パリ色の呪縛

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私達は、何らかの観念に縛り付けられていることが多い
生きている間にその呪縛をひとつづつ解いて
心を解放することがとても大事なお仕事なんだそうだ…

自由になるって、どうしてこんなに難しいのだろう

昔々その昔、私は色に縛られていたことがありました
パステルカラーしか使えなかったのだ

パステルカラーといっても、それはちょっぴりひねった色でした

チューブから色を出すと
肌色(今は絵の具の世界では禁止用語なのでペールオレンジ)や
黄土色、グレーを少し混ぜるのです

そうすると、どうでしょう、それは私が当時憧れていた

[ パリの色 ] になるのです!

パリ色を見つけ、使い始めた頃は、楽しかったけれど
気がついたら、いつの間にかチューブから出した色を
直接キャンバスにのせることが出来なくなってしまった

そうなると、今度はその色から解放され、原色をそのまま使いたくなった時

「だけど、私らしくなくなるんじゃないか?」
などとつまらないことを気にしてしまい
どうしても、パリ色を捨てる勇気が持てなくなっていた
何年も、パリ色の壁に囲まれて、私はもがいていた

だんだんとその呪縛が溶けて私の心は軽くなり
いつの間にか原色をまた自由に使える様にはなったのだけど

原色を使える様になった時に感じた開放感は、よく覚えている。

ふ~、これで一つ自由になった!

大変な仕事や試合、試験が終わると、開放感を味わう
病気や怪我が治ると、生きている喜びと、開放感で満ちあふれる
ダイエットや長時間の空の旅が終わった時にも感じる開放感
窮屈な服や靴を脱いだ時の開放感
長いトンネルから抜け出た時に感じる開放感

[ パリの色 ] は自分で、作った心のブロックなんだから
それをただ壊せばいいのに、意識を変えればいいのに、自分の考え方次第なのに…
でも、それをするのは、なかなか難しい

催眠療法なんかで、心のブロックを解き放してくれる方法があるけれど
パリ色の世界からは自分で出るしかないと思っていた

さて、その呪縛が解け、曇ったような、ハッキリとしないパステルカラーじゃなくて
ビビッドな赤や青や緑や黄色を使えるようになって
フワ~としていた精神も、ちょっとばかりパキッとしたように感じた
とことんパリの色と付き合って、そこから遂に抜け出した時
私に付いていた余計なモノが取れ、精神的にも少し成長したのかもしれない

だけど、1つの自由を手にすると、それまで隠れて見えなかったもう1つの
ブロックが、見えてきた
それを思えば、パリ色の呪縛なんか、屁の河童

次にきたモノは、構図の壁

本来絵を描く上で何も決まりは無はずなのに
目でモノをつい見てしまう
心で見なければならないのに…

構図を崩して、キャンバスの中で自由になる
真っ白で、何も書いていないキャンバスは100%自由なはずなのに
私の頭は、その中を自由に動き回ることを許さない

この呪縛に立ち向かって、もう何年も経っているけれど
未だにこのブロックを壊すのは難しい

ここから自由になることが出来たら、何て幸せなんだろう
それができたら、私は、もう何も悩まず
何でも自由自在に描くことができるようになるのに

パリで活躍され、魂の画家と言われた木村忠太
「光から自由になったので、もう何でも描けるようになった」
こんな風な言葉を残していたと思う

光の呪縛
生涯をかけて光に挑んだ木村忠太
画家を追い詰め、心を支配するものは、光 だった…

構図から、もし自由を勝ち取ったとしても
また隠れている、ブロックが現れるのだろうか?
光の呪縛とは言わないまでも…

先日ミーティング中、背景の色を考えている時
どんな色がこれには合うと思うか?と訊かれ
「黄色に肌色を入れた感じの、くすんだ黄色」と答えた

パリ色の呪縛から、私はまだまだ抜けていないのかも…

th_銀座ブルガリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【きょうのヒント】
銀座2丁目の一流ブランド店のcafé、ここは屋上にはテラスもあって素敵です
混んでいないし、ホッとできるのでオススメ

【前回のこたえ】
CoCoLo Cafe
新宿2丁目14-6 早川ビル1階

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東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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