茅乃舎さんのレストラン、酒蔵、大学生へのグローバル講座

0


久しぶりの日本への一時帰国。朝夕のヒンヤリとした涼風を楽しめる、爽やかな5月前半の数週間を堪能してきた。

中でも福岡での2日間は鮮烈だった。実はここ数年、彼の地を拠点としている出汁の「茅乃舎」ブランドで知られる「久原本家グループ」さんと折に触れお仕事をさせていただいており、ご挨拶を兼ね当地を訪れたのだった。

茅乃舎と言えば、お出汁! 看板商品のあご出汁をはじめ数々の名作商品が、厨房に立つ私たちを鼓舞し続けている。お料理はいつだって楽しいよと^^

その久原本家グループの魂と言えるのがここ。茅ぶき屋根が美しい古風な佇まいのレストラン「御料理 茅乃舎」だ。

御料理 茅乃舎

緑したたる里山に佇んでいます。伝統日本建築の頂点。

すでに創業20年を超えた「御料理 茅乃舎」は、長いドライブの末にたどり着くことができる、ご褒美のような場所。福岡県の久山町というところにある。

初夏の緑に洗われた一帯はまるで里山の龍宮のようでもあり、異郷感が半端ない。夏になるとホタルの遊ぶ清流が、すぐそこを流れている。その清冽さ、佇まいの麗しさと言ったら。ここでは母屋の暖簾をくぐったその瞬間から、心づくしのおもてなしが始まってゆくのだ・・・。

新鮮な季節のお料理は土地ならではの滋味にあふれ、技術と人の温もりを同時に感じられる一級品だ。それはまさに、一生に一度の体験・・・あ、いや、これからもっと体験していきたいけれど、初体験というのは忘れ難いものなのだ。

九州の名産「太閤ごぼう」を使った力強い旬菜。個室から見えるお庭は初夏の陽に照り輝いていた。

料理長の西垣良太さん。旬の大胆な担い手。左は茅乃舎名物の最中。いぶりがっこと夏みかん!

洗練されたダイニング。右は茅乃舎の根幹にある出汁の出発点でもある十穀鍋。じわっと来ます。

お料理は、すべてが本当に素晴らしかった。料理長を務めるのは、西垣良太さん。素材本来のパワーを上手に引き出す旬の名手だ。身体がホッとする優しい味わいに夢心地になる一方で、コースとはいえ一品一品を楽しめる起伏があるのもいい。

ここで淡水で育つ食用の藻を初めていただいた。福岡・朝倉市の清流「黄金川」にのみ自生する淡水藻で、プルプルとした独特の食感と繊細さを楽しむ。また「長野おばあちゃんの大皿料理」という一品では、地元で有名な料理家の女性、長野さんが毎月提供してるくれる昔ながらのレシピを紹介しているそうだ。今月は「生大豆のおから」だったのだが・・・あまりの奥深いおいしさに悶絶。大豆本来の風味が際立ち、自然甘みだけが感じられる。その他、春らしい素材を使ったものから定番品まで、もう一度いただきたいと思えるものばかりだ。

茅葺きの伝統建築とは裏腹に、お店の中はシンプルなジャパニーズ・モダンでため息が出るようなしつらえ。正直もう少し滞在したかったのだが、次の予定のために急ぎ後にしたのだった。次回は扉越しに見えていたクールな喫茶スペースとかにも座りたいなぁ。

ともかく「御料理 茅乃舎」は、極上のダイニング・デスティネーション。周辺の散策や食事、お茶など、併せて半日は余裕で楽しめるはずなので心して向かっていただきたい。(ごちそうさまでした!)

酒蔵  伊豆本店

実はこの1月、世界遺産・宗像大社で有名な宗像市にある創業300年の酒蔵「伊豆本店」が復活した。12代蔵元が2023年に亡くなって以来、休眠状態になっていたところ、久原本家の社主である河邉哲司氏の母方の実家であることから、グループへの参画が決まったそうだ。

ありがたいことに、この復活したての「伊豆本家」にもお邪魔させていただいた♡

久原本家さんの資金を投入した素晴らしい施設。ショップ、バー、ミュージアム、甘味処を備えており、存分に楽しめる。

昔の様子を垣間見ることもできるが、お酒は最新鋭の設備で造られている。

4種を試飲させていただき・・・無上の幸せ。お酒がススムおつまみはイカのゆず麹漬け。

限定酒「亀の尾」は私の一番のお気に入りとなった♡ 左は六角形の煉瓦造りの煙突。かつては昔ながらの酒造り工程で出てくる煙を排出するためのものだった。

伊豆本店は「亀の尾」という幻の酒米を使った昔ながらの銘柄「亀の尾」を復興させた功績もある。

酒米としての「亀の尾」は戦後に一度消滅してしまったのだが、たった200粒の種籾から奮闘し、栽培を成功させた。「亀の尾」は米本来のしっかりとした旨味、芳醇さ、柑橘類を思わせる爽やかな香りが特徴。酒蔵を訪れた者しか購入できない限定酒なので、ぜひここで入手して味わっていただきたい。

そして今年の復興に伴って新たな銘柄として立ち上げたのが、スバリ「宗像 むなかた」。この名を付けるにあたっては、地元の宗像大社にお参りして準備を整えられたのだという。宗像大社と言えば三柱の女神が祀られた由緒あるお社。弁財天ゆかりの場所でもあるが、酒蔵では改装時に七福神の像が発見され、現在はそれぞれ建物を守る場所へと鎮座されているのだとか。

改装された酒蔵は、大充実のショップ、カッコいいバー、酒蔵ミュージアム、酒粕を使った「花酒まんじゅう」やジェラートなどを楽しめる甘味処を備えており、訪問者が楽しめる施設として生まれ変わっている。日本酒に興味がおありなら、ぜひ立ち寄っていただきたい。

地元企業として貢献する、大学でのグローバル講座

これを読んでくださっている皆さんは、おそらくほぼ全ての方が「茅乃舎」というブランドをご存知だと思う。私が暮らすロンドンではもはや神聖化されていて、お土産として最も望まれるのが茅乃舎出汁でもある。

久原本家さんとしても、昨今は国内だけでなく海外事業も展開されており、ロンドンもそのリサーチ都市の一つだ。今や久原本家グループは、福岡の地元企業として、いや、日本の食品メーカーとしてもトップクラスの地位を築きつつあり、その企業責任として地元にさまざまな形で貢献されている。

その一つが、地元大学との連携。

私が訪れた日はちょうど、久原本家グループ 国際事業推進部の青柳啓三さんが、九州産業大学でゲスト講師として登壇される日だった! テーマは「グローバル」。青柳さんは海外事業展開についてだけでなく、各国マーケットの傾向についても詳細にわたる情報や体験を披露してくださり、学生さんたちも熱心に耳を傾けておられた。

そして青柳さんのご厚意により、なんと編集長もイギリスの外食マーケットやグローバル人材というテーマでほんの少しだけお話しさせていただいたのだった。軽いノリでお引き受けしたのだが、実際の登壇ではやはり身が引き締まる思いがしましたですネ^^;  この場を借りて青柳さんと大学関係者の皆さま、学生さんたちに厚くお礼申し上げます!

久原本家グループの青柳啓三さん。お名前は「ひろみつ」って読みます^^

青柳さんのご厚意により、編集長も登壇。いきなりロンドンのダイバーシティについて話しちゃうよ。

九州産業大学ではグローバル教育にも力を入れており、産学連携の一環として地元企業の担当者を招いて、幅広い講義を行なっている。今回は主に大学1年・2年のフレッシュな学生さんたちが聴講してくださったようだ。

企業で実際に働いている方を講師に迎えるというのは、現場主義という意味でも理にかなっている。学生さんたちも生きた情報に接することができ、役立つことも多いだろう。実際、受講後の質問も多かったように思うし、熱心な学生さんが受講後に事務室を訪れて質問の続きをされたりもした。

未来を担う大勢の学生さんたちと交流することができたのも、この旅の大きな収穫だった。

・・・・・・・

まったく驚くべきことに、福岡では博多駅から電車に乗ると、5分で福岡空港に到着してしまう。国際線は韓国、中国、台湾、香港、シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシア、マカオ、フィリピンに就航しており、アジアへのアクセスが格段にいい。

こういった地の利は住む人の意識に大きく作用し、海外を「近い」と感じるメンタリティを生むのではないか。翌日は福岡出身の友人2名(2人ともロンドンで出会った最初期の友人)に会ったのだけれど、彼女たちが以前から「世界のどこに行っても福岡がいちばんいいと感じる」と言っていたことを否が応でも思い出した。

現に、彼女らはロンドン、東京、シドニーなど住む場所を転々としながらも、結局は福岡に戻ってきている。もちろん本人たちはかなりのグローバル人材(一人は現在、九州産業大学でパートタイムの英語講師をしていると聞いて、2度驚いた)。博多の街もそういえばインバウンドっぽい人たちが大勢いたっけ。

こうして今日も都市の構造が、地元の企業が、グローバル人材を育てていく。海外展開していく企業は、まさに地元のお宝だ。「地元」は「世界」に繋がっている。福岡に来て、久原本家ゆかりの場所を案内していただき、そんなことを強く思った。地方はいつも、企業を通して可能性に開かれている。

Share.

About Author

アバター画像

岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス。2014年にイギリス情報ウェブマガジン「あぶそる~とロンドン」を創設。食をはじめ英国の文化について各種媒体に寄稿中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。カルチャー講座の講師、ラジオ・テレビ出演なども経験。これまで1700軒以上のロンドンの飲食店をレビュー。英国の外食文化について造詣が深く、近年は企業アドバイザーも請け負っている。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。仕事のご依頼は ekumayu @ gmail.com までお気軽に。

ウェブサイト

Leave A Reply

CAPTCHA