未来を歩む:山中俊治「Prototyping in Tokyo」展 → 3月17日まで

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「デザイン」というと、パッと思い浮かぶのはグラフィック、プロダクト、建築など、そのモノを美しく見やすく使いやすくしたり、個性を際立たせたりするために、デザイン・センスのある人が表面的な形を与えることだと思います。

広義では、景観もデザインするし、環境もデザインします。もっとキャッチコピー的な発想をすると、「生活をデザイン」したり、「人生をデザイン」したりもします。となると、もっと骨太な印象ですよね。英語圏では“設計”と同じ意味でも使われる「デザイン」の本質は、「クリエイト」と同義なのでしょう。

何かをデザインし、形を与えることは、想像や思考を具現化することと同じ。デザイナーさんはだから、真の意味でのクリエイター(創造者)。何もないところから、形あるものを生み出すわけですから、神と同じとも言えるのかも。いや、私たち一人ひとりがそれぞれの人生をクリエイトしている神であるとすれば、デザイナーさんは創造の達人なのですね ^^

ジャパン・ハウスでの展覧会は1階からすでに始まってます! メイン会場は地下。

ジャパン・ハウスでの展覧会は1階からすでに始まってます! メイン会場は地下。

ケンジントンにできている日本文化の発信地、ジャパン・ハウス ロンドンで今、日本を代表するデザインエンジニアである山中俊治さんの達人ぶりが眩しい、プロトタイプ・デザインの展示会が開催されています♪

山中さんがすごいのは、エンジニアリングの知識を駆使し、かつ非常に芸術的なデザイン・プロセスを辿っていらっしゃるところ。もともと産業機械がご専門で、自動車メーカーのエクステリアデザイナーだった経歴と、漫画家志望でいらしたという素晴らしいスケッチ力も含め、その才能がごく伸びやかに、美しく融け合って開花している様子がわかる優れたエキシビションです。

展示デザインも見どころの一つ。展示内容と呼応してます。

展示デザインも見どころの一つ。展示内容と呼応してます。

1月半ばにあったオープニングに行ってきたのですが、会場デザインも素敵。展覧会の日本語サブタイトルに「デザインの製作絵巻」とあるのですが、作品が並べられた真っ白の薄いボードが緩やかに波打っていて、まさに絵巻物の上に展示してあるかのよう。ニクい演出なのです ^^

山中俊治さんと、パラリンピック日本代表の高桑早生選手のために開発された義肢「ラビット」©️Jeremie Souteyrat

山中俊治さんと、パラリンピック日本代表の高桑早生選手のために開発された義肢を進化させた「Rami」。2020年には山中研究室の義足がいっぱい活躍するといいな!©️Jeremie Souteyrat

本物みたいな動きをするトカゲのプロトタイプ ©️Jeremie Souteyrat

まるで本物みたいなトカゲのプロトタイプ ©️Jeremie Souteyrat

さて、山中俊治さん。

私たちはきっと、知らない間に山中さんがデザインされたものの恩恵を受けているのだと思います。例えばJR東日本の現在のSuica改札機は山中さんのデザインだそうです。あるいはとっても機能的な大根おろし器! アスリートの皆さんが使う美しさを兼ね備えた義足、JAXAの有人宇宙船、イッセイミヤケとのコラボで実現した腕時計、それから日本伝統のからくり人形のからくり。

スケッチが上手いの。

スケッチがお上手♡ ただこの場合は対象が先ではなくスケッチが先、ですよね。

オウム!! 左は体に合わせて伸び縮みするプロテクター

王蟲〜!!涙 左は体に合わせて伸び縮みするプロテクター

左が「REDAY TO CRAWL」。

「Ready to Crawl」(左)。作品の一部は手で実際に触ることができるインタラクティブな展示なのだ。

左下はからくり人形の歯車など

左下はからくり人形のからくり部分を分解したもの

からくり

からくり人形の美しさに魅せられた山中さんの依頼とスケッチをもとに、からくり人形師9代目玉屋庄兵衛さんによって骨格だけを見せる目的で作られたからくり人形「弓曳き小早船」。©️Jeremie Souteyrat

東大教授に就任された際、山中さんは自身のブログで下記のように述べられています。

私の仕事は研究者の夢に実体を与え、一足先に人々が未来を体験できる人工物「プロトタイプ」を作ることです。人と技術の間に起こる事すべてをていねいにデザインしたプロトタイプは、単なる試作品を越えて、人々と未来の技術をつないでくれるはずです。

本展では、3Dプリンターで作られた作品の数々に、実際に手で触れることができます。見ていると、動きそのものから質感も感じられ、ディテールの細やかさにも驚かされます。記事冒頭の写真(©︎KATO Yasushi)は「Ready to Crawl」という名前のプロトタイプで、モーター以外の全ての部品が一体成形されているそう。そうすることで本当の生き物のような滑らかで柔らかい動作を可能にしているのだとか。

山中さんは海外での評価も非常に高く、その作品の根底に「日本ならではの美意識」があると評されているようです。それを受けてご本人は、「(何かをデザインする時に「日本的」であろうと したことは一度もないが)人工物と生命の境界線に対する考え方が、日本人は独特だからだと思う」と、 ジャパン・ハウスのインタビューに答えてそう語っています。

インタビューの中でさらに、浮世絵に代表されるようなフラットな描写に見られるように、本物がより本物っぽく見えるようにするために、実物により似せるのではなくて、よりシンプルなラインを強調することで「らしさ」を表現する手法をストレートに研究しているとおっしゃっています。

私たち日本人には鳥獣戯画から始まる漫画やアニメの文化があり、これらはまさに二次元芸術の極みですよね。山中さんの研究も漫画やアニメに登場する架空の生命体への慣れや理解が当たり前の土台になっているということみたいです。こういった理論も実際にオームが動いている様子を見ると実感でき、その動きを見るだけで胸がドキドキして感動しちゃいます♡ イギリスのオーディエンスの目には、本展はどのように映るのでしょうね。

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「未来をともに考えるうえでのトリガーになれば」

ご自身の研究について、そう語る山中さん。個人的な好奇心の追求が、人類のニーズや未来に直結している。なんて素晴らしいお仕事なんでしょう。まだジャパン・ハウスに来られていない方も、これを機会にぜひお運びになってみては?

日本のものづくりの感動的な素晴らしさを再体験できると同時に、日本の文化をあまり知らないお友達やご家族に、その奥深さを味わってもらえるチャンスでもあります。アートやデザイン、漫画やアニメ、エンジニアリングやメカニックに興味あり? そんな皆さんなら、絶対に見逃せないエキシビションです!

PROTOTYPING IN TOKYO:
ILLUSTRATING DESIGN-LED INNOVATION
先導するデザインの製作絵巻

会場:
Japan House London
101-111 Kensington High Street, London W8 5HY
http://www.japanhouselondon.uk

会期:
2019年1月16日〜3月17日

開館時間:
月〜土10:00 – 20:00 日・祝12:00 – 18:00

入場無料
※イベントによって開場時間が異なる場合がありますので来場の際はウェブサイトでお確かめください。

山中俊治 Shinji Yamanaka
愛媛県生まれ。デザインエンジニア/東京大学教授。1982年東京大学工学部卒業後、日産自動車を経て、1987年フリーのデザイナーとして独立。1994年リーディング・エッジ・デザインを設立。2008~12年慶應義塾大学教授、2013年より東京大学教授。デザイナーとして腕時計から鉄道車両に至る幅広い工業製品をデザインする一方、技術者としてロボティクスや通信技術に関わる。2004年毎日デザイン賞受賞、ドイツIF Good Design Award、グッドデザイン賞受賞多数。2010年「Tagtype Garage Kit」がニューヨーク近代美術館パーマネントコレクションに選定。近年は「美しい義足」や「生き物っぽいロボット」など、人とものの新しい関係を研究している。

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About Author

江國 まゆ

岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系広告代理店にて各種媒体の翻訳ローカライズや日本語コピーライティングを担当。日本語翻訳リライトのスペシャリスト。2009年からフリーランス。趣味の食べ歩きブログが人気となり『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)を出版。2014年に「あぶそる〜とロンドン / Absolute London」を立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。あぶそる〜とロンドンが選ぶ『ロンドンでしたい100のこと』(自由国民社)を2018年に上梓。

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