Brixtonで午後のお茶からPatrickの想い出へ

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cafevisit


また、昔と比較してしまうけれど…
でも、30年前近くの Brixtonと言えば
「あそこへは、行ってはダメ!」
と、言われたし、私も決して
いい、とは思わなかったエリアであって
私の中では【怖いディープサウスのBrixton】だったのです

それが先日

「Brixtonは、楽しい アフリカよ!」という友人の言葉につられて
30年ぶりに訪れたその町は…

「うわ~!」と、びっくり仰天!

まず、駅を出たら
いきなり、とても ユニークなファッションで身を固めた
黒人女性(元気いっぱいなオバちゃん!)が
踊りながら大音響で、ゴスペル を歌っていた。

天気が良いせいもあったのか
その後も、町のあちこちから アフリカンミュージックが
聴こえてきた。

なんだか、まるで…

あの建物の向こう側には
ホワイトビーチと真っ青な海が広がっていて
椰子の木でもありそうな感じがする…

アフリカと、太陽と、音楽とダンスと、スパイス!

本当にそうだった!
あの暗くて恐ろしいBrixtonは
オシャレで、楽しい町に変わっていたのでした

すっかり、ウキウキした気分になってしまった私達が
駅からぶらぶらと歩き出して、まず見つけたのは…

「 あっ!すごく大きなカツラ屋さん」

面白そうだから、私と友人は入ることにしました

「 やっぱり黒人の町よね~!」

アフロがあったし、ダイアナ・ロスっぽいものも種類が豊富
そして、安い!  私の好きな、遊びで買える値段だ!

私の勧めで、友人は
ダイアナロス風のカッコいいウィッグを試すことにした
すると、そこにいた黒人の女性がゲラゲラとお腹を抱えて笑い始めたのです

「 あなた、後ろから見たら、大きなボールかぶっているみたい!おかしいわ~!」

ですって!

もうちょっと髪の量が少ないものを選ばないとね…
帽子を被るように、あれやこれや試してみたけれど
カツラ屋さんには、いつかまたゆっくりと来てみよう、ということになり
私達は、マーケットプレイスへ向かいました。

入り口付近は、Shepherd’s Bushのマーケットに似ている感じがしたけれど
何か違う、あちらはアラブ系で、こちらはアフリカ系ということか?

とにかく、面白いものが沢山あって、ワクワクする!

「これ何に使うの?」

見たこともない キッチン用具が色々あった
「アフリカの家庭では、きっとこういう道具を使って、お料理しているのね」

私達は、お喋りしながら歩き回った
マーケットには アフリカっぽい雑貨屋さんの他に
色々な国のレストランがある
日本人がやっている、お好み焼き屋さんもあった!

そんなマーケットの中に、アーティスト系の画廊やジュエリーショップ
小粋な洋服屋さん、古着屋さん、雑貨屋さんアンティーク家具屋さん
などもあって、おしゃれなひとがあっちにも、こっちにも…
その辺りがShepherd’s Bushマーケットと違う点だったのです

そのお店の中の一軒で、私はちょっと高めだったけれど
とてもカッコいいロング丈の、サマーコートを見つけた
買おうかどうしようか、と迷って迷って…決められない

それでは、とりあえずコーヒータイムにしよう
とカフェを探すことに した

いい雰囲気のお店が幾つかあって、どこに入ろうかなー???
と迷っている時、クレープを焼く良い匂いのお店から男性が出てきて

「ここに来ない?」と誘われて
「クレープ、イイね!」 ということになり
今回のカフェ、早々と決定したのでありました

th_Brixtonvillageカフェのテラスに座って
マーケットを歩く人たちをウォッチング
その時気が付いたのだけれど
それぞれのお店のオーナーが、隣のお店に入って
お喋りしていたりしている、その雰囲気が

「やっぱりアフリカ?」

なんだか実に、楽しそうに、皆んな呑気に働いている感じがするのです

「 この町の人達、好きだなー」
私はすっかりBrixtonファンになってしまいました

さて、クレープを食べコーヒーを飲みスケッチをしながら
この変貌したBrixtonに、改めて感動していた私は
ふっと、1人の 男の子のことを想い出していたのです

 

それは、30年前…
いやもっと前にパリで知り合ったパトリックのこと

当時私は、世界中から若者達が集まっていた
パリの学生の家で、のほほんと暮らしていました。
ぶらぶらと、パリ中をお散歩したり、美術館で絵を観たり
絵を描いたり、写真を撮ったり、カフェで道行く人達を見て
オシャレの勉強をしたり、フランス語のレッスンをしたりして
そして  夜には、仲間と一緒に 作って 食べて、飲んで歌って、踊って…と
今思うと、本当に呑気で楽しい青春人生バカンスを過ごしていました

そこにいた1人が
ヒョロッと背の高い赤毛でソバカス顏の英国人パトリック
18歳の彼は、パリのホテルでアルバイトをしていたのですが
なんとも、やる気がなくて、楽しんでいる私達を
横目に見ながら いつも部屋の隅に座っているような男の子

そこにいた陽気で明るいブラジル人やスペイン人
アメリカ人やイタリア人に慣れていた私は
イギリス人的な、ちょっと大人しくて、シャイで
皮肉な反応をするそんな彼とは、あまり話をしませんでした
どちらかと言えば、ちょっと避けたい感じの男の子だったのです

その彼が、ひょんなことに、私の女友達パトリシアに恋をしてしまいました!
恥ずかしがり屋のパトリックは、恋を打ち明けることが出来ず
その相談? なのか、毎日の様に夕食後
私とアメリカ人のジョディーがシェアーしていた部屋へ来るのです

そして、何も言わず、ただ15分ぐらい座って本を読んでいたり
勉強している私達のことをじっと見ていたり、そして
気がつくといつの間にか居なくなる…

ルームメイトのジョディーも私も、そんなパトリックのことを気にせず
彼の存在を無視して、勉強をしたり絵を描いたりしていました

それから年月が過ぎて、青春バカンス時代も終わり
結婚した私はロンドンに住むことになりました
友達がいなかった私は、ロンドンに戻っているはずのパトリックのことを
ふっと思い出し、もらっていた住所宛に短い手紙を書きました

数ヵ月経ち、出した手紙のことなどすっかり忘れ
ロンドンの生活にも少し慣れた頃、パトリックから 連絡があり
私達は数年ぶりに再会することになりました

ロンドンの演劇学校へ通っている彼は
パリ時代よりちょっぴり 大人になっていて…
私と笑顔で普通に話をするようになっていました

その後、時々連絡を取り合いながらも
私は2年も暮らさないうちに再び東京に戻り、子供が生まれ
すっかりパトリックの存在を忘れてしまいました

そして、私が37歳ぐらいになった頃
当時家庭の事情で
東京とスコットランドを行ったり来たりしていたのですが
ある時、ロンドンに1週間滞在することになった私は、時間が出来たので
懐かしいパトリックに、久しぶりに連絡を取りました

そして「ロンドンにいるのだったら、是非 会おう!」と
一緒に食事をすることになったのです

私の泊まっていた ホテルに迎えに来てくれた パトリックを見た時
彼の変わり様に、私はとても驚いてしまいました

私の中では、未だに暗くて やせっぽっちで赤毛で恥ずかしがり屋の男の子
というイメージだったのですが、そこに現れた彼は
舞台を中心に活躍している、自信に満ち溢れた魅力的な 俳優に変貌した
大人のパトリックだったのです!

醜いアヒルの子が立派に成長したことを見届けて、ホッとした母のように
私は、それ以来パトリックと連絡を取っていませんが
でも、1 度、TVドラマを何気なく 見ていたら
聴き覚えのある声が聞こえてきたのでよく見たら

あらまあ、ビックリ仰天!
あのパトリックが刑事役で出ていたのです!

人も町も、こんな風に、年月をかけて努力をしていると
少しずつ磨きがかかって、そのうち
アッと驚くように変化する!

そう、思った私はなんだかとても嬉しくなって
ウキウキしてしまい、その勢いでなのか?
心が決まったのです!

コーヒー屋さんを出ると、私はもう迷うことなく
あのちょっと魅力的な、ロング丈のサマーコートを買いに
もう一度あのブティックへ向かったのでした!

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【きょうのヒント】
ヒントは、Brixton Market の中
簡単なようで、難しい!
でも、是非真っ青に晴れた 天気の良い夏の日に
ロンドンのアフリカ Brixton へ行ってみて!

【前回のこたえ】
Black Sheep, Goodge Street
63 Charlotte Street, London W1T 4TG
opening hours: 8:00 – 18:00 Mon-Fri / 9:00 – 17:00 Sat / 10:00 – 18:00 Sun

Have a great time!

カオル

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About Author

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東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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