<売れる絵本>のなりたち

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cafevisit


この夏、個展会場で数十年ぶりに再会した敏腕プロデューサーY氏は
いくつものヒット商品を作ってきた人

そのY氏は再会したその日、唐突に私に
「ねえ、一緒に絵本を作らない?」と、誘ってくれた

彼が作りたいものはズバリ《売れる絵本》

私は、今まで絵本を4冊出版したけれど、それらは
自分勝手な、ただ私が描きたい作品で、市場の事情は何も考えていなかった
(そんな作家本意な絵本も出版する事が出来た、良い時代だったのだ)
当然のように、それらはどれも売り上げには繋がらず…

本だって、商品なんだから売れなければ意味がない、学術書とは違って
多くの人に手を取ってもらいたいと思っている絵本なのだから!

だから、私は彼のオファーに、冒険に乗ることにした

私は、25年以上イラストレーターとして仕事をしていたのだから
その点では、クライアントのために絵を描くこと、には慣れているし
それがあった方が、かえって解りやすく、やりやすく思うこともある

だから、市場を意識して売れる絵本を作る
というプロジェクトには、イラストレーターの考え方で
興味を持って取り組めば良いのだ…、そんなふうに考えた

数日後、Y氏から早速連絡があり
Y氏と彼のスタッフのトモちゃんと私の3人は、
それから、3週間に一度ぐらいの予定で会うことになった
そのミーティングは、お茶を飲みながら、ビールやワインを飲みながら
雑談をしながら、絵本について語り合うのが目的

初めのミーティングの時
Y氏はロングセラー、ベストセラーの絵本を3冊持ってきた
そしてその日私達は、売れる絵本
つまり市場はどういう絵本を求めているのかについて、話し合った

「実は、今子育てをしているお母さん達は、
子供に自分の気持ちを伝えるツールとして、絵本を活用しているんだよ
自分の子供ともうまくコミュニケーションを取る自信のない人が世の中には沢山いるんだね…」
こんなことを、Y氏は話していた、それを聞いて
「えー、本当にそうなの?」
と思ったけれど、でも良く考えてみれば、私も感動した本を
誰かのために、買って
「ねえ、これすごく良いこと書いてあるから、読んでみて!」
と、プレゼントしたことが何度もあるし、同じように
「是非読んでみて!」と、本を頂くこともある。
本に書いてあることと自分の伝えたい気持ちが同じ時
それを、私の気持ちを伝える方法にする

「なんだ、私も本を同じように使っていたじゃない!」

そういえば、以前息子が私にとても面白い提案してくれたことがあった

「絵本は教育本でもあるから
子供に伝えたいことを、一つ選んでもらって
それをテーマにその人だけのオリジナル絵本を一冊創ってあげる
っていう、企画をしたら面白いんじゃない?」

絵本で子供を教育する、絵本は教育ツールである
ということを、不思議なことに
絵本を作る側としても、子育てをする親としても
私は今まで考えたことがなかった…

私が絵本を買って息子達に読み聞かせていたものは
何かを教える、伝えるため、というよりも
単純に、楽しい、面白い、夢が広がる、冒険もの、が多かった

そして私は絵本が好きだから、今でも自分のために買い集めているけれど
その理由は、ストーリーよりも、単純にその作家の絵が好きだから、に尽きる

私にとって絵本は画集のような位置付けだから

「こんな風に、絵を描けたらどんなに良いだろう」
「このストーリーにこの絵できたか~」
「この想像力には参る…」

など、そんなことを思いながら絵本のページを捲っているから
だから、自分の絵本を作った時も、ストーリーは
ちょっとひねって面白いくテンポよく、を考えて書いたけれど
とにかく私の場合メインは絵
最後に出した「レイジーメイドの不思議な世界」なんぞ
まさしく、画集のような絵本になってしまった

そうなのか!皆んなは絵本を通して、子供に自分の気持ちを伝えたり
教育ツールとして、読み聞かせているのね!

こんな、当たり前な考え方を持っていなかった私は
やはり、絵本作家ではなかったのだ…

と、改めて気づいた新発見にちょっと、驚いてしまったのです

…ちょっと、横道に逸れていきそうなので、話を元に戻しましょう

Anniversaries

そして、2回目ミーティングで私達が話し合ったのは
キャラクターはどうするか

Y氏は、キャラクターはちょっとありえないような
面白い組み合わせにした方がいい、ということだったので

次のキャラクターには是非ラクダにしたい!と、思っていたことを
話したら、ラクダはいいね~、ということになったので、次は
ラクダとかけ離れている相棒を何にするか、ということで
私は、六本木一丁目で働いているサラリーマン?の提案に
「それは、かけ離れすぎている」と、却下

そして3回目ミーティングでは、テーマについての話し合い
この日は最近私が読んだ五木寛之著「孤独のすすめ」から
話題が広がり、懐かしい本、絵本の話をした
『かもめのジョナサン』その後の『リトルターン』
「そうなると、大人の絵本になるな~」
「老人向けの絵本もいいですね」
「永遠のテーマは
嫉妬、愛、死、友情、孤独、喪失感、無気力感などだね」

たわいもない雑談から、様々なことに気づき、色々なことを考え
そして、そんな中で、ふっと面白いアイディアが飛び出した時に
手を伸ばして、それをキャッチして、ストーリーを構築していく
チームでの物作りの行程は、楽しい

さて、ロンドンに戻ってきた今
これから私は一人で、実質的な作業に入っていくのだけれど
実は、まだちゃんとしたテーマも、キャラクターも何も決まっていない

だけど、14年ぶりの絵本作り真剣勝負に
今私は、ワクワクとしている

これから私の前にそびえ立つ、大きな壁をいくつも乗り越えないと
それは出来ない、でも産みの苦しみは必然であるから
それを、楽しんで乗り越えていこう!と、気を入れて呑気に構えている

…ということで、今回はまだ何も出来ていないけれど
宣言をしちゃえば、やらないわけにいかなくなる!ってことで
来年出版予定の島田カオルの絵本、乞うご期待!

今までとはちょっと違う創りかたをしていくけれど
出来るものは、やっぱり島田カオルの世界そのもの…、のはず

どうぞ楽しみに待っていてください

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【きょうのヒント】
さて、今日のカフェのヒントは東京表参道
シカゴ在住のお友達と会う時、彼女の希望で
久しぶりに行きましたこのカフェは、目印が赤、パリ風なテラスがあって…

って、簡単ね!もうわかっちゃったでしょう!

【前回のこたえ】
MonSoon CAFE Tama−Plaza
神奈川県 横浜市 青葉区 美しが丘 5ー2ー15

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About Author

島田カオル

東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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