<Scones from Borwick’s cookery book スコーン~ボーウィックレシピ本より その2 >
さて、前回の「ボーウィック社のレシピ本(circa1900)に載っているスコーン13種全部作ってみよう!」シリーズの続きです。
どれも大差ないレシピに見えますが(実際そうですが)、作っていくうちにちょっとした疑問が浮かび、気づき、学べることがある。そうこうしているうちにいつかスコーンの神髄が見えるかも?
そんなわけはありませんが~早速、今日は4つ目のスコーンから参りたいと思います。
「SCONES (without egg)」
材料は、1パウンドの粉に、ベイキングパウダー小さじ2、バター3オンス(もしくはラード)、砂糖3オンス、カランツ1/4パウンド、オレンジピール1オンス、ミルク。
(1パウンド≒453g 1オンス≒28g 1パイント≒568㎖)
今回は成形の仕方も含めて割と丁寧に作り方が書いてあります。
Clean the currants and chop candied peel. Shift the flour and baking powder, lightly rub in the butter, then add the sugar and prepared fruit. When well mixed, stir in about ½pint of milk and work to a soft dough. Divide in two, form into rounds, place on flat tin, and mark across. Bake a nice brown in brisk oven.
この時代のレシピ本によく見られる書き出し。「ドライフルーツをきれいにしましょう。あるいは種を取り除きましょう」の一文。
当時のレーズンやカランツ類は枝や軸、小石やかびたものが混ざっている他、種を取り除かないといけないものも少なくなかったようで、まずはそこからスタート。大量の干しぶどうを使うことも多い当時のレシピ、レーズンの種を一つ一つとるなんて考えただけで気が遠くなりそうな作業です。
ドライフルーツの準備を終えたら、ようやくスコーンづくり。
「粉とベイキングパウダーをふるい、バターをラブイン(サラサラの状態)します。お砂糖とドライフルーツを加え、そこに½パイントの牛乳を入れてソフトな生地を作ります。
ふたつに分けて丸く整え、平らな天板に載せたら、十字をいれます。熱めのオーブンでいい焼き色がつくまで焼きましょう。」
これはこれまでの物より、より多めのバターとお砂糖、その上カランツとオレンジピールが入り、美味しいスコーン。しっかりした食感が多い中、これはソフトでリッチな生地です。卵が入っていないことなど全く気になりません。合格!(⁉)
どんどん参ります。お次は「SULTANA SCONES」
½パウンドの粉に、ベイキングパウダー小さじ1。バター、砂糖、サルタナそれぞれ1オンスずつ。
ミルク1ジル。
またまた聞きなれない昔の単位が登場しました。「Gill(ジル)」これは¼パイント。つまり142㎖ のこと。スコーンを作るだけでも勉強になります。もうあまり役には立ちそうもない知識ですって?いえいえ、この世に無駄なものなんて何もないはず。
作り方はほぼ前述の卵なしスコーンと一緒。「サルタナはきれいにしましょうね」と注意書きがあるのも一緒。昔のスタンダードのドライフルーツがどんな状態だったのか見てみたいですね。
では生地が出来たら成形です。
「1インチ(約2.5㎝)厚さに伸ばし、卵を塗ります。そして三角にカットします」「軽く油を塗るか、粉をふった天板にのせて、10~15分程焼きましょう」
さぁ焼きあがりました。
卵を塗ったのでつやつやの表面。粉226gに対して、バター、砂糖、サルタナ全て28gずつとそして牛乳でまとめるという、質素な配合ですが、見た目はすごくいい感じ!
お味は・・・しっかり固めですが悪くない。これはきっとサルタナマジック。ちゃんとスコーンになっています。バターを添えれば自分用の三時のお茶には十分。焼きたては美味しいけれど、明日はかなり固いだろうな、、そんなテクスチャー。
しかし、この本が出版された当時はきっと、「スコーンを作るわよ」となったら皆が待ちかねていて、残ってしまう心配なんて全くなかったことでしょう。無用の心配。
No. 6「RAISIN SCONES」
1パウンドの粉に、ベイキングパウダーがデザートスプーンフル1杯、砂糖2オンス、塩小さじ½、バター2オンス、レーズン4オンス、卵1個、牛乳。
またまた登場した聞きなれない単位、デザートスプーン。これは小さじと大さじの間つまり今の感覚で行くと10㎖ということ。ですが一筋縄でいかないのが、昔のレシピ本を読む際の面白いところ。詳しくはこちらの記事を。
さて、作り方。今回はレーズンが入ります。案の定「Stone the raisins(種を取りましょう)」の一文が、、、120g弱のレーズン、一体何粒あるのやら。時間のある時に内職のようにやっておく必要がありそうです。
それ以外はいつもの簡単生地作り。バターを粉にラブインして、砂糖と手間暇かかったレーズンを加え、卵と牛乳を加えれば生地の完成。
「生地を半分に分け、それぞれを2.5㎝厚さで円形に整え、4つにカットします。天板にのせ、20~30分焼きましょう。」
これは先ほどのサルタナスコーンと油脂と砂糖の割合は一緒。かなりリーンな生地。ですが、卵が入るし、レーズンが倍量入っている、そしてお塩が効いているため、味はしっかり。食感は、なるべくヘルシーにしたくてバターやお砂糖を控えたタイプにありがちな、硬めの食感です。
頑張ってもう一つ。「WHEATMEAL SCONES」
全粒粉6オンス、小麦粉2オンス、ベイキングパウダー小さじ2、バター1オンス、砂糖1½オンス、牛乳½ジル。お塩少々。
生地の作り方はいつも通り。ちょっと気になるのは水分の少なさ。「生地がまとまるまで牛乳を加えましょう」となっていますが、全量入れても足りないと思われるので、ここでは、必要量足しましょう、の意味かしら。
レシピを信用し過ぎない、自分の感覚も大切に、これも昔レシピでベイキングをするときのコツ。
生地が出来たら「これを4つに分けて焼きましょう」以上。
さぁ、成形の決定権をゆだねられました。
分けた生地それぞれを円形などに整えなおすなら、最初の生地の形は問題になりませんが、例えばそれをナイフで4等分したまま焼くとすると、最初の生地の形が四角であれば4つの四角のスコーンに。円形なら扇形の4つのスコーンができるわけです。結局のところ、どんな形でもいいわけですね。なら私が選ぶのは一番手間のかからない扇形。
「焼きたての熱々でも、冷めてからでも美味しく頂けます」
これまでのスコーンとは全粒粉が入るので全くの別物。変わらずバターも砂糖も少しのリーンな配合ですが、粉の甘みというか風味で、少々しっかり固めでも、バターをたっぷり塗れば、なんと言おうか、ぎっちり系ドイツパンのような感覚でいただけます。これはこれであり。先日ロンドンで食べた自然派系パン屋さんのスコーンをちょっと思い出しました。今新しいと思っているものは、実は原点回帰なのかもしれない、、などと思いながらのティータイム。。
今日は4つご紹介しましたので、残るところあと6つ。
次回は頑張って残り全部ご紹介する予定です☆
最後までどうぞお付き合いくださいませ。
つづく。