今年も残すところあと数時間!
というわけで久々の、そして今年最後の投稿は、クリスマスにもらったネコ関連本の数々から、Mog the Forgetful Cat(わすれんぼうのねこ モグ)についてです。
英国ではもうかれこれ40年以上愛読されている絵本「Mog the Forgetful Cat」シリーズは、イギリスの作家でイラストレーターのジュディス・カーによる作品です。
ジュディス・カーは、ドイツ人とユダヤ人のハーフで演劇批評家だった父アルフレッド・カーと、プロイセンの政治家の娘だったジュリア・ワイスマンの娘としてベルリンで生まれました。父はナチスを公に批判していた人物で、1933年、ジュディスが10歳の頃、ナチスの勢力が強大になる直前に一家はドイツを離れます。その後、アルフレッド・カーの書物はナチスによって焚書の対象となりました。
スイスやフランスなどを転々とした後、一家は英国に居を定め、ジュディスは英国人に帰化しました。
第二次世界大戦中はレッドクロスで働き、負傷兵の世話をしたりしていましたが、セントラル・スクール・オブ・アート&クラフツ(現セント・マーチンズの前身)から奨学金を授与された後、アーティストへの道を目指すようになります。
そして後に夫となる脚本家のナイジェル・ニールに勧められてBBCのテレビ脚本家の仕事に応募し、見事採用となります。ちなみにこのナイジェル・ニールは、スリラーやSF、ホラー作品を数多く手がけている脚本家で、私の夫も大ファンです。余談ですが、ちょうど今年のクリスマスに、彼が手がけたテレビドラマ発の映画「Quatermass and the Pit」(1967) が放映されていて、私たちにとっては偶然にもこの夫妻の作品にあやかったクリスマスでした。
ジュディス・カーは幼い頃から作家になることを夢見ていたらしいのですが、実際に物語を書いたりイラストを描き始めたりしたのは、自身の子供が読み書きを始めてからだといいます。この「Mog」シリーズのほか、かの名作「おちゃのじかんにきたとら(The Tiger Who Came to Tea)」や、半自伝的な児童小説三部作「Out of the Hitler Time」(そのうちの一作は「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」として日本でも販売されている模様)を手がけているのも彼女です。
夫のナイジェル・ニールが2006年に他界して以来、執筆活動がますます生きがいとなったと語っているジュディス・カー。その後も数冊の絵本を出版しているほか、2012年にはすOBE(オフィサーの勲章)を授与されています。
またまた余談ですが、サウスロンドンはHerne Hillに、彼女の名を冠した英国初のバイリンガル(英語とドイツ語)の小学校「ジュディス・カー・プライマリー・スクール」があります。
さて、私がクリスマスにもらったMogシリーズの一冊は「Mog in the dark」でした。猫の思考を人間の話す言葉にしたら、まさにこんな感じだろうなあという語り口のおもしろさと、子どもはもちろん大人の想像力も掻き立てられる、夢のようなストーリー展開でグイグイ引き込まれます。また一冊、お気に入りの絵本が増えました♡
そういえばこのMogは2015年にスーパーマーケット、Sainsbury’sのクリスマスキャンペーンのキャラクターとしても使われていました。すでに国民的アイドルな猫ですね。こちらがそのコマーシャルと製作秘話の動画です。
ちなみに「Mog」はmoggy = 猫の別称です。いわゆる雑種とか、どこにでもいるような平凡な猫のことを指します。
ではではみなさん、今年はこれにて。どうぞよいお年をお迎えください。
2019年もよろしくです!