年を越したのはつい先日だと感じるのですが、すでに4月…。今号では、去年後半にスキャンダルとなった牛への薬品投与問題とその背景を取り上げます。一般消費者による安全やエシカル面を懸念する声が高まり、現在でも静かにバトルは継続中です。無意識的な選択を行なっていると、自らお金を払って安全確認の実験台になっているというご時世なので、ご興味のある方はご参考までに。
農家にかかる圧力
去年11月頃から、消費者層によるArlaの乳製品と関連業者の商品ボイコット運動が継続中であることをご存じでしょうか。牛の代謝で発生するメタンガスが地球を危機に導いているとして、メタンガスを防ぐBovaerという薬品を牛に投与していることがわかり、問題が表面化しました(1,2)。この薬品投与は、世界規模で進行中の脱炭素計画の一環らしいのですが、驚くことに牛の健康はもちろん人体への影響は未確認で、現在市場に出回っているBovaer使用の乳製品やそれを含む食品を使って調査が進行中であるということも明らかとなっています。すなわち、わたしたち一般消費者が実験台。しかも、奨励金をちらつかせて農家にBovaerの使用を迫っているため、奨励金よりモラルを優先する農家が多いことを祈るばかりです。
Bovaerスキャンダルでは、Bovaerを投与していない酪農業者なども、薬品の不使用を伝えるために各種の媒体を通してメッセージを発信し、イギリス国内でBovaer不使用のファームをリストアップしたウエブサイトなども登場しています。ご興味のある方はチェックしてみてください(3,4)。
前号にも共通しますが、政府による農家潰しの動きは、わたしたちの健康や安全と切り離して見ることのできない重要なトピックとなっています。もし、中小規模の農家が潰されて廃業または財力のある大手企業に安価で吸収され続ければ、その向こうには大手企業による独占市場が待っているという図式になります。そうなれば、使用に疑問がつきまとう薬品類や、遺伝子組み替えとシンバイオによる産物を避けることはほぼ不可能になるでしょう。一個人としてできることは限られますが、希望は捨てずに一般消費者層で安全を支持する動きがさらに大きくなるよう願っています。

…ということは、わたしたちが実験台!?
消費者側も供給者側も、さらに意識的な選択を
安全面も考慮して乳製品を摂取したい人は、今のところオーガニックを選ぶことも安全の選択基準になりますが、某オーガニック乳製品のブランドがArlaの系列会社に名を連ねているため、オーガニックならどれでもいいということにはならないようです。また、Bovaer投与の乳製品が提携業者の商品に使用されいる場合、問い合わせるなどして正確な情報が得られない限り使用有無のチェックはできないので、提携業者の商品は要注意のカテゴリーに入るといえるでしょう。(関連企業リストはネット検索で簡単に入手できるはず。)
Bovaerスキャンダルは、安全未確認の薬品投与以前に大きな問題点があると思うのですが、全体像とのつながりが見えないと問題の核部分はぼやけたままになります。農家を取り巻く問題を理解するには、まず牛によるメタンガスの発生が本当に地球温暖化を進行させているか、という点も調べる必要があるでしょう。

安全やモラル重視するなら…。
メディアが操作する地球温暖化とサステイナビリティ計画
みなさんもご存知のとおり、産業廃棄物などによる二酸化炭素増加が地球温暖化の原因であることを前提に、現在各種の消費削減計画や環境問題対策への取り組みが進行中です。そのプランの数々には、不可解に思う点が多いので調べてみました。どうやら温暖化問題もコロナ同様に、大手メディアやそれを支え利益を狙う企業などが中心となって事実とは異なることを報道しているようです(5,6,7,8,9,10)。
去年は春になっても真冬並みに冷え込む日が続き、振り返ると「温暖化」どころではなかったのは明らか。もちろん、二酸化炭素が急減したわけではありません。このところ自然と暑くなる夏に「温暖化」が登場するという季節ものに移行しながら、それでは都合の悪い部分が隠せないためか、ここ数年で「温暖化」が「気候変動」へと変化していることにもお気づきでしょうか…。

心理作戦の一環?
わたしたちが実際に体験していることをもとに状況を判断すると、温暖化を取り巻く一連の事柄にはつじつまの合わないことが多いこともおわかりいただけるはず。個人的な見解では、事実と異なる温暖化を口実に、牛たちに必要のない(さらには、エシカルではないため動物愛護者からはバッシングの的になる)薬品を投与すること自体、どう見てもおかしいという結論に至っています。
2019年にケンブリッジ大学から出版されたイギリスのサステイナビリティ計画書によると、2020年から2030年の間に牛と羊の総摂取量を半分にすること、そして、2050年までにこれらを食品オプションから外して、全面的にベジタリアン食に切り替えることを目標に、現在物事が進行中ということになります(11)。これと並行して、動物性タンパク質を魚肉類から、昆虫類、動植物の細胞培養、または、肉や魚と同じようなタンパク質を作るように遺伝子を組み替えた細菌類やがん細胞からできたタンパク質類と入れ替える方向に向かっています。これらは合成生物学(Synthetic Biology、またはSynBio/シンバイオ)の産物で、イギリスでは、すでにシンバイオによるタンパク質を生産する企業がいくつか使用認可を受けていているため、ラボ培養肉や乳製品の代用品として店頭やレストランなどへの卸はもちろん、ペットフード業界へも進出し始めています(12,13,14)。すでに遺伝子組み換えの段階で各種の問題が浮上しているにも関わらず(16,17,18)、そこからさらに不自然な方向に進行中であることに疑問を抱かずにはいられません。細胞培養や遺伝子を組み替えた細菌類やがん細胞などが作るタンパク質は、どんなに本物の魚肉類や乳製品に近くできあがったとしても、自然界には存在しないもの。Bovaerと同様に、人体や動物への安全は未確認で、長期使用による影響はまだ不明という点も問題です。しかしながら、業界は成長中で大きな投資の対象にもなっているため(15)、今後シンバイオによるタンパク質使用の商品は、食品類に限らず製薬や化粧品類など幅広く触手を伸ばしながら、良くも悪くも未知数を抱えて増え続ける見込みです。数年前には、動物性タンパク質の代用品として昆虫スナックが健康食料品店の商品棚に登場したものの、消費者層から受け入れられなかったためか、結構すぐに商品棚から姿を消しました。個人的には、どちらも可能な限り避けたいと思っていますが、みなさんはこの現象をどうお受け止めでしょうか。
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参照:
- Daily Mail Online. (2024). ‘Full list of Arla Foods’ Bovaer “contaminated’ products boycotted by customers: from Lurpak to Cravendale and even Startbucks, as controversial cow feed additive sparts backlash. Available at: https://www.dailymail.co.uk/health/article-14151879/Arla-Lurpak-Cravendale-list-customers-boycotting-cancer-Bovaer.html (Accessed:04/12/2024)
- UK Column. (2024). ‘Is Bovaer Safe and Effective?’ by Dr. Make Williams. Available at: https://www.ukcolumn.org/article/is-bovaer-safe-and-effective (Accessed: 08/12/2024)
- Bovaer Free Farms. (2024). ‘Bovaer Free Farms’. Available at: https://caremore.wixsite.com/bovaer-free-farms (05/12/2024)
- Conscientious Currency. (2024). ‘Bovaer Free Dairy Suppliers’. Available at: https://clarewillsharrison.substack.com/p/bovaer-free-dairy-suppliers (19/12/2024)
- Cohen, T. (2013). World’s top climate scientists told to ‘cover up’ the fact that the Earth’s temperature hasn’t risen for the last 15 years. Available at: https://www.dailymail.co.uk/news/article-2425775/Climate-scientists- (Accessed: 31/10/2023)
- Global Climate Intelligence Group. (2022). World Climate Declaration. Available at: https://www.clintel.org/ (Accessed: 05/06/2023)
- Lindzen, RS.(2019). ON CLIMATE SENSITIVITY. CO2 Coalison: Climate Issues in Depth Series. Available at: https://co2coalition.org/wp-content/uploads/2021/08/On-Climate-Sensitivity.pdf
- Corbyn, P. (2019). Man-Made Climate Change Does not Exist! Reading University Debating Journal. Available at: http://bit.ly/32AaRG0 (Accessed: 07/09/2023)
- Humlum, O., Stordahl, K., Solheim, JE. (2013). The phase relation between atmospheric carbon dioxide and global temperature. Global and Planetary Change 100, 51–69. http://dx.doi.org/10.1016/j.gloplacha.2012.08.008
- Koutsoyiannis, D., Onof, C., Kundzewicz, ZW., Christofides, A. (2023). On Hens, Eggs, Temperatures and CO2: Causal Links in Earth’s Atmosphere. Sci 5(35). https://doi.org/10.3390/sci5030035
- Allwood, J., et al. (2019). Absolute Zero. Apollo – University of Cambridge Repository. https://doi.org/10.17863/CAM.46075. https://www.repository.cam.ac.uk/handle/1810/299414
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2件のコメント
コメントを残していただき、どうもありがとうございます!
おっしゃるとおり、世の中は隠しきれない問題だらけですね。特に遺伝子の操作に関しては、すでに取り返しがつかない領域に入っていると感じています。狂騒の時代と呼ぶにもふさわしい状況ですが、個人的には(人生の)学びの一環として対策の強化に焦点を当てながら、希望を捨てずに日々の調査を続行中です。世の中はどうであれ、心身ともの健康や人生のクオリティなど、各個人が大切だと思うことを優先するのが一番では?という結論に至っています。
初めてコメントいたします。
執筆されているテーマについて全く知見はありませんが、興味深く読ませていただきました。隠そうとしても隠しきれない問題が各国で噴出しており、プチパニックが起きているように感じます。狂騒の20年代という時代がありましたが、その100年後である現代は、ついに文明の発展が頭打ちになったという意味での狂騒の時代なのでは。と考えてしまいます。