第2話 Victoria sandwich ~ヴィクトリアサンドイッチ~

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イギリスおかし百科


<ヴィクトリアサンドイッチ>

イギリスにおける日本のショートケーキに匹敵する存在が「ヴィクトリアサンドイッチ」。ヴィクトリアにしても、サンドイッチにしても、なんともイギリス感満載の名前ですが、その高貴な名前に反してかなりシンプルな容姿。プレーンなスポンジケーキ2枚でラズベリージャムをサンドしただけという、見目美しいフランス菓子に慣れ親しんでいる日本人の目には、なんとも素朴に過ぎるようにも映るケーキ。ですがこれが、イギリス人が愛してやまない紅茶のお供。ヴィクトリアサンドのないティールームも想像できないし、とにかくこのケーキなしにはイギリスのティータイムは語れないのではないかと思うほどのポジションを占めているケーキなのです。

シンプルさが潔いイギリスケーキの女王的存在☆

シンプルさが潔いイギリスケーキの女王的存在☆

別名「ヴィクトリアスポンジ」とも呼ばれるこのケーキ、イギリスでいうところの「スポンジケーキ」のベースとなるもの。基本的にはバターとお砂糖と卵と小麦粉を全て同量ずつ順繰りに入れて混ぜるだけの、いわゆるパウンドケーキ的な生地。しっかりしっとりとしたその生地は日本の卵を泡立てて作るふんわりとしたスポンジケーキとは全くの別物です。このしっかりとしたスポンジケーキやドライフルーツたっぷりのどっしりフルーツケーキに慣れ親しんでいるイギリス人、あまりふわふわのケーキは食べた感がしないようで、、、ある日イギリスのファームショップのお料理教室にこのヴィクトリアスポンジを習いにいくと~「ハンドミキサーでは空気が入ってフワフワになりすぎるから、生地は木ベラで作るほうがいいのよ」とのこと。もちろん、新しい便利なキッチンガジェット好きでもあるイギリスの若い世代の人たちは喜んでキッチンエイドやハンドミキサーでヴィクトリアスポンジを作っていますが、、、。いずれ日本と比べて粒子粗め、たんぱく質含有量多めのイギリスの小麦粉で作ると必然的に日本で作るより重めの仕上がりになるので、適度な食感があって、なるほど紅茶にぴったりのケーキです。そうそう、イギリスでは、こういったクリームやジャムなどをサンドする2段のケーキを作るときは、「サンドイッチティンまたはサンドティン」と呼ばれる、浅い焼き型を使います。こうすれば、焼き時間も短くて済むし、冷めるのも早い、わざわざカットする手間もないといいことづくめ。合理的なイギリスらしい作り方です。

薄い型2枚に分けて焼き上げるので楽チン☆

薄い型2枚に分けて焼き上げるので楽チン☆

ところで気になるのはその名前の由来。ご推察どおりヴィクトリア女王(在位1837~1901年)にちなんでいます。イギリスの南に「ワイト島」という小さな島があるのですが、この自然に囲まれた静かな島は女王のお気に入りで「オズボーンハウス」と呼ばれる別邸を建てます。1861年に最愛の夫であるアルバート公が死去すると、悲しみのあまりこの別邸に引きこもることが多くなった女王。そんなある日、オズボーンハウスで開かれたパーティーで女王のために作られたのがこのケーキでした。このシンプルなケーキはいたく女王のお気に召し、今では女王の名を冠したそのケーキはイギリスティータイムに欠かすことのできない女王的存在になった、、というわけです。

ワイト島のオズボーンハウスでいただくヴィクトリアサンドもまた格別☆

ワイト島のオズボーンハウスでいただくヴィクトリアサンドもまた格別☆

つまり150年以上イギリスで愛されていると言うことですが、今と当時のケーキはどう違うのか、はたまた全く同じなのか、、。1874年のIsabella Beeton 婦人著の料理本をみてみましょう~まずは卵を4つ殻ごと量って、それと同じ分量の砂糖とバターと粉とをそれぞれ量りましょう~となっています。なるほどそれなら手持ちの卵が色々なサイズでも、いつも同じテクスチャーのスポンジが焼けますね。当時は今のように「Lサイズ1パックください~」なんて言うわけにはいかなそうですから。そしてお次は、バターをクリーム状にします。そこに小麦粉とお砂糖を加えて混ぜ、次にあらかじめよくかき混ぜておいた卵も加えます。約10分ほどかき混ぜたら、バターを塗ったヨークシャープディング型に生地を流して中火のオーブンで20分焼きます。冷めたら、何のジャムでもマーマレードでもいいので、間にサンドして、細長くカットしてガラスの器に盛りましょう~とのこと。ふむ、きっと今とそう変りのないケーキが出来上がりそうですね。このしっかりとしたイギリスのスポンジだからこそのジャムとのコンビネーション。これが日本のフワフワスポンジだとこうはいかないのです。

近頃は、ヴィクトリアサンドイッチにもジャムだけではなく、レモンカードや生クリーム、フレッシュないちごなどをはさんだバージョンも人気ですがやはり、シンプル is ベスト。王道のラズベリージャムをサンドしたタイプを見るとほっとするのだから、慣れというのは恐ろしいもの。 新しいものを少しずつ取り入れながらも、急速な変化を好まず、昔からあるものを大切にするイギリス人の気質、そしてシンプルで家庭的な生活を愛したというヴィクトリア女王の人柄を、よく表現しているヴィクトリアサンドイッチ。きっとこれからも愛され続けることでしょう。

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/

4件のコメント

  1. yasuda mariko

    YUKA さん☆ そうヴィクトリアスポンジって日本人にとっても懐かしい味なんですよね。
    M&Sのお菓子結構美味しいですよね。ちなみに私はM&S のカスタードタルトが大好きです~。
    今度 Best of Victoria sponge 発見したら教えてくださいね☆

  2. ヴィクトリアスポンジケーキを初めて食べたのはM&Sで売られているものでした。

    甘いのは確かなんですが、バタークリームとジャムのコンビネーションが懐かしくて、もちろん美味しくてそこからもう虜になりました。
    お菓子作りは苦手なので買うばかりですが、どこのヴィクトリアスポンジケーキが美味しいか模索中です\(^o^)/

  3. yasuda mariko

    なんですけど、、綺麗にデコレーションされたショートケーキを見慣れた目には
    なかなか衝撃的なんですよ、ヴィクトリアサンドは。。(笑)
    あれ見てすぐに美味しそう~と言える人は、自分では気づかずに相当イギリスナイズドされていると思いますよw

  4. ヴィクトリア・サンドイッチ、大好き〜♪ 
    ワイト島のオズボーンハウス、行ったことありますが、
    あそこで誕生したものだとは知りませんでした!
    日本だとさながらどら焼きみたいなもの!?
    どら焼きだって、奥深いではないですか、おかあさま ^^

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