ユーロヴィジョンと隣国の同性婚国民投票の陰になった核軍縮

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英国人の大好きな(あるいは大嫌いな?)ユーロヴィジョン・ソングコンテストも、今大会で、はや60回目。今年はスウェーデンの歌手が見事、優勝。それにしても今回、オーストリアが参加してるのはなんでや? と思われた方も多いはず。オーストリアはいつからヨーロッパになったの? じつは、60周年記念ということでオーストリアを招待し、1回こっきりのゲスト参加なんだそう。あ、なあるほどねえ。

ともかく、毎回、意表を突くイメージで登場する各国のコンテンダーたちですが、昨年のオーストリア代表でヒゲ面ドラッグクイーン、コンチータは群を抜いて強烈でしたよね。ユーロヴィジョンでのコンチータの優勝が示したように、LGBT(同性愛者、両性愛者、性転換者)の人権が認められる環境は、あちこちで少しずつ整いつつある感じです。強い反発はあるものの、人びとは寛容になっている模様。

なにしろ、カトリック教徒の国、アイルランドで去る22日に行われた同性婚をめぐる国民投票で賛成が多数となり、合法化されたんですから、ちょっと驚きです。ここ数日、英メディアは、その隣国での国民投票とユーロヴィジョンの話題でほぼもちきり。そして、23日が運命の日でした。結果、アイルランドでは同性婚が合法となり、同日のユーロヴィジョン決勝大会で、英国はあえなく27か国中24位に沈み…。

けれどちょうどその時分、大西洋の向こう側では、重要な問題が話し合われていたのです! 国連本部で5年毎に開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議が、最終全体会合で決裂。加盟国の対立で文書採択ができませんでした。核の非人道性を認識すべく、世界の政治指導者に広島・長崎への訪問を求める、との文言を盛り込もうという日本の提案に中国から物言いがついたため、日本では一層注目されてたんです。

で、中国が反対した理由? 歴史修正主義だと思われかねない行動をとる、安倍首相に責任の一端がある(のかも?)。(核保有国)中国の論理では、戦争加害国の日本が被害国としてのイメージにすり替えようとしている、と…。日本にとことんイチャモンをつけたい中(&)の気持ちもわかるけど、何もわかってないなあ、という部分大。しかし、核軍縮文書を採択できなかったのは核保有国が反対したせい。

ウクライナをめぐるロシアと米国、中東の核保有国(とされる)イスラエルと米国、世界秩序を変えたい野望をもつ中国と米国――と世界情勢を見れば、核軍縮の機運がとみに低下しているのも納得です。そして悲しいことに、(核保有国)英国も、最終文書案への反対に同調しました。記事にはなってるものの、英メディアは総じて関心が低かった。そりゃ、同性婚とユーロヴィジョンのほうが重要ですよね?

核軍縮への英国民の関心の薄さは、原潜撤去を訴えるスコットランド民族党の躍進により、今後は変わってゆくのでしょうか? オバマ大統領には、ノーベル平和賞の返上を本気で要請したいです。と、今回は珍しくマジメな話題でございました。

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話は変わりまして、アンドレア・ディ・ロビラントによる、謎の薔薇を巡る冒険譚『Chasing the Rose』を、わたくしごときが訳しました『ヴェネツィアのチャイナローズ』が、22日に原書房より出版されました! 薔薇にまつわる園芸のヒントみならず、歴史、文学、美術、科学に触れ、頭と心(プラス五感)を刺激するお話が盛りだくさんです(薔薇の季節に間にあって、ほんと、ほっ)。

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About Author

京都東山の生まれ。19歳から雑誌の仕事(編集者/スタイリスト/コーディネーター/ライター)に携わる。英国では、憧れのフローリストの下での花修行や、尊敬するアーティストが学んだカレッジで現代アートを勉強し、通算11年間のロンドンライフをエンジョイした。オーサカン(大阪人)となった今も、“心”はロンドナー。変わらぬ日課として読むUK のオンライン新聞から、旬なニュースをあぶそる~とロンドンのためにピックアップ。帰国後は本の翻訳を手がけ、この5月に『ヴェネツィアのチャイナローズ』(原書房)、2014年7月に『使用人が見た英国の二〇世紀』(原書房)、ほかを上梓。ロンドンで目覚めた世界の家庭料理チャレンジ&花を愛でる趣味ブログserendipity blogは、開設して11年目に突入。

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