1. 準備・デザインブリーフ
前回は建築プロジェクトの業務プロセスの概要と初回のクライアントのミーティングで戦略を決めるところまでご紹介しました。 サービス提案書とお見積書にサインしてからは、いよいよデザインのプロセスが始まります。
最初のステージでは、まずクライアントの要望をじっくりお聞きします。 もちろんプロジェクトによって、さまざなケースがありますが、ファミリーホームの改装であれば以下のような項目は標準でお聞きします。
- 家族構成、今後の予定
- 改装後は何年間、居住する予定か
- 要望する部屋の数とそれぞれの機能
- 家族それぞれのライフスタイル、どの部屋でどの時間帯を過ごすか
- よく泊まる人(遠くに住む親戚など)や、家族以外のメンバー(間借り人など)が住む予定
- スペースを必要とする趣味(自転車やスキー板の収納など)
- 現在と将来必要な収納
- 予算
- 工事の期限
- 工事中の仮住まいの有無
- 好みのスタイルの画像
そして現存の建造物の間取りや施工のクオリティ、ホームサーベイ(住宅購入時に行う検査)結果を参考にしながら、各種規制(自治体への建築計画申請の有無など)に該当するかの確認、案件に合わせた必要な専門家群の紹介、すぐに想定される問題点の指摘、オプションの検討など行い、その結果をまとめた詳細なデザインブリーフを作成します。 このデザインブリーフが今後プロジェクトを進める基礎になります。 ブリーフの内容が大幅に変わる場合は、コストが追加になるので事前にブリーフに入れるべき内容をよく(ご夫婦の場合)話し合っておくことをお勧めします。
さらに、これは行わないプロも多いようですが、私の事務所ではプロジェクトのなるべく早い段階でエクセルで予算項目をリスト化し概算コストを当てはめていき、どのような費用項目がいつどれくらい発生するかクライアントに分かるようにします。
以下は、とあるプロジェクトのリビングルームとキッチンで必要な工事項目とクライアントが調達する必要がある備品をリスト化したものです。
イギリスではビルダーを直接雇用した場合、床材からバスルームのタイル・ミラーまで膨大なアイテムを施主が調達してビルダーが必要なタイミングで調達し支給する必要があります。ところが、初めての工事の場合、施主側で何をいつ調達しなければいけないのかわからない、どういう資材を使えばビルダー側でどういう作業が必要なのかわからない、ためビルダーに「来週シャワー類が一式必要」と言われて初めて動くことになります。 「イギリスの工事は遅れるし費用が雪だるま式に膨れ上がる」とよく言いますが、工期の遅れと工事が始まってからの追加費用の発生は、施主側に知識と経験がないこと、ビルダーとの施工契約で必要事項がカバーされていないことに由来することも多いのです。
工事が始まる前に全てを決めて契約書に入れておくことが非常に重要です。 次回からはいよいよ「デザイン」と聞いて想像されるコンセプトデザインに入ります。
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