4. テクニカルデザイン
デザイン・ディベロップメントのステージで決まったデザインを基にさらにビルダーへの入札仕様書やジョイナー(大工)への造作家具の仕様書に落とし込んでいくステージがテクニカルデザインです。 「神は細部に宿る」とはよく言ったものですが、最初のデザインブリーフやコンセプトデザインからぶれずに、いかに細部までつくりこめるか、がデザイナーの腕の見せ所です。
このステージで作成する図面はよく細部までデザインするため、スケール(縮尺)が大きくなります。
住宅改装プロジェクトであれば、以下のような図面が必要になります。
- キッチン平面図・立面図
- バスルーム平面図・立面図
- 造作家具のデザインドローイング
- 床材・壁材
- 照明・電気図
また、入札仕様書には以下のような図面及び仕様も必要になります。
- Demolition
- New construcion
- 配水管・ガス
- ドア・窓
- 照明
- ペイント
- 家具
今回は前回までお見せしてきた自宅キッチンの平面図と立面図だけお見せしますね(実際に使用したものなので、線の強弱がついており画面上だと見えにくくなってしまいますが・・・)。
- キッチン平面図
- キッチン立面図
住宅の増築の場合、このステージまでくるとビルダー以外にもさまざまな法律上の手続きが必要です。
Planning ApplicationはTown & Country Act(要確認)という街の景観保護のために制定された法律に対応しているため建造物の外観規制に対する建築許可申請です。 一方、建造物の使用者・住人の安全を守るために制定されたのがBuilding Control(要確認)です。 防火・耐震・構造・安全などの観点から細かく規定されています。 こちらも工事終了後、最終的には自治体のCertificateを取得する必要がありますが、自治体公認の民間インスペクターを雇って工事のマイルストーンごとに検査するという方法もあります。 民間インスペクターは工事が始まる前に依頼します。
また、一戸建ての場合でもテラスハウスやセミデタッチドハウスの場合は壁を隣家と共有している場合があります。 共有している壁はParty Wallと呼ばれ、Party Wallの構造に影響がある工事を行う場合は隣家の事前合意を得るためにParty Wall Surveyorを雇います。 フラットではLeaseholdの場合、Freeholderの合意が必要で SurveyorやSolicitorを雇います。
すべてのデザイン・仕様が決まったら入札仕様書にまとめビルダー複数人に声をかけて入札を行います。 クライアント側に既に信頼するビルダーがいる場合や緊急のプロジェクトで入札期間を設けられない場合は、特定のビルダーとすぐ契約交渉に入る場合もあります。
入札期間は通常1ヵ月です。 工事の成功にはクライアントとビルダーの信頼関係が大きく左右します。 ビルダーが過去に行ったプロジェクトを見せてもらう、過去のクライアントに話を聞く、現在工事中のプロジェクトがあれば現場の様子を見に行く、などこまめに足を使って信頼できそうか見極めることが時間はかかりますが最も確かな方法です。
複数の入札があった場合は、入札結果を比較します。 通常、他ビルダーと比べて際立って安いプロポーザルを出すビルダーはお勧めしませんが、上記の通り、仕事振りや過去のプロジェクトの仕上がり・過去のクライアントからの評判など総合的に判断します。
施工契約はJCTという団体の契約が標準的に使われておりお勧めです。 ビルダーとの施工契約までくると、いよいよ後は工事を始めるための準備をし、始まるのを待つばかりです。