母娘で想う、純白のセブン・シスターズ。

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関西で下宿しながら学生をしている娘が、昨年からカナダの大学に短期留学をしています。カナダでは、寮生活を送っています。

一棟に4人ずつ割り振られていて、1階はキッチンとリビング、2階にはトイレとシャワー、そして各自の一人部屋があります。基本全員で共有部分は掃除するそうですが、定期的に大学のお掃除担当の方がピカピカに磨き上げてくれるそうです。部屋は机も棚もベッドもクローゼットも全て備え付け。日本から詰め込んだ小物類を決められた場所に納めるだけでした。

さてカナダでの勉強期間中、日本での娘の下宿先はもぬけの殻。いずれ帰ってきてまた日本の大学に通うのです。解約するには勿体無く、空家賃を払い続けるのもこれまた勿体無い。それならいっそのこと、この私が住みましょうと申し出ました。東京の自宅と娘の下宿先に通う私の二重生活の始まりです。

二重生活とはいえ、もともと私の実家は関西です。実家と下宿先もさほど遠くはないので、実家に泊まったり下宿先に泊まったり、その日の気分で宿泊地を変えてみました。実家に帰ると私の母がいますが、下宿先に帰ると私一人だけの生活です。一人暮らしというものを経験したことがなかったので、この歳になって自分だけの秘密基地ができたようで嬉しくてたまりません。娘からは家にあるものは何を着ても持って出てもいいよと言われています。化粧品も使っていいからねと。そんな生活を続けているとシャンプーなどの消耗品は確実に減っていきます。減れば娘に報告し、次に新しく買うものは同じものでいいか、あるいは違ってもいいかなどと相談します。

ある日、シャンプーがもうなくなってしまうと娘に連絡を入れると、思い出したかのようにこう言いました。
:「そういえば洗面台の下に空のシャンプーボトルがあると思うんだけど、捨ててしまっていいよ」
:「あった、このピンク色の容器ね」
:「そうそう、それ! あ〜、でもちょっと待って。」
:「どうしたん?」
:「ねえねえ、そのボトルのデザイン、セブン・シスターズなんだよ」
手に取ってよく見てみると、白亜の石灰岩で出来た断崖セブン・シスターズのラベルでした。
:「そのセブン・シスターズのデザインが気に入ったから、お揃いのシャンプーとコンディショナーを買ったんだよ。う〜ん、やっぱり捨てずに置いといてほしい!」
:「わかったよ。ちゃんと保管しておくね!」

この地を訪れた方ならひと目見てお分かりになるでしょう。イングランド南部のイースト・サセックス州にあるイギリス海峡に面した白い崖の連なり。シーフォードとイーストボーンという町の間に位置しており、その一帯はサウス・ダウンズ国立公園内にあります。

名前の由来は海水に侵食されて7つの丘になった崖が、7人の乙女が並び立って見える様子から付けられたとも言われています

これはクラシエホームプロダクツ株式会社が、2020年11月に数量限定で発売したヘアケアブランド「いち髪」の限定デザインボトルです。「いち髪」とは、日本女性の髪に良いと伝えられているさまざまな和草(わそう)のエキスを抽出して研究を重ね、使うたび傷みにくい髪へ導く「予防美髪」ケアブランドのことです。

このボトルはペタンとしやすい髪もふんわりさらさらな髪に導く「ふんわりさらさらケア」ラインとして発売されました。イギリスのセブン・シスターズに打ち寄せるサテンのような波やふんわりした雰囲気が、シャンプーとマッチしているというのがデザインの決め手になったと言われています。

「このボトルのデザイン大好きなんだよね」

限定商品だった為もう販売されていませんが、当時こんなデザインのシャンプーが店頭に並んでいたとも知らなかったし、この下宿部屋に住むことがなければ見ることもなかったでしょう。なんだかお宝物を見つけ出したようで得した気分♪  両手でボトルを握り締めながら、一度だけ訪れたセブン・シスターズを懐かしく思い出しました。

2015年8月大空と海に囲まれたどこまでも続く丘の草地、なんといってもあの崖の白さは忘れられません。この崖は過剰に保護されることなく、自然の摂理のまま侵食を続け、少しずつ波に削られて幻想的な白さが保たれているそうです。手つかずの自然ほど美しいものはなく、生かされている自分を大地の上で感じる時間でした。まさに「息を飲む感覚」。遠くに見える緩やかな勾配の崖は紛れもなく本物なのだとわかっていながらも、この世のものではないような景色。ここはイギリスなんだと体感した1日でもありました。

打ち寄せる波とぶつかる小石の音が心地よい♪

ちょうど下宿部屋滞在中に、ハリーポッターの映画をネットフリックスで全部見直していると「ハリーポッターと炎のゴブレット」で、クィディッチの世界大会を観戦しにいく到着地点としてセブン・シスターズが登場したのです。一度訪れると二度と忘れないあの光景。世界大会の画面を指差して「あ、セブン・シスターズじゃん!」と、私だけの「秘密の部屋」でその偶然の出来事を楽しみました。

娘と一緒に訪れたこの地をとり立てて思い出して話し合ったことはなかったけれど、彼女は彼女なりに感動の波を静かに胸の内にしまっていたのでしょう。親元離れ一人下宿生活をスタートさせ、そこで目に留まった懐かしの風景。どんな思いでそのボトルを手に取ったのか、そして捨てずにずっと保管していたその気持ちを想像するだけで胸が熱くなりました。

もう一回この場所へ行かなくちゃね。丸一日かけて端から端まで往復しないとね。でもとりあえず、もう少しだけ私ひとりの下宿生活を楽しませてください。あなたもカナダで死に物狂いで勉強してください。

 

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【セブン・シスターズ】Seven Sisters
アクセス:ロンドンから車で約2時間 / 列車+バス( ロンドンから列車でブライトン、イーストボーン、シーフォード各駅へ。そこからセブン・シスターズまでバス)
URL:https://www.sevensisters.org.uk/
Instagram@sevensisterscountrypark

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兵庫県伊丹市出身。東京都在住。主婦時々パートタイムジョブをこなす。子育て期をニューヨーク、ロンドンにて駐在生活を送る。思いつきのその日決めで行動する一匹オオカミ派。『成るように成る』をモットーに今世を生きる。水泳・ジョギング・登山・ウクレレ・映画・ライヴ鑑賞・奉仕活動と未知なる自分を今後も探求し続ける。Instagram: @n_amihey

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