第206話 Lemonade cake/ Railway pudding/ Tereglam cake~レモネードケーキ/レイルウェイプディング/テレグラムケーキ~

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イギリスおかし百科


<Lemonade cake/ Railway pudding/ Telegram cake  レモネードケーキ/レイルウェイプディング/テレグラムケーキ >

今日のお菓子も前話にひきつづき、古いボーウィックのレシピ本(ボーウィックについては前々回の記事を)より。
今回は気になる名前シリーズです。

ボーウィックのレシピ本をパラパラ眺めていると、よく知ったお菓子に混じってかなりの数の見たことも聞いたこともないお菓子の名前が並んでいます。何となくその名から味や見た目の想像がつくものも多いのですが、中には全くイメージできないものも。そんなものをいくつか実際に作ってみました。

まずは「レモネードケーキ」。
レモネードを材料に入れる?それともレモン入りでなんとなくレモネードっぽい爽やか味だからこの名前?「コーヒーケーキ」が「コーヒーに合うケーキ」を意味することもあるように、もしかしてレモネードに合うケーキ??いろいろ想像の風船を膨らませてみます。
・・・イマジネーション衰え防止の運動が済んだところで、答え合わせ。

材料を見てみましょう。
お砂糖とブラウンブレッドのパン粉各1カップ半、1/4パウンドの刻みアーモンド、卵白6個、ベイキングパウダーとシナモン少々、レモンの皮。そして最後にレモネード1カップ。

 

 

レモネードと言えばイギリスで人気の清涼飲料。今でこそ市販のシュワシュワのレモン味ドリンクが頭に浮かびますが、昔はお水とお砂糖を煮立ててレモンを加えて、と家庭で手作りすることも多かったので、炭酸なしのものが主流。ここでもレモネードの作り方として、1カップのお湯に大さじ2のお砂糖を溶かし、レモンの果汁を入れましょう~となっています。

さて、材料を見たところで、余計に混乱してしまいました。油脂も小麦粉も入っていない。。。メイン材料は刻みアーモンドとパン粉と卵白、それにレモネード?一体これで何ができるのか??
作り方はシンプルです。軽く泡立てた卵白に、レモネード以外すべての材料を入れて混ぜ、型に入れて1時間焼きましょう。焼けたら熱いレモネードを小さじ1杯ずつ染み込ませて、全体がしっとりしたら完成。
四角くカットして、温かいうちにフォークを添えて、寒い日のお茶にどうぞ☆だそう。

「フォークを添えて」とわざわざ書いてあるのも珍しいし(よほどペタペタな仕上がりなのか?)、レモネード風味を寒い日に、というのもまたしっくりこない、材料以外にもとにかくクエスチョンマークがいい感じにいっぱい、これはワクワクするパターン(^^)です。
さぁ作ってみました。焼き上がりはこんな感じ。

 

 

粗いダクワース生地のよう。確かに材料はパン粉を除けば、そしてアーモンドの粗さを除けば、それと遠くもない。それにしても、さっぱりレモネードが染み込んでいきません。それはそのはず、ほとんどメレンゲですから。見た目はさえないけれどお味に期待しましょう。

 

う~~~~ん、微妙~~!
中途半端な甘さ。そして粗すぎるアーモンド。これがダクワースのようにアーモンドパウダーならまだましだったかも。しっとりを超えてべっちょりな中に刻みアーモンドの合わない触感。これは難しい!まずいわけではないけれど、積極的に食べたい味でもない。
寒い日のお茶のお供に、、う~ん、どうしてもこれしかなかったら食べるけど、、そんな感じです(笑)
謎レモネードケーキ、とりあえず解決✅

お次は「レイルウェイプディング」。鉄道プディング?
これはまた鉄道の食堂車で提供されていたプディングなのか、はたまた子供たちが喜ぶように電車に見立てて細長く作るプディングなのか?またまた妄想の翼をパタパタ広げてみます、が、飛び立つには至らず、早々に材料&レシピをカンニング。

2オンスのバターにお砂糖半カップをすり混ぜ、小麦粉1カップと塩一つまみ、ベイキングパウダー小さじ1をふるい入れます。卵1個と牛乳半カップ、レモンの皮を入れて1分混ぜたら、浅い型に入れてオーブンで20分焼きましょう。
焼きたてを四角にカットして、ジャムソースかカスタードソースを添えて召し上がれ。

 

ふむ、こちらは材料も作り方もお味も想像がつく安心感があります。でもなぜにこれがレイルウェイプディングなのか??
さて完成図です。

 


お味のほどは~

想像通りのシンプルなお味。悪くありません。バターと卵が少ない分を牛乳でカバー。どうなることかと思いきや薄さのわりに意外としっとりしているので、焼きたてにソースを添えれば確かにプディング(デザート)にもなりうる。何の変哲もない軽いレモン風味のスポンジ味ですが、レモネードケーキを食べた直後なのでほっとする食感です(笑)

 

 

しかし作り終えてもやはり名前との関連性が分からない。他を当たってみると、ちらほら「レイルウェイプディング」なる名前を見かけるのですが、姿はどれもこれも千差万別。プディングベイスンで蒸したスポンジプディングもあれば、同じく薄く焼いたものにジャムを塗って重ねたり、巻いたりしたものも。どれも1900年代前半から中ごろにかけて、スクールディナー(学校給食)のデザートとして使われていたものが多いようです。確かにヴィクトリアスポンジなどと比べれば、バターも卵も少なくエコノミーな材料。そして優しい味で子供達に好かれそう。名前も子供受けを狙った?そんなこともないでしょうが、、
とにもかくにも、この本の中で紹介されているレイルウェイプディングの姿&お味は分かりました。レイルウェイプディングDone!✅

最後にもう一つ、すごく気になる名前のものがありました「テレグラムケーキ」。
訳すと「電報ケーキ」。電報?電報、、、もう今日分のイマジネーションは尽きてしまったようで、なにも浮かびません(涙)
即、レシピへと目が移ります。
なになに、

卵3個、それと同じ重さのバターとお砂糖と小麦粉。ベイキングパウダー小さじ半分、ココナッツ2オンス(約56g)。
ふむ、ここまではかなり普通の美味しいケーキが予想されます。
~と思っていたら、最後に目についた1行が、コチニール数滴。
コチニールはご存じの方も多いと思いますが、乾燥させたカイガラムシを砕いて使用する昔ながらの色粉。イギリスでも食品の着色用によく使われていたので、使いやすく液状タイプにしたものが小さなボトル入りで売られていました。

さて、コチニールで色付けするのがカギと思われるこの電報ケーキ。昔のイギリスの電報の紙はピンク色だったとか?う~むピンク色もなくはないけれど基本は白よね、、まずは作ってみよう!
こちらは、卵とバターと砂糖と小麦粉が同量入る現代のヴィクトリアスポンジと同じ配合と作り方。違うのはそこにココナッツとコチニール少々が入るのと、「10分間混ぜましょう!」と指示されている点。混ぜ具合は適当に頃合いを見て型に入れ、ココナッツを少し散らしてオーブンへ。中温で25~30分となっていますが、我が家ではしっかり火が通るまでプラス10分以上かかかりました。

さぁドキドキのカットの瞬間です。なんといっても、赤色色素を調子にのって沢山入れてしまったので、生地の段階で相当どぎつい色になってしまっていたから。。。

 

 

、、やはり少々色が派手過ぎる気はしますが、何せ写真などの正解がないのでわからない。
もしかしたらこれくらいでいいのかもしれないし、ペールピンクにするべきだったのかもしれない。いずれにせよ、お味のほうは問題なし。一般的なココナッツ入りスポンジケーキの味がします。こちらはバターも卵もたっぷりなので食べ慣れた味と食感です。
さて、お味のほうはいいのですが、完成形を前にしても、またもや名前との関連性は分からない。。
しかしまぁ少なくとも、他の二つ同様ケーキの一番肝要な部分、姿形と味は分かったわけですし、好奇心もお腹も大分満たされました。
今日はこの辺で、また次なる謎ケーキを作ってみたいと思います。

最後のテレグラムケーキ、ご興味ある方はお試しを☆
コチニールはお手持ちの食用色素で代用を。
上記の分量で直径20㎝の丸形、2/3量で作られるなら15㎝丸形1台分になります。
上にふりかけるココナッツ(分量外)が焦げやすいので、後半はアルミホイルで覆ってあげてもいいかもしれません。竹串をさしてチェックして、しっかり火が通るまで焼いてくださいね。

2025年もイギリス菓子好きは変わらず。
今年もどうぞよろしくお願いいたします😊

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宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 、2022年6月「新版BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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