタリアの血を引いたシェフ、ヨタム・オットレンギさんがプロデュースする人気店。ノッティング・ヒルにも店を構え、連日大人気。大人気の要因として、この街は移民の歴史と深い関わりがあること、レストランが多いというベースがあったこと、そのため食のハードルが高くなかったことなどが挙げられるのではなかろうか、とトークショーが進行していきます。スパイス、ハーブ、ナッツ、柑橘類を巧みに用いた彩り豊かな料理が並ぶエキゾチック・サラダ・メニュー。ハイクオリティーのケーキ、パン、キッシュ、マフィンなどの焼き菓子たちを、映画の中でじっくりご賞味くださいませ♡
◆4人の運命を大きく変えるであろう「抹茶ミルクレープケーキ」。ミルクレープケーキってとっても大変な過程を経て完成するケーキなんですと、Lazy Daisy Bakery 店主 中山真由美さんもうなづいておられました。私はこれから映画を鑑賞するのでドキドキの内容です!「抹茶」はイギリスで大人気です。イギリスの超人気料理番組「グレイト・ブリティッシュ・ベイク・オフ」(The Great British Bake Off)では、様々な職業を持つアマチュアのベイカー達が、10週ほどに渡り毎回テーマを与えられ優勝を競い合います。私もロンドンに住んでいた頃、「ベイク・オフ」の夜だけは夕飯をリビングに準備してソファに座り、娘と二人で楽しみに観ていました。その番組でもお題に「抹茶」が挙がったと、トークショーでナビゲーターの木谷さんから紹介がありました。劇中の「抹茶ミルクレープケーキ」に注目ですね!!
◆原題「Love Sarah」サラを愛する人が集まって、という願いが込められたタイトルだと解釈しているのですが、邦題は「ノッティングヒルの洋菓子店」。あれ? 全然違うんじゃない?と思われるかもしれません。イギリスもアメリカもタイトルは原題のまま「Love Sarah」です。しかしニッポンで「Love Sarah」だけでは映画のイメージが伝わりにくいかもしれません。映画配給宣伝会社アルバトロス・フィルム宣伝部の北神奈津子さんは「タイトルひとつで映画の内容がわかるもの」と、熱い想いと時間をかけて「ノッティングヒルの洋菓子店」という邦題を誕生させたそうです。私もこのタイトル以外考えられないと思いました。トークショーが進行するにつれて、ワクワクはますます大きくなっていきました。
◆最後にやっぱり思うのは「愛」なのかな。「死」というサラの現実が、登場人物達の選択に影響を与え、その後をどう変えていくかに注目が集まります。観客席に座り、果たして私は誰に、何に共感するのか。泣くのか、悔しくなるのか、もどかしいのか。でも「ノッティングヒルの洋菓子店」のスクリーンを前にして、笑顔で鑑賞している自分が想像できます。そしてその時の私の内なる想いは、きっと「Love Sarah」を通した自分自身なんだろうなぁと考えるのであります。
昔何度もこの足で訪れたノッティング・ヒル。いろんな思いをかけ巡らしつつどっぷり映画に身を沈めて来ようと思います。この映画はできればおひとりではなく、愛する人とご一緒に。ソロ活動が得意な私も、今回は愛する人とともにいってまいります🇬🇧
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映画「ノッティングヒルの洋菓子店」(原題「Love Sarah」)
12/4 (Fri) から ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
イギリス、ロンドンの人気デリ&レストラン「Ottolenghi」(オットレンギ)がスイーツを全面監修
★11/29 (Sun) 映画「ノッティングヒルの洋菓子店」トークショー開催(会場参加者+オンライン参加者)
旅カルチャー&お茶旅講座 主宰 木谷朋子
協力:アルバトロスフィルム・土屋グループ銀座ショールーム