ロンドンの大気汚染は深刻な問題ですが、場合によっては、屋内の空気が外気より危険なこともあるという話も耳にしています。主な対策法は、当然ながら害になるものを避けるか、最小限にとどめること。呼吸は常に必要なことなので、ヘパ・フィルターなど強力な空気清浄機の設置が理想的だと思います。経済的に、全てを一気に変えることができないため、空気清浄機の購入まで少々時間がかかりそう。ということで今号は、わたしが長年お世話になっている最もエコな空気清浄アイテム、観葉植物のお話です。
屋内の方が汚染されていることもある?
大気に混じる毒素は、排気ガスや工業廃棄物、008号でもふれた除草剤のラウンド・アップ(主要成分=グライフォセイト)、そして飛行機雲から落ちてくるナノサイズのアルミニウムなど、よく知られたものから思いもしないものまでの各種が名を連ねます。これらだけでも十分に頭の痛いとことですが、外気より屋内の空気の方が、健康の害になる場合もあるようです。一般的に使われている塗料や壁/床に使われている素材には毒性のあるものが多く、特に新築や新装で新しい建物の匂いがする家は、要注意です。これら薬品の吸引を最小限にする目的で、匂いがなくなるまでは、可能な限り窓を開けたままにしましょう。古い家の場合、通気が悪いと壁紙の裏など見えないところで、過去に起きた水漏れに起因するカビ繁殖ということもあります(例:何だか湿気ってカビ臭い家/部屋)。また、一般に浸透しているノンスティック加工のフライパンや鍋、掃除用品なども、健康の害になる薬品が使われているので、できれば避けたいところ。
(まだまだありますが、ここに全てを網羅することはできないので、関連の内容を数号分に分けて取りあげる予定です。)
植物のフィルター・パワー
部屋にグリーンや花があると、視覚的にも心地よく、生命力や癒しのエネルギーが感じられますよね。ご存知のとおり、植物は二酸化炭素を吸って酸素を排出するので、酸素の必要なわたしたちとは切って切れない関係。さらには、空気中の毒物を除去する機能も備わっているのです。1989年とかなり昔のものですが、 NASAが観葉植物の空気清浄効果を調査したレポートがあります。宇宙ステーションなど、密封された環境で大量の植物による空気清浄の可能性を探る目的もあったようです。これはAssociated Landscape Contractors of America(ALCA)という団体とのジョイント・プロジェクトで、観葉植物が屋内空気汚染(地球上)の問題解決のツールになり得るかを2年間にわたって調べたもの。この実験では、揮発性の薬品が一定の時間内にどのくらい除去されるかを植物ごとに測定。結論は「観葉植物は、経済的な屋内空気汚染の対策として大いに有効」とのことです。
この実験で測定されたのは:
ベンゼン
(ガゾリン、インク、油、塗料、プラスチック、ゴム製品、洗剤、爆薬、薬、染料などの原料)
ベンジンは目や皮膚を刺激するもので、発がん性、遺伝子への影響や白血病との関連もあるようです。
トリクロロエチレン
(ドライクリーニング剤、インク、塗料、ニス/光沢剤、接着剤などの原料 )
マウスの実験で肝臓細胞のダメージが確認されており、肝臓がんを促すものとして懸念されています。
ホルムアルデヒド
(インシュレーション基材、加工木製品、紙タオル、掃除用洗剤、絨毯、折加工の衣料などの原料 )
ホルムアルデヒドは目・鼻・喉など粘膜を刺激し、アレルギー性皮膚炎や喘息を起こすものとして知られています。長期の接触では、稀なタイプの咽頭がんを起こす可能性も疑われているようです。
これらの薬品はどれも、 何らかの形で家の中の空気に混ざっている可能性が高いものです。
実験に使われた植物のリストと効果のランキングは以下のとおり(除去率の高いもの順):
*その後も、同様の研究は各種続いているようですが、今号ではNASA1989年版の内容のみに絞っています。
実験に使われた植物は名前を見てピンとこなくても、写真を見たらどれも馴染みある植物なはず。植物によって除去力に優れるケミカルなど異なりますが、どれも有効。屋内用のヤシやバナナなど大きめの鉢に加えて、スパティフィルムやポトス、アイビーなど小さめの鉢で、形や色のバラエティをいくつか揃えてはいかが?
ローカルな話になりますが、毎週日曜にあるコロンビア・ロードのフラワー・マーケットに行けば、切り花はもちろん、上のリストに入っているものはほぼ全て見つかります。かなり混み合いますが、植物が好きなら、見てまわるだけでも楽しいひと時が過ごせるかも。
参照:
Wolberton BC, Johnson A, Bounds K. (1989). Interior Landscape Plants for Indoor Air Pollution Abatement. NASA.