2. コンセプトデザイン
今回からはいよいよデザインプロセスの中で一番楽しい部分に入ります。
連載第2回で「ヨーロッパ人はコンセプトが大好き」と書きましたが、家は住む人の世界観や個性を現す場所で、自分はどういう風に暮らしたいのか、をインテリアに反映させるためにコンセプトは必須です。
住宅のコンセプトデザインではイメージボードと大まかなレイアウトプランをつくります。 コンセプトは形容詞(言葉)とビジュアル(画像)の両方で詰めていくのですが、言葉で表現する時に、日本のインテリア雑誌でよく使われる「シンプルモダン」、「北欧風」といったスタイルを現す言葉はいったん忘れた方が良いです。 日本ではメーカー側の都合(?)なのかどうかは不明ですが、スタイルを定型化し限られたオプションだけを提示することによって、実現できるデザインの幅が非常に狭められています(より詳しくはこちらをどうぞ)。 イギリスでは、ありとあらゆる時代・地域・スタイルの建材・家具が手に入るので、自分はどういう空間を心地よいと思うのか、その空間の中で家族はどういうありたいのか、自分を掘り下げる方法をお勧めします。 外食の例に例えると、日本が「定食」ならイギリスは「アラカルト」でしょうか。
下は実際のイメージボードの一例です。 私の自宅を改装した時のキッチンのイメージボードです。
形容詞は「この空間にいて自分はどう感じたいのか」、「空間が醸し出す雰囲気はどういうものを望んでいるのか」、感情や空気を現す形容詞を選んでみてください。 自分で自分のキッチンは「グラマラス」とか言うのは恥ずかしいものですが(笑)、デザイナー以外の他人に見せるものではないので「なりたい自分」、「憧れの空間」を出し惜しみすることなく入れてください。 もちろんプロの料理人の業務的で無機質なキッチンが憧れの人は「プロフェッショナル」、「無機質な」などが形容詞になります。
そして、その形容詞を現すビジュアルを選んでいきます。 この時、私はPinterestと購読している雑誌の両方を使います。 詳しいやり方はこちらに書いていますが、あまり考えずにピンとくるのはどんどん集めて、集まってから取捨選択するのがお勧めです。 上記の形容詞がすぐ出てこない場合はビジュアルを集めるところから始めて、集まったビジュアルを見ながら自分が魅かれるビジュアルに共通する形容詞を探すとうまくいく場合が多いです。
イメージボードを完成させる時の注意点としては、完成されたインテリアそのものではなく、素材や色・ムードを表現している画像を選ぶこと。 床材や壁の色など毎日眼に入る景色の中で大きな面積を占める大事な要素はイメージボードの中から選ぶことになるので、全体として醸し出したい雰囲気が出ていたら成功です。
コンセプトデザインのステージで同時に作成するのが大まかな部屋のレイアウトとざっくりした家具の配置を示した平面図です。 この際に、造り付け収納のボリュームと場所、部屋はオープンプランかセミオープンか独立しているか、などステージ1で作成したデザインブリーフや家具などの雰囲気を現すイメージボードが大変重要になります。
新しいレイアウト図ができた時点で、ビルダーのラフな見積もりを取って大まかな工事費を把握することもあります。 ここまでは取っ付きやすいかと思いますが、デザインの本番はここからです。