昔、『Faking It』というリアリティ番組がチャンネル4でありました。あるエピソードでは、労働者階級の若い女性が、イライザよろしく貴族令嬢の「なりすまし」に挑戦。貴族らしさを会得する過程で、上唇を動かさず口をあまり開けない喋り方を練習するのを見ていて、わたしの脳裏にはモグモグと話すチャールズ皇太子が浮かび、ああ、ポッシュな人たちはそうやって喋ってるのか!と、思わず膝を打ったものでした。
さて、英国では上流社会の話題がつねに登場します。映画『The Riot Club』の公開で、上流階級独特の喋り方にも注目が集まっているようです。インスタントにポッシュなアクセントを身につけたい方は、ガーディアン電子版の動画でレッスンできます! それによると、上流階級英語の鍵は母音。たとえば、powerful は「パッワフル」ではなく「パア~フル」。間違ってもコックニー英語にならないよう、ご注意を。
とまれ、そういうもったいぶった喋り方をする貴族がいない英国なんて、ミルクを入れない紅茶みたいなもの。けれど、貴族らしい貴族が姿を消してゆくのは、 避けられない事実なのです。去る9月24日、英国上流 社会のアイコンと言われた、ミットフォード男爵家の6人姉妹の末娘で94歳のデヴォンシャー公爵未亡人が亡くなり、メディアはトップニュースで報道。がもちろん、貴族に興味があるのは英国人だけじゃありません。
このわたしも『Servants』(拙訳ながら『使用人が見た英国の二〇世紀』として出版…とついでに宣伝、すみません)を読んで、浮世離れした貴族の、想像を絶するスケールでの暮らしぶりを改めて知ったのでした。しかし、神秘的で古風で、俗世界から超絶した雰囲気をもつ貴族は、もはや絶滅危惧種。現に、故デヴォンシャー公爵夫人の孫娘のステラ・テナントは、鼻ピアスのパンクルックが評判になったモデルです。
そしてまた、英国庶民の暮らしに貴族と並んで欠かせないのが、セレブリティのゴシップ。とりわけハリウッドのセレブに弱い印象を受けるのは、わたしだけではないかものかも? そんな貴族とセレブへの憧れを満たすのにピッタリなトピック、ということなのか、『ダウントン・アビー』クリスマス特別編へのジョージ・クルーニーのゲスト出演を、メディアがこぞって伝えていたのには、いや、ちょっと驚きでした。
日本では(ちっとも面白くない)缶ビールのCMに登場して、「キモチィ~イ」とか言っているクルーニーですが、その気持ち、分かります! なにしろ、美貌、知性、家柄、若さ(36歳)と、すべてが揃ったレバノン系英国人で国際的にも著名な弁護士、アラム・アラムディンさんのダンナになったんですからね。27日の結婚披露宴の模様は、BBCのサイトですらミラー紙かと見まがうほどの、セレブの写真てんこ盛りでございました。
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